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第119話 ド派手にいこう

『情報が足りないから、スルトと戦うなどという選択肢が未だ存在する。それは破滅しかないと知れ』



 ノアトゥンがスルトとの戦争を中止すると決めた後、ミロシュ様は改めてミーミルにアポイントの返事を催促した。


 それは上記のような文を含んだ、脅迫きょうはくでしかないものだった。


 でも、真実でもある。

 十分な情報を持っていれば、感情という理由以外にスルトと戦争する理由などないはずなのだ。


 だからミロシュ様は同時に、ミーミルに足りていないであろう情報も送りつけた。


 ノアトゥンが4大国を裏切ってはいないものの、スルトとの戦争を回避することに決めたこと。

 ウトガルドは負けを悟っているが、それでも戦争しようとしていること。

 スルトは最終的に大陸を統一しようとしているが、軍事権以外を奪うつもりはないこと。


 このような情報を送りつけ、まずはミーミル王にノアトゥン王と共に国際大会最終日を観戦することをすすめた。


 4大陸同盟の"契約"を逆手に取ることで、ミーミルに話を聞きやすい状況を作る狙いだ。


 ①4大国はスルトを打倒するまで敵対関係をとらない。

 ②4大国は互いに裏切ってはならない。


 抜け道はいくらでもある"契約"ではあるけれど、それでも条文そのままの内容に関しては絶対遵守(じゅんしゅ)が約束されている。


 つまり、条文①と②の内容のおかげで、ミーミルはノアトゥンに敵対行動をとられることと裏切られることは基本的にない。


 ゆえに今、ミーミル王はスルトと直接対峙するよりは安心した様子で、ノアトゥン王と国際大会の闘技大会を観戦していた。


 彼らはミーミルに属する『音量操作』の神に愛された能力者を使い、両陣営の限られた者しか聞こえない状態で会話を行っていた。



「ノアトゥン王、貴方あなたの話が真実であることは分かった。しかし、スルトとウトガルドの戦争が起こったことを知らないでいるというのは無理があるのではないか?」



 神経質そうな顔をした、ノアトゥン王より1つ年下の壮年の男、ミーミル王は先程から質問ばかりをしていた。


 オレ達としては狙い通りであるが、ノアトゥン王は少しわずらわしそうな表情をしている。



「無論、いつまでも知らぬというのは無理であろう。が、我々が戦争が起こったことを知るのは、戦争が終わった後になるらしい」


「なぜそれが分かる? いや、そもそも開戦の日程と場所は事前に決めたではないか。知らぬとは言えぬぞ」



 4大国同盟は、条約締結時に開戦の日程と集合場所を決めた。


 4大陸同盟を含むスルト敵対国家には、明確な弱みがある。

 連絡手段が極端にとぼしいということだ。


 この国際大会が開かれなければ同盟を組むことすらできなかったのは、どの大国もよく理解していた。

 だから、決められるときに決めたのだ。


 でもそれは当然、オレ達スルトも知っていた。



「我が国は開戦の延期を申し出る。新たな日程の案もな。しかし、使者がウトガルドに辿り着けるかどうか、辿り着けたとして返事を持ち帰れるかは分からん…」



 ()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ノアトゥンから見ると元々の日程で戦争が行われるか、延期された日程で戦争が行われるかは分からない。



「そ、それは裏切りでは、ないのか…?」



 ミーミル王は両手で頭を抱えて、理解が追いつかないという様子で聞いた。



「断じて裏切りではない。新たな日程が決まれば兵を出す」



 ()()()()()


 重要なのは、このことについてスルトとノアトゥンが示し合わせていないことだ。

 だから裏切りとはならない。


 ノアトゥンがどんなに本気でウトガルドと連絡を取ろうとしても、スルトに阻止されて取れないだけなのだ。


 ミロシュ様もノアトゥン王に、新たな日程が決まれば戦って決着を付けようと笑いながら言っていた。



「…そうか。やはりと言うべきか、我が国もスルトとの会談に応じた方が良さそうだな」


「そうしろ。余は今回のことで思い知った。いいや、これからさらに思い知らされるのか…」



 ミーミルのアポイントも取れそうだ。


 ノアトゥン王は嫌そうな顔をしているが、予定通りにやってダメ押しといきますか。



 オレは観客席の様子から目を離し、自分の名前が呼ばれた舞台へと上がった。


 国際大会最終日。闘技大会4学年の部。決勝。

 スルト国第1代表セイ・ワトスン対スルト国第2代表ネリー・トンプソン。



「さぁ、ド派手にいこうか!」


「やってやろうじゃないの!」


『セイ! 防御壁の強度がヤバいときは早めに教えるんじゃぞ!』


『わかってるって』



 オレとネリーが気合いを入れて開始の合図を待っていると、スルティアから切実な感じの念話がきた。


 王位継承戦級の戦いになりかねないからね。

 観客に被害が出ないようにするのは絶対だ。


 今回はオレもネリーも条件を付けて戦うことにしてるから、防御壁にはいつも以上に気を配る必要はあるだろう。



「試合開始!」



 開始の合図と同時に、オレとネリーはお互い後ろに飛び退き、それぞれ距離を取りつつ魔法を使った。



「"召喚魔法"!! 来なさい、ドラゴン()!」



 ネリーの周囲や上空に、バチバチと火花を散らしながらドラゴンが召喚されていく。


 ミニドラ以外は、『世界樹の庭』に住むドラゴン達だ。


 観客席から大きな歓声や悲鳴が聞こえる。


 オレとネリーで決めた条件は、できるだけ派手に戦うこと。

 これは他国の心を折るための戦いでもあるからな。


『世界樹の庭』のドラゴン達は、ぶっちゃけオレとネリーからすれば雑魚ざこだけど、見映みばえは抜群だろう。


 そういうわけでオレも、完成はしていない、現状ではせ技にすぎない魔法を使うことにした。



「"複合纏ふくごうまとい炎雷えんらい!"」



 世界初。

 纏使いの誰もが1度は妄想するであろう、夢の2属性纏だ。





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