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第160話 暗闇の中で

 いくつものシミュレーションをエレーナ様に確認してもらった上での結論。


 両手を胸に手を当て"限定"し、"宣誓"する。



「"収束氷雷纏(ひょうらいまとい)"」



 "収束"も使った2属性纏。


 オレの周りに紫電しでんほとばしり、同時にその範囲内で、空気中の水分が凍りついてキラキラと輝く。


 複合纏ならではの難解な出力調整は、今では完璧に近い。


 国際大会後、死ぬほど練習したからな。


 まだ息を吸うように、とまでは至ってないけれど。


 アカシャは生まれた時から教育には厳しい。


 実戦で使うのに十分ってとこまではきたけど、そのうちアカシャの要求する水準も満たしたいところだ。



「さらに、"消音"、"透明化"、っと」



 2つの魔法を追加したことで、主に雷がかなりの音を出していたのが無音となり、オレの姿が纏もろとも消えた。


 オレが最も得意とするのは、戦争でもなく、1対1でもない。


 暗殺だ。


 暗闇の中で乱戦になった状態で、これを行う。

 暗殺と言っても、殺さないけど。


 闇討やみうちでいいのか。文字通り。


 今アカシャは、事前に決めた条件を満たす人物を探している。

 早い話が、隙を見せるのを待っている状態だ。


 だから、オレが最後に暗闇に突入することになったわけだ。


 闇討ちの基本優先順位は、強い順。

 その中で、隙を見せた者や、凍りついている一般兵ごと巻き込むような大魔法を使おうとした者を、さらに優先する。



「私にはもう見えませんし、返事も聞こえませんが、ご武運を」



 ジョアンさんが、オレに対して武運を祈ってくれる。


 まだいることは確信してるっぽいな。

 地面の様子とかから判断してるんだろうか。

 さすがの観察力だね。



「ああ。任せてくれ。誰も死なさずに、終わらせてみせる」



 それがどんなに難しいことか分かっているけれど、自分に自信を付けるために、あえて言葉に出す。


 最近いつも思う。自信がないヤツに結果は付いてこない。

 全ての情報を見られるからこそ、オレはそれを確信した。


 結果を出してるヤツらは皆言う。

「自信がある」って。


 内面は知らん。オレは心の中までは見られないからな。

 でもたぶん、本当に100%自信があるわけじゃないと思う。


 それでも、自分を鼓舞こぶするために、自分に自信を持たせるために言っているに違いない。


 きっと、自分をマインドコントロールするくらいでちょうどいいんだろう。


 イメージしろ。

 最高の結果を出す自分を。

 そしてその通りに動くことだけに集中しろ。



「行きます」



 アカシャがそれだけ言って、自分から『切り札』を発動して、オレの肩の上から体内へと沈んでいく。


 その瞬間、何も言わずとも情報が共有され、狙うべき相手の状況が伝わってきた。



「"雷動らいどう"」



 どれだけの猶予時間があって、どういうルートでそこに到達するのが最短か理解するのと同時に、動き出す。


 次の瞬間には、標的の後ろに現れていた。


 あまりにも速すぎて、周りの時間が止まっているかのようだ。


 "思考強化"にも"収束"を使っていなければ、オレ自身さえも知覚できるか怪しかったかもしれない。


 ここから標的の魔力抵抗を減らすために、背後から首に手刀を入れて気絶させるつもりだが…。


 "雷動"状態から直接だと首が落ちてしまうという情報があったので、いったん止まって手刀を振るう。


 雷をまとった手刀。

 身体強化系の神に愛された者でもない限り、これを狙った場所に当てて気絶しないヤツはいない。


 大魔法の詠唱中だった彼は、刹那せつなの間だったとはいえ、最後までオレに気付くことすらなく手刀を受けて気絶した。


 これで、実力者でも多すぎない魔力量で凍らせることができる。


 標的であった『見聖』が音もなく凍りつく。


 最後まで悪い予感はしてなかったようだな。

 戦後にスカウトして良い待遇で雇うことにしよう。

 彼の能力は貴重だ。


 彼の横にいた魔法兵の男が、突然横にいた『見聖』が凍りついていることに気付いたらしく、腰を抜かして尻もちをついた。


 アカシャが次の標的を見繕ってるわずかな間に、彼も気絶させて凍らせておいた。



「次です」



 アカシャが新たに標的を指定し、『切り札』の範囲が変わって標的の情報が共有される。


 先ほどと同様に、一瞬で標的の背後に移動し、気絶させ、氷漬けにする。


 この人も『十聖』の1人だったようだ。

 基本優先順位が強い順だから、そりゃこうなるか。


 暗闇での乱戦の中、アカシャが補足した敵に、雷を超える速さで静かに近付き凍らせる。


 今のウトガルド兵の中に、ボズや『拳聖』のような防御にすぐれた神に愛された能力者はいない。


 一瞬のすきがあれば、実力者であろうとこの作戦で倒しきれるはずだ。









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