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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第158話 ワウリンカの予想

 我がウトガルド軍のちょうど中央付近から、私は戦場を観察していた。


 我が軍の前線からは、正面に分厚く張られたスルト軍の防御魔法に対して、絶え間なく攻撃魔法が放たれている。


 さすがスルト軍と言うべきか。

 割っても割っても新たな防御魔法が展開されていくせいで、突撃に活路を見出したはずの我が軍の足が完全に止まってしまっている。


 だが、せぬな。


 スルト軍の陣形を考えると、我が軍の攻撃を正面で受け止め、側面の兵達が左右から我が軍を攻撃するものと思っていたが。


 側面にも正面と同じように分厚い防御魔法の壁が展開されている。


 これでは、スルト軍も攻撃が出来ないはずだが…。


 いや。

 もし仮にあの壁が、セイ・ワトスンらが心置きなく暴れるためのものだとすれば…。



「スルト軍、特級戦力達が消えました! 転移と推測。出現場所の特定、急ぎます!」



 きたか!


『魔力数値化』持ちの神に愛された者の報告に、つい口角が上がりそうになり、口元を押さえる。



「背後か上空だ。それしか考えられぬ」



 私は彼に推測を語った。

 両方ということも考えられる。



「…背後です! 挟まれました!」


「慌てるな。十分に予想できていたことだ」



 スルトの特級戦力達は、その極端な魔力量ゆえにすぐに場所の特定ができる。

 そもそも魔力量が見えないセイ・ワトスンは除くが。


 細かい展開こそ読めはしなかったが、スルト軍の陣形から、転移による背後からの攻撃は予想できていた。


 だからこそ、通常今回の我が軍の陣形では最後方に配置するはずの本陣を中央にしたのだ。



「転移してきたのは現状で数名! ほぼ全員が特級戦力です!」


「魔法兵の半数と、我が軍の特級戦力達を向かわせよ。一般兵達には最も近くにいる魔法兵を常に守るよう指示を出せ」



 状況の報告を聞きながら、私自ら指示を出す。


 私の指示を聞いた将軍は、迅速に伝令を出した。


 だが、その時にはすでに、おそらくセイ・ワトスンがいると思われる方向から放たれた"闇"が、我が軍の後方からこちらに向かって迫りつつあった。


 あの"闇"は見たことがある。

 セイ・ワトスンが国際大会で使用していた謎の魔法だ。


 ワウリンカの『解析かいせき』では、あの"闇"はおそらく利便性が高い代わりに効果が低い"打消"のような魔法であるということだった。


 "打消"は、相手の魔力を完全に押し流すような大量の魔力を放出することにより相手の魔法をかき消す効果を持つ。

 ただし、放出した魔力は長くは留まらず霧散むさんする。


 それに対してあの"闇"は、セイ・ワトスンの魔力を広範囲に行き渡らせることにより、その空間内における魔法使用を阻害する効果があると思われる。

 使用しようとした魔法の範囲内にある闇の魔力量を上回らなければ、魔法が発動しない。

 そして、"打消"と違い術者が維持している限り効果が持続する。


 私はワウリンカの、あの妙に頭に残る方言を思い出していた。



「だから、一定以下の魔力量の魔法は発動できんかったり、かき消されているように見えるんや」



 それを思い出した瞬間、私は動き出していた。


 将軍も同様のことに気付いたのであろう。

 私より一瞬早く、すでに動き始めている。



「「一般兵は、今すぐ後方に向けて()()()盾の魔道具を起動せよ!!」」



 私達の言葉が届く範囲の一般兵達が、他に先駆けていち早く盾の魔道具を起動していく。


 しかし、ワウリンカの最悪の予想は当たっていた。


 "闇"に対して盾の魔道具の防御壁は意味をなさず、"闇"に飲まれた一般兵達の防御壁は次々と消えていった。


 私達も"闇"に飲まれ、周囲からは激しい動揺の声が聞こえてくる。


 私も試しに一般兵が使えるくらいの魔力量で防御壁を展開しようとしてみたが、できない。


 私は口元に薄く笑みを浮かべながら、かなり強い魔力を込めた明かりの魔法を使う。

 今度は問題なく、私の周囲を明かりが照らす。


 周囲にいた魔法兵達も明かりの魔法を使い始めた。


 私は改めて、ワウリンカが口にした最悪の予想を思い出す。



「戦争であの魔法使われたら、最悪、全一般兵が使いもんにならなくなんで」



 ワウリンカよ。

 お前の予想は、いつも当たるな。


 "打消"でこの"闇"を全て消すことは魔力量が足りずできない。

 すぐに術者を殺すことも難しいだろう。


 まずは一般兵をこの"闇"から脱出させるよう指示するしかないか。


 そこまで考えた時、この指示がすでに遅いことを私は悟った。


 魔法で強化した思考で素早く考えたはずではあったが、スルトは最初からこうする予定だったのであろうな。


 後方から、凄まじい"冷気"が近づいてくる。



「防御態勢!!」



 私は魔法の使えない将軍に駆け寄りながら、防御魔法の詠唱を開始する。


 積層型で、かつ全身をおおえる半球型にすべきだ。

 さらに、1枚1枚確実に"闇"の魔力に負けない出力にする必要がある。


 一般兵が盾の魔道具でできることではない。


 この冷気の魔法で、おそらく、一般兵が全滅するのだろうな。


 さすがはスルト。圧倒的ではないか。


 くくく。それでこそだ。


 ようやく、私の望みがかなう時がやってくる。







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