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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第74話 宴会だ!

「おお! 小僧、よく分かってるね。前と同じ土と言いつつも、少し違うじゃないか!」


()()婆さんに合わせた土だからね」


「まさにアタシが今欲していたものが詰まっているよ!」



 世界樹の婆さんが嬉しそうに語る。

 オレが空間収納から出して、念動魔法で幹の周囲にバラまいた土(世界樹スペシャル)は気に入っていただけたようだ。


 それにしても、木から声が聞こえるってのは不思議だよなぁ。

 声帯とかないのにね。



『世界樹は音魔法で擬似的な声を出しているのです。ご主人様も真偽判定を誤魔化す時に使っておられる技術ですね』



 アカシャがオレの疑問を察して解説をしてくれた。


 なるほど。そういうことなら納得だ。

 物理的に喋ってるわけではないんだな。



「ところで、小僧の後ろにいる妖精達はここらで見ない顔だね。何だか反応もおかしいが…、もしかして外の妖精達かい?」


「ああ。数千年前に、ベリンダって妖精を中心にしたグループが外に出ていったのは覚えてるかな? その末裔達だよ。……げっ!?」



 世界樹に妖精達のことを聞かれたので、答えつつ妖精女王を紹介しようとして振り向くと、彼女はもちろん妖精達は皆、未だにさめざめと泣いていた。


 世界樹を目にしてから数分は経っているだろうに、それほどまでに感激してたのか…。


 まず妖精女王が挨拶するべきと思ってたのに、これは話ができる状況なのか?



「えー…、ベアトリーチェ様…? 大丈夫ですか? 外の妖精の代表として、世界樹の婆さんに挨拶をお願いしたいんですが…」


「ぐすっ。…すまないね。大丈夫だ。しかしセイ少年、私に敬語で世界樹様にタメ口というのは…」



 オレが妖精女王に確認をとると、彼女は涙をぬぐって答え、そして苦言をていした。


 いやまぁ、確かに変な感じではあるだけどね…。



「初対面のときに色々あったのさ。アタシゃ気にしないよ。それより、ベリンダ達のことはもちろん覚えているさ。その子孫達…、しっかり顔を見せておくれ…」



 世界樹の婆さんがそう話したことで、妖精達は皆涙を拭って、妖精女王から順に自己紹介をしていった。


 妖精達は皆、感極まったように話し、世界樹から言葉をもらうと再び涙を流した。


 皆じゃないか。1人だけ例外もいたけど。



「くく。主役は最後に登場するものなの…。あたちはベイラ! アールヴヘイム出身だけど、今は親友のセイのところに居候イソーローちてるの! よろちく、婆ちゃん!」



 最後に挨拶をしたベイラは、オレの頭の上で思いっきり元気に声を出していた。

 アカシャに見せてもらうまでもなく、ドヤ顔であったことは間違いない。



「はぁ…。アンタが、小僧が杖を贈りたいって言っていた子かい。まったく…、ベリンダに瓜二うりふたつじゃないか。小僧もベアトリーチェも、苦労してるんじゃないのかい?」


「「そうなんですよ」」



 世界樹の婆さんのベイラに対する感想に、オレと妖精女王は即座に何度もうなずいた。

 アレクとネリーとミニドラも頷いていた。

 スルティアだけ、ふーんといった感じだ。



「なっ…!! 失礼なヤツらなの! あたちがいつ苦労をかけたっていうの。激おこなの! ……まぁ、思い当たる節が、ないこともないのかもしれないの…」



 ベイラはぷんぷん怒っていたけれど、ほぼ全員から冷ややかな目で見られたことで何かごにょごにょ言っていた。



「ふふ。本当にベリンダそっくりだよ。懐かしいねぇ」



 世界樹の婆さんが感慨深げに声を出す。



「そういや、アールヴヘイムに伝わる始祖の言葉ってありますよね。あれって、子孫への言葉ってことになってますけど、元はベリンダさんから世界樹の婆さんに向けられた言葉ですよ。永い歴史の中で、変わっちゃったみたいですけど」



