第2話 神様ありがとう! オレの能力、マジ優秀!
2020/8/5 改稿しました
あの後、泣きつかれたオレはおっぱいをもらって寝た。
目が覚めてスッキリしたので、気を取り直してアカシャとお話し合いだ。
ちなみに、アカシックレコードでは長くて大変なので、アカシャと呼ぶことにした。声的に女の子みたいだったからな。
『それにしても、ひどいじゃないかアカシャ。最初は無視して後から脅かすなんて!』
『いいえ、ご主人様。私はひどくなどありません。私はご主人様が生まれた瞬間から常時発動状態でしたので、発動と言われましても反応のしようがございませんでした』
あー、なるほど。そういうことだったのね。
そういえば神様に、アカシャを他人には見えないし触れないようにしてくれって頼んだんだった。
周りの反応はないし、オレの目がちゃんと見えてないせいで発動してないって勘違いしてたけど、ずっとその辺に浮いてたらしい…
アカシャとは触れてる状態であれば念話ができるので、今は仰向けに寝たオレの腹の上に座ってもらって、念話で会話をしている。
まだ普通には喋れないからな。
腹の上に座るアカシャの重さは全く感じない。触れているという感触すらもない。
でも、なぜか触れていることは理解できる不思議な状態である。
目がよく見えないせいで、恐ろしいことにこの距離ですら見た目は分からない。
形がなんとなく解るくらいだ。
赤ん坊の腹にちょこんと座れるくらいちっちゃくて、たぶん銀髪である。解るのはそれくらいだ。
オレの目はマジでヤバいのではないだろうか…
『なぁ、オレって生まれつき目が悪いのかな? 生まれてからずっと、まともに目が見えないんだけど』
『正常ですのでご安心ください。新生児の視力は悪いものなのです。一般的には、1歳ぐらいから急激に良くなります』
『おぉ! 大丈夫なのか! ありがとう、安心した!』
よかった。ずっと見えなかったらと思うと不安だったんだ。
一応、神様からは幼児期くらいまでの健康を約束されてたけど、神様もミスするってのは身をもって経験済みだからな…
疑ってごめん、神様!
それにしても、オレの能力マジ優秀!
即答で教えてくれたよ。抑揚の少ない淡々としたしゃべり方といい、敏腕秘書って感じだね。
『一番の懸念も消えたことだし、いくつか確認させてくれ。まず、現在アカシャがオレに伝えてくれる情報の設定がどうなってるかからだ』
『かしこまりました。現在は、ご主人様に聞かれたことにお答えする設定になっております』
アカシャには情報伝達の設定ができるようにしてもらっている。
アカシャが持つ無限に近い情報を垂れ流されてもどうしようもないし、ただ聞いたことに答えるだけというのも使い勝手が悪そうだからだ。
基本的には聞かれたことに答えてもらうのでいいが、それより優先順位が高い情報の設定をしておく。
条件に当てはまった情報は、聞かずともアカシャの方から教えてくれるのだ。
たとえば、今設定した優先順位一位は、オレの命に関わる情報だ。もし魔物の群れが近づいてくることがあったり、食事に毒が混ざっていたりすれば、すぐに教えてくれるだろう。
知っておいた方がいいお得な情報なども、特に時間が限定されるものから優先順位を高くして設定しておく。
もちろん、現在のオレに実現不可能なことは伝えなくていいことも言及しておいた。
『最後に、今の設定だけでなく、これからも設定の追加や変更はしていくと思う。アカシャは普段のオレとの会話や設定の仕方から、オレの設定の好みを学習して欲しい』
『かしこまりました。いずれは、設定などなくてもご主人様へ有用な情報を提供できるように致します』
『ああ、ありがとう。頼りにしてるよ』
すごい! 理由までは言ってないのに、ちゃんと察してくれてる。
アカシャさんマジ優秀! 神様ありがとう!
『さっそくですが、ご主人様。新生児である今、ご主人様にできることはほとんどございません。この世界の地理や歴史、人々の暮らしなどの把握。魔法の知識を蓄えること。魔力を上げること。できることはこれぐらいです。』
『お、おう…』
え、これぐらいって、なんかいっぱいあったけど…。
今のオレでも学習可能な情報を教えてくれるのはいいんだけどさ。盛りすぎじゃね?
いや、もちろん情報伝達の設定したのはオレなんだけどね。
『他は、ハイハイができるようになるまでお待ち下さい』
『…はい』
有無を言わせない声…。
ハイハイができるようになるまでに、さっきのが終わる前提になってるんですけど?
アカシャさん、マジ優秀…。
新生児へのスパルタ教育が、今、始まる…。