第8話 秘密兵器
今日、オレはゴードン村に来ていた。
息子のガエルを連れて。
「じゃあ、母ちゃん、婆ちゃん。少しの間ガエルを頼んだぜ。カールに用事があるんだ」
ゴードン村に来たのはカールに会うため。
ガエルを連れて来たのは、ついでに孫ひ孫に会いたがる母ちゃん達に会わせるためだ。
昨日の夕方――。
「ご主人様。カールがご主人様を呼んでおります」
「!! まさか! できたのか!? 今すぐ転移するぞ!」
そうして急いでゴードン村のカールの工房に転移すると、カールは汗だくで息を切らし、大槌を支えにしてようやく立っているような状態だった。
「おお。セイか。さっそく来てくれたんだな。悪ぃ、今日来て欲しいって意味じゃなかったんだ。後日でもいいか? しっかり時間を使って、相談したいんだ」
カールが虚ろな目をこちらに向けて言う。
「ああ。もちろん大丈夫だ。こちらこそ急に来て悪かった。今日はゆっくり休んでくれ」
オレは焦ってカールの様子も確かめずに転移したことを反省した。
「これだけは先に言っておく。ぬか喜びさせて悪いが、完成には程遠いんだ…。ただ、今のオレと親父の最高傑作であることも間違いねぇ。これでどの程度の効果が出るのか、出ないのか。それを確かめて欲しい」
カールが視線を正面に向けながら、相談の内容を先に教えてくれた。
その視線の先には金床があり、鍛え終わったばかりの剣身が鈍い輝きを放っていた。
さらにその先には、カールの父ちゃんが床に腰を下ろして休んでいる。
「オレとカールの魂の一振りだ。ギリギリまで粘るつもりだが、残りの期間で、おそらくこれを超える剣は出てこない。そのつもりでいてくれ」
カールの父ちゃんも補足説明をしてくれた。
なるほど。
完成したという話ではなく、完成はしてないけど最高傑作ができたから性能試験をして欲しいという話だったか。
アカシャほど性能試験に適した存在はいないからな。確かにオレを呼んだ方が、カール達がやるより圧倒的に早い。
「分かりました。本当に長い間ずっとご協力いただき、ありがとうございました。さっそく明日の午後、性能試験をさせていただいてよろしいでしょうか?」
オレはカールの父ちゃんに頭を下げて聞く。
カールとカールの父ちゃんはオレの無茶な願いを聞き入れて、ずっと魔王に効き得る剣を試行錯誤してくれていた。
魔王が攻めてくると決まってからじゃない。
実質的な大陸統一を果たしてから、5年間近く、ずっとだ。
「カールに聞け。カールはだいぶ前に、オレを超えていった。今はカールが全部仕切ってる」
カールの父ちゃんがそういうので、カールを見る。
「カール」
「へっ。みなまで言うなっての。明日の午後だな。用意しとくぜ、兄弟」
カールは相変わらず、オレを弟のように扱ってくれた。
そうして今日、オレはカールに会って秘密兵器となるかもしれない剣の性能試験をするためにゴードン村に来た。
アカシャですら知らない、完全に史上初めての創造物を作る試み。
史上初めての武器付与効果を付ける試みは、成功したのだろうか。