 オレがアカシャから聞いたことを話すと、妖精女王がギョッとした顔でこちらを見る。


 知らなかったよね。ごめんね。先に話しておけばよかったよ。

 心の中で妖精女王にびる。



「ベアトリーチェ。…聞かせておくれ」



 やはり感慨深げに、世界樹の婆さんは妖精女王に話をうながす。



「は、はい。アールヴヘイムに伝わる始祖の言葉は、『面白き一生だった。心残りはあっても、後悔は何一つない。願わくば皆が、そうあらんことを』です」


「変わる前の言葉は、最後の一文が、『願わくばいつか母上に、そう伝えて欲しい』ですね」



 オレは妖精女王の言葉の後に、真実を補足した。


 ベリンダさんが帰りたかったのは、世界樹の婆さんに、外が面白かったことを伝えるためだけだ。

 彼女は決して外に行ったことを後悔したりはしていなかった。


 妖精という存在自体に世界樹への帰巣本能があることで、いつしか世界樹の元へ帰ることそのものが目的と変わっていったようだけど、外の妖精が世界樹を探す永い旅の始まりはここにある。



「そうかい…。伝えてくれてありがとうよ」



 世界樹がボソリとつぶやくと、その後に沈黙が流れる。


 何だか湿っぽくなっちまったな…。


 違う。


 違うぞ。


 ベリンダの物語は喜劇なんだぜ。


 オレはそれを知っている。



『アカシャ。オレの記憶にある地球の"映画"ってのがあるだろ? ベリンダさん達が島を出ていった後の一生を、映画みたいに編集して流せないかな?』



 いつものように肩の上に座るアカシャに、難しいお願いをする。

 一瞬。

 無表情のアカシャが、"ふっ、愚問を"とばかりに笑ったような気がした。



『"ドキュメンタリー"というものですね。どこを切り取って繋ぐかが難題ですが、お任せください。やってみせましょう』



 アカシャも感情豊かになってきたなと思うような、抑揚はないけれど力強い返事だった。


 オレはニヤリと、いたずらっぽく笑う。



「よし! 宴会をやろう! バーベキキューだ!」



 湿っぽい空気の中、突然そう叫んだオレを、皆が驚いたように見つめる。


 直後。

 世界樹から見てオレ達の背後に、大スクリーンに投影されたような映像が、オレの魔法によって流れ始めた。


 映像は、ベリンダさんが世界樹の婆さんに外の世界に行くのだと啖呵たんかを切るところから始まった。



「この映像は、名付けて『ベリンダの冒険』! ちょっと変わった妖精が、仲間たちと面白おかしく旅をする物語だ! これをさかなにして、宴会しようぜ!」



 オレは両手を広げて、笑って言った。


 驚いているヤツらが大半だけど、乗ってくるヤツらもいた。



「乗ったの! 皆に焼きリンゴ食わせてやるの!」



 面白いことが大好きなベイラが乗ってくる。



「ベリンダさんがどんな旅をしたのか。楽しみだね」


「ったく。面白いこと思いついちゃったって、顔に出てるわよ」


「バーベキューは好きじゃ。皆で騒げるからのぉ。あと、酒が飲める」


「ガッ!」



 他の仲間達も、オレのノリに慣れているので乗ってきてくれた。



「まったく…。ぶっ飛んだ人間のガキもいたもんだね。でも乗った! 私らの分まで酒はあるんだろうね!?」



 吹っ切れたように笑った妖精女王も乗ってきた。

 あなたもベリンダさん似ですよね。


 酒ならたんまり用意してるよ。

 オレとアレクとネリーは飲まないから、あんまり減らないんだ。

 ガッツリ飲んでくれ。



「くっくっく。アタシが飲み食いする分も用意してあるんだろうねぇ!?」


「任せとけ! 最高の肥料と水をくれてやるぜ!」



 世界樹の婆さんも乗ってきた。


 農家の息子舐めんなよ。

 そんなん常備してあるに決まってんだろ。





 この後、『ベリンダの冒険』上映会は多いに盛り上がった。

 皆がベリンダと仲間達の物語に熱中し、笑い合った。


 途中で騒ぎを聞きつけてやってきた、世界樹の庭の地元妖精達も乱入して、宴会はさらなる盛り上がりを見せた。


 ベイラと妖精女王とスルティアが羽目はめを外し過ぎて、翌日世界樹の婆さんに怒られたことは言うまでもない。









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