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第29話 ダンジョン

祝1万PV!

おかげさまで達成しました。ありがとうございます。




「ここがダンジョンか…」



 盗賊団が来るまで残り4日。


 オレとアカシャは、ダンジョンに来ていた。


 そう、ずっと前から心待ちにしていた、伝説の剣が眠るダンジョンだ。


 久々に、楽しみと思えるイベントだ。


 必要に駆られてやってきて、最速で踏破しなきゃいけない状況でなければもっと良かったんだけど、なってしまったものは仕方がない。


 不謹慎かもしれないけれど、ちょっとワクワクしながら転移してきた先にあったのは、たくさんの大きな白い柱に支えられた、荘厳にもシンプルにも見える建物だった。



「意外そうですね」



 建物を見たオレの顔は、アカシャにはそのように見えたらしい。

 まぁ、当たってるけど。



「ダンジョンっていうより、神殿に見える…」



 目の前の建物は、前世でテレビか何かで見た覚えがある、ローマにあるらしい神殿にそっくりだった。


 オレの中でのダンジョンのイメージは、なぜだか洞窟みたいなものだったので、全く違っていて驚いてしまった。



「神殿というのも、あながち間違ってはいませんね。ダンジョンというものは、神の建造物ですから」



 そういや、小さい頃にアカシャの授業で聞いたな。



「ダンジョンは神が作ったものであり、この世界にありながら世界の法則に縛られない独自の法則を持つものである。だったか?」


「そのとおりです。よく覚えておりましたね。こちらの建物も、地球のものと似てはいますが、人間が作ったものではありません」



 オレの前世の情報を参照したらしいアカシャが、似て非なるものであることを教えてくれた。


 話をしつつ建物に入ると、そこは円形の大きな部屋だった。


 部屋はこれ1つしかないようで、直径は30メートルくらいだろうか。


 天井も半球型のドーム状になっている。


 全体的に華美かびにならない程度の装飾がしてあり、色が全て外の柱と同じく白で統一されているのが神秘的で美しい。


 まさに神の建造物といった様相だ。



「すっげぇな。地球なら確実に観光名所だ」


「こちらでも、ある意味そうですね。ダンジョンは資源として重宝されることも多く、結果としてダンジョンを中心として発展した町がいくつも存在します。ダンジョン目当てに町を訪れる者も多いですので」


「でも、ここは違うと」



 部屋の中心にある直径5メートルほどの魔法陣に向かって歩みを進める。


 魔法陣からは淡い緑色の光が出ていて、それが天井のドームの中心に向かって光の柱を作っている。


 幻想的っていうのは、こういうのを言うんだろうな。



「ここは資源として適さないダンジョンでした。あまりにも罠が多く、入っても帰って来られる人間がほとんどいません。制覇者が未だいない、未踏ダンジョンです。収支が合わないダンジョンには、人は集まりません」


「来るのは名誉を求める者か、一攫千金を夢見る者かって感じか。オレはどっちでもないけどな。よし、じゃあ行くぞアカシャ」


「かしこまりました」



 掛け声と共に光の柱に入り、魔法陣の上に立つ。


 おそろしく複雑な集団転移の魔法陣だ。


 これも神様の力なのか、集団転移の魔法陣を覚えているオレでも、なぜかこの魔法陣は理解できるのに頭に入ってこない。


 たぶん、ここからしか転移できないようにするセキュリティ的なものの1つなのかな。


 そんなことを考えていると、一瞬の浮遊感を覚えた後、突然目の前の景色が変わった。


 廊下ろうかのど真ん中。


 幅は3メートルほどで、床はタイル張り。


 壁は石造りで飾りはなく、等間隔の燭台しょくだいだけが薄暗い廊下を照らしている。


 前にも後ろにも真っ直ぐ伸びているが、どちらに進んでもある程度行ったところで曲がり角がある。



「アカシャ。一応確認しておくけど、ここまで来ても剣がある場所に直接転移することはできないんだよな?」


「はい。転移自体は可能ですが、踏破済みの場所もしくはダンジョンの外にしか転移できません」


「つまり、現状だと外にしか転移できないってことだな」


「そうなります」



 ダンジョンの中は特殊で、転移に制限がかかる。


 アカシャのおかげで、目当ての伝説の剣がある場所は分かってるし、その場所の映像を見ることもできる。


 普通なら、十分な情報があるのでそこに転移できるはずなのだが、残念ながらそれはできなかった。


 もしかしたらダンジョン内からなら転移の制限が無くなるかもと思ったけど、そんなこともないらしい。


 ちゃんと攻略しろってことなのかな。



「わかった。もし盗賊団の誰かが1人になるタイミングがあれば教えてくれ。それから、ボズが昼寝しようしたときも教えて欲しい」


「かしこまりました」



 盗賊団を少しでも弱体化させるため、嫌がらせは常に続ける。


 踏破済みの場所なら転移可能になるから、いつでも攻略を中断して嫌がらせに行って、また戻って攻略を再開できるからな。


 むしろ、それが出来ないならダンジョンは諦めるしかなかった。


 ちなみに、転移魔法が使えない攻略者も、5階層ごとにある転移陣を使えば一瞬であの神殿っぽいところの魔法陣に戻れる。


 そして神殿っぽいところの魔法陣からは、踏破済みの魔法陣へも移動できるようになるらしい。



「よし、じゃあ伝説の剣まで最短で行こう! 案内は頼んだぞ、アカシャ!」


「お任せください。では、正面方向へお進みください。3メートルほど進むと罠がございますが、廊下の端を歩けば作動しないタイプのものですので、解除の必要はありません」



 おいおい、罠が多いダンジョンとは聞いてたけど、こんなにいきなりあるのかよ…。


 アカシャがいなかったら、絶対に引っ掛かってたぞ。


 やっぱりアカシャは超有能だね。

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