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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第78話 覚悟

 どうしてこうなった…。


 オレは談話室のソファーに深く座り、目頭を押さえながら思考を巡らせていた。

 皆も今ある情報を一通ひととおり聞いて、それぞれ考えにふけっている。


 現段階で、少なくとも4つの国が軍拡ぐんかくを決めた。

 領土の拡大にもいっそう力を入れるつもりらしい。


 これらの国は、今までも領土的野心を持ち、徐々(じょじょ)に領土を拡大してきた。

 しかし、それはあくまでも無理をしない範囲でのことだった。


 それがここに来て、無理をしてでも急速に行うことになったのだ。

 どう考えても、スルトに対抗するためであることは明らかだった。

 というか、会議で明確にそう言ってた。


 割を食うのは大国の周辺国だ。

 おそらく服従か滅亡かをせまられ、結果多くの不幸と死者が生まれるだろう。


 どうして、こうなった…。



 オレ達が原因であることは間違いない。


 ……単純に考えが足りなかったんだ。


 大国と雌雄しゆうを決することになるとは思っていた。

 でも、大国の国力は今までと同じペースで拡大する前提で考えて、深くは考えていなかった。


 問題なく勝てそうだからと、あとはどれだけ被害を減らせるかと、自国と直接対峙する国のことばかり考えてしまっていた。


 大国が焦ってスルトに対抗しようとするなんて、ほんの少し考えれば分かりそうなことだったのに…。



『ジョアンの先程のつぶやき。彼はこうなることを読んでいたのでは? 過去の発言を全て確認いたしましたが、自然な範囲内でご主人様方の思考を誘導していた可能性があります』



 アカシャが考えを伝えてくる。


 思考の誘導…。

 アカシャやオレの苦手とする分野。


 くそっ。

 確定情報じゃないから、それを本当にやっていたかどうかすら、オレには確信が持てない。


 それはアカシャも同じなのだろう。

 一切、断定するような言葉を使っていない。


 直接、確かめるしかないな。


 オレはソファーに浅く座り直し、少し前のめりになってひざの上にひじを立て、手を組んだ。



「ジョアンさんは、こうなるって分かってたのか?」


「はい。おおよそこのようになるとは、思っておりました」



 オレの質問に、ジョアンさんは間髪入れずにそう答えた。

 まるでこの質問が来ることを想定していたかのように。


 それはオレを少し苛立いらだたせた。


 こうなると、アカシャが指摘した可能性の現実味が高まってくる。



「どうして、事前に言ってくれなかった?」


「主殿の考えている通りですよ。言わない方が都合が良かった。それだけのことです」



 ジョアンさんは事もなげに言ってのける。


 やっぱり、分かった上でわざとこの状況にしたのかよ。

 ふざけんな。


 オレとジョアンさんのやり取りに、皆の視線が集まり始めた。



「大陸中で戦争が激化する未来が見えてるのにか? 大陸の統一が早まれば、どれだけ被害が増えてもいいのかよ?」


「それは違います。()()()()のが最も被害が減ると、私は考えています」



 顎髭あごひげでて答えながら、全てを見透かすように薄く笑うジョアンさん。


 意味分かんねぇよ…。



『現状は、想定より被害が増える計算です』



 ほらな。アカシャもこう言ってる。



「現状の情報では、想定より被害が増えるはずなんだ。ジョアンさんは、どうしてそう考えた? ひとこと相談があっても良かったんじゃないのか?」



 オレはもう一度、どうしてと問いただした。


 本当に被害が減らせるならそれでいい。

 でも、"どうして"そうなるのかは知っておきたい。

 知らなければならない。


 ジョアンさんはオレよりずっと賢い。


 何かがあるはずだ。



()()()()()()。今のこの状況が重要と考えたのですよ。人の感情が入る以上、想定通りになるということは少ない。今までもそうだったでしょう?」



 ジョアンさんの言葉を聞いて、オレは前王ファビオやノバクを真っ先に思い浮かべた。



「それは確かに、そうだ。でも、結局ジョアンさんが何を言いたいのかが、オレには分からない…」



 オレがそう言うと、ジョアンさんはゆったりと顎髭あごひげを撫でて笑みを深めた。



「ここで覚悟を決めてください、主殿。貴方の成長が全てを変えるのです」



 それを聞いたとき、オレは初めて気がついた。


 ずっと、自分自身、心のどこかで思っていたことに。


 ヘニルとの戦争、ノバク達への対応、様々な場面で心当たりがある…。



 オレは、覚悟を持って決断することが苦手なんだ。







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