表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/365

第72話 ちょっとどころじゃなくズルい能力

「じゃ…、じゃんけん、だと…?」


「こ、こんな方法が…!」


「これなら、弱いものにも平等にチャンスが…」


「しかし、では人間は、何のために日々鍛えているというのか…」


「うむ。これでは努力し鍛え抜いた者がバカをみる。平等であって、公平ではない方法…!」


「やはり我ら妖精は、より公平な方法を取るべきだ!」


「そうだそうだ!」



 妖精郷アールヴヘイムの城のバルコニーから、眼下の広場に集まった民衆の反応を眺める。



『じゃんけんで決めたいと言う者は皆無かいむです』



 集計をしていたアカシャから報告が入る。

 皆無かよ。

 さすが、戦闘民族たる妖精達は思考回路が違う。


 闘技大会で世界樹行き決めるというのは