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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第81話 スルトの者達

 あの後、その日のうちにスルトの会談を受け入れることに決めた。

 真偽判定官をともない、しかも"契約"の意思まであると思われるとなると、ふみにあった条件は信憑性しんぴょうせいが高い。

 少なくともフリズスよりよほど良いだろうということで意見が一致した。


 どちらにせよリバキナの消滅はまぬがれないが、ならばできる限り良い条件でと考えることは間違っていないと信じている。

 スルトが不気味で、文が怪しいものであったとしてもだ。



 そして、あっという間に2日後はやってきた。


 11時前。

 私は家臣達と、隣国から借りた真偽判定官と共に大いにあせっていた。



「確かに南西門に11時とあったはずだ…。どうして影も形も見えぬ!?」



 疑問が口にするが、それに答える者は誰もいない。

 当然だ。

 全員が同じ疑問をいだいているのだから。


 会談を受け入れるかどうかを決める期限であった昨日の正午。

 我々は再びスルトの使者からの文を受け取った。


 何もかも疑問だらけだったが、我々は騙されてはいない前提で動くことにした。

 封蝋ふうろうは確かにスルトの物であったし、偽物であれば労力の割に犯人のメリットが少なすぎる。


 万一、南西門におびき出されている場合のことも考えて、できる限りの戦力を集めて出迎えることとしたのだ。


 しかし、時間の直前になっても、見張り台の上からでさえ()()()()()()()がやって来るという報告がない。

 飛空艇という空飛ぶ魔導具で来るのかと考えていたが、その影すら見えない。


 私達は焦っていた。

 かなりの戦力を連れてきた。王城から我らを引き離すことが目的だったのではとすら思い始めた。


 その時だった。


 門の外、10メートルほど離れた場所に、どこからともなく突然、10人ほどの集団が現れた。


 いったい、どこから!?

 透明化!? なぜ!?


 激しく動揺したのは私だけではなかった。

 連れてきた者達の中で戦闘能力が高い者達が、一斉に臨戦態勢をとる。


 だが、現れた集団の者達は落ち着き払った様子で、微動だにしない。

 私はそれを見て、即座に指示をした。



「絶対に攻撃するな! 様子を見ていろ!」



 構えを解けとは言わなかった。

 まだ、あれが絶対にスルトの者達と断定できたわけではない。

 だが、敵意はないように見える…。


 私が声を上げると、集団の中心にいた黒髪黒目の顔の整った青年が軽く微笑ほほえんで、一歩前へ出た。


 あれがスルトの国王なのだろう。

 誰より豪華な服を着て、何より王冠をかぶっている。


 彼がこちらに向かって歩き始めると、集団の他の者達もそれに続いた。


 不思議と確信がある。本物だ。


 周囲を固められていた私も、彼らを迎え入れるため前へ出る。


 スルト国王と思われる男は、剣がわずかに届かないくらいの距離で止まり、口を開いた。



「はじめまして、ソラナ女王。私はスルト国王、ミロシュ・ティエム・スルトです。本日は急な会談の申し入れを受け入れていただき、感謝します」



 もっと高圧的かと思ったが、非常に丁寧ていねいな挨拶だった。

 ちらりと真偽判定官を見ると、うなずきが返ってくる。


 嘘ではない。

 私も、国の者達も一息つく。


 身振りで構えを解くように指示を出しつつ、私も挨拶を返した。



「はじめまして、ミロシュ王。ソラナ・サムソノワ・リバキナです。ようこそ、リバキナへ」



 その後、ミロシュ王から簡単に家臣の紹介を受け、私も同様に主要な家臣の紹介をした。


 私は腰を抜かしそうになったが。


 ミロシュ王が連れてきた家臣達が、とてつもない者達だったからだ。


『大賢者』、『賢者』、『叡智えいち』。この大陸の者なら誰もが聞いたことのある二つ名持ち。

 というか、『叡智』がスルトに所属しているなど初めて聞いたぞ。

 真偽判定官がいなかったら信じていない。


 スタン・バウティスタとマルク・ミラレス・ニブルはそれぞれ、近頃スルトに吸収された国々の重要人物。

 というか、マルク殿は他でもない元国王その人ではないか。

 真偽判定官がいなかったら信じていない。


 大陸有数の契約魔法の大家たいかモンフィス家の双子、リオネル・モンフィスとマリオ・モンフィス。

 なぜ2人連れて来た。何の意味がある。自慢か?

