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第26話 戦いの準備

『雷の方が効果があったな』



 2度目の襲撃の後、アカシャからボズの様子を聞いた感想だ。


 1度目の襲撃から一眠りした後、ボズが寝るのに合わせて再び襲撃を行い、またベッドに戻ってきた。


 1度目の襲撃で初めて人を殺した。10人以上も。


 2度目の襲撃でも、数人殺した。


 吐いたりすることくらいは覚悟していたけれど、なぜか特に体には影響なかった。


 オレが人でなしのクズだからか。


 それとも魔法を放って、結果も見ずに転移したからか。


 理由は分からないけど、今はこれでいい。


 冷静でいられるから。


 そんなことを考えモヤモヤとしつつも、アカシャとの軽い打ち合わせを進める。



『ボズの様子を見る限り、そのようですね。しかし、なぜでしょう? どちらも無傷で、ボズにとっては問題にならない攻撃だったはずですが』


『たぶん、ボズが気付いてから着弾までの時間が、雷の方が短かったからじゃないかな』


『それは事実として確認されていますが、どういうことでしょう?』



 アカシャは人間の感情を想像するのが苦手だからな。


 もちろん、オレの想像が合っているとは限らないけど。



『ボズとしては、雷の方がヒヤっとしたんじゃないかと思う。万が一が起こったら死ぬんだ。あせる気持ちも分かる』


『なるほど。わたくしとしては、無視して寝られるほどの確率だと思うところですが、そういうものなのですね』



 ここまでは、ほぼ想像通りだ。


 ボズが万が一の死を恐れる可能性。


 この後、ボズが無視して寝るのか、念のため寝ないのかが作戦の成否を分ける。



『もしこれでボズがあまり寝ようとしなくなれば、こっちのもんだ。ボズが最悪、オレが最高の状態で戦うって条件は、達成したも同然になる』



 さすがに一切気にせずに寝るのを強行されると、魔力が足りなくなるからな。


 ボズにはぜひ万が一を恐れてほしい。


 こっちはこれぐらいで殺せるなんて露程つゆほども思っちゃいないんだ。


 襲撃する側が何言ってんだって感じだけど、寝込みを襲う回数は少ないほどいい。


 とはいえ、寝れば容赦なく襲うけどね。



『現状、盗賊団は犯人探しをしております。襲撃に備え、寝ない可能性は十分にあると予測します』


『そうか。じゃあ、オレは寝る。ボズが寝るか、魔力が95%まで回復したら起こしてくれ』



 魔力は全快させる必要はない。自然回復でも1時間5%は回復するから。


 今は時間を確保することを優先する。


 疲れていたのだろう、オレはアカシャのかしこまりましたという返事が聞こえてくるのも待たずに眠りに落ちていった。







 翌朝、夜明け頃に、魔力が回復したということでアカシャが起こしてくれた。


 盗賊団は寝ずに襲撃を警戒してくれたらしい。


 ひとまず初日の作戦は成功だな。


 今後盗賊団は、少なくともボズだけは絶対に寝かせない。



『アカシャ、朝飯までは空間魔法を練習する』


『かしこまりました』


「あれ? 兄ちゃん達は?」



 兄ちゃん達を起こさないように念話してたのに、その兄ちゃん達のベッドは空だった。



「すでに起きて、外で訓練しております。身体強化で変わる体の感覚を確かめるそうですよ」


「そうか。こんな朝早くから。兄ちゃん達も頑張ってるんだ。オレも頑張るぞ!」



 心が温かくなった。


 家族のことを思うと、ささくれた心が癒される気がする。


 空間魔法の魔方陣もとても複雑で覚えるのが難しい。


 昨日のように外で地面に書いて練習しよう。






 朝飯までの練習は楽しかった。


 オレは魔法を、兄ちゃん達は剣の特訓をしていただけだけど。


 たまに休憩がてら何気ない会話をしたり、アカシャが兄ちゃん達の身体強化の魔方陣の歪みを正したりした。


 ただそれだけでも、今はすごく楽しかった。


 途中で父ちゃんも混じってきて、賑やかな朝の訓練になった。



『つい何日か前までは、さっきみたいな楽しい毎日がずっと続くと思ってたんだ』


『盗賊団さえ退ければ、また元の日常に戻れますよ』



 朝食を終え、オレは次の目的のために鍛冶屋に向かっていた。


 大して時間がかかるわけでもないので、転移ではなく歩いて向かっている。



『表面上はね。でも、それを手に入れるために犠牲にしたものを、オレは決して忘れられない。忘れちゃいけないしな』


『ご主人様の幸せを邪魔するものなど、忘れてしまえばいいのです』


『ホント一貫してるよな。アカシャは。オレはそこまで割り切れないよ』



 というか、割り切ったら自分を嫌いになりそうだ。


 今でさえ、嫌いになりかけてるのに。




 アカシャと色々と話しているうちに鍛冶屋に付いたので、扉を開くと、カウンターでカールが店番をしていた。



「やあ、カール。1人で店番かい?」


「よぉ、セイ。父ちゃんは鍛冶で忙しくてな。母ちゃんは移動の準備で忙しいんだ。お前こそ1人でここに来るのは初めてじゃないか? 今日は遊べないぜ」



 カールはオレのもう1人の兄ちゃんみたいな存在だ。


 こんなことを言ったら、どんな反応をするだろうか。


 少し緊張しつつ、話を切り出した。



「うん。分かってる。今日はね、武器を買いに来たんだ」



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