 1人ならば真偽判定官がいなくとも信じていた。


 妖精国の大使たいしベイラ。

 人間と交流をって久しいはずの妖精だが、スルト国にのみ大使が派遣されることになったらしい。

 むろん、真偽判定官がいなければ信じられるはずもない。


 最後に、スルティア学園の3年生、セイ・ワトスン、アレクサンダー・ズベレフ、ネリー・トンプソンとそのペットのミニドラ。

 それぞれ、ワトスン商会会長の息子、『常勝将軍』の孫、『赤鬼』の孫と巨大なドラゴンであり、商人から漏れ聞こえてくる数々の真偽不明の噂により名前は知っていた者達。

 その噂は大体真実らしい。

 真偽判定官がいなければ、正気を疑う話だ。

 あのペットのドラゴンなど、いつの間にか小さくなって小鳥のように肩に乗っているではないか。…かわいい。


 とにかく、このようなとてつもない者達を引き連れてきたミロシュ王だったが、本人はとてもおだやかで、こちらをおどすような意図いとはまるでないように見える。


 それが逆に、恐ろしい。



「ソラナ様…」



 大量の汗をかき、青い顔をした騎士団長がこっそりと私に耳打ちをしてくる。

 私は反応をしないように気をつけた。


 おそらく、騎士団長の『危険察知』のスキルが仕事をしたのだろう。

『危険察知』は非常に便利なスキルだ。

 その特性を使えば、訓練すれば色々なことができる。


 もし戦えばどうなるか、もし恭順きょうじゅんすればどうなるかなど、スキル保持者の思考に対して、危険であれば警戒音を鳴らしてくれたりもする。


 何か、分かったことがあるのだろう。

 それも、良くないことが。



「絶対に戦ってはなりません。あれだけで…、この国を滅ぼせる戦力です。恭順、一択…」



 騎士団長の言葉で私も足元が崩れるような思いをしたが、すぐ側にいて聞こえていた真偽判定官は、まともに息もできないほどに動揺した。

 それが嘘ではないことが分かるからこそ、そして事情に明るくないからこそ、彼の動揺は私の比では無かった。

 彼はただ、真偽を判定しに来ただけなのだ。


 ミロシュ王はそんな彼や私の変化に気づいたのか、一瞬虚空(こくう)を見つめた後、変わらないほがらかな様子で口を開いた。



「はは。安心してほしいな。『危険察知』は有り得ない前提にも答えを出してしまうところが難点だね」


「ーーーっ!?」



 ミロシュ王の言葉は、声を出しそうになるほど驚くべきものだった。


 聞こえていたどころか、騎士団長のスキルすら把握されている!?

 バカな!

『鑑定』と『聴力強化』を両方持っているとでもいうのか!?



「まずは話を聞いて欲しい。君達にとって悪い話にはならないと信じている。王城に案内してくれるかな?」



 穏やかにそう言って微笑ほほえむミロシュ王。


 私は恐る恐る、真偽判定官を見る。


 彼も、恐る恐る私に向かって頷いた。


 悪い話にはならないと、本気で思っている…。


 決意は、一昨日したはずだ。

 どんなに恐ろしくても、状況と私の勘が、案内すべきとうったえている。



「1つだけ、お聞きしてよろしいですか?」


「うむ。1つと言わず、いくらでもどうぞ」



 勇気を振り絞った私の言葉に、ミロシュ王は少しユルい調子で答える。



貴方あなたがたは、どうやって、ここまで来たのですか?」



 ずっと気になっていたことだった。

 もしあれが、本当に見たままのものだったら、かなりの疑問が解消されるだろう。


 そして…。



「いい質問だね。あれは"転移"の魔導具の力だ。フリズスからリバキナを守るための、かなめとなるものだよ」



 ミロシュ王から返ってきた答えで、かなりの疑問は解消した。


 彼らは、スルトから遠く離れたこの国にも、短時間で容易たやすく来れるのだ。


 そして、逆らうことが無意味であることも理解した。


 騎士団長の言う通り、恭順一択なのだ。


 私に、我が国にできることは、その条件をできるだけ良いものにすることだけ。



「ご案内いたします」



 やってやろうではないか。


 文に書かれていたことは真実だった。

 ならば最低でも、フリズスにくだるより良い条件を得られるはずだ。


 私は気合を入れ直して、スルトの者達を招き入れた。






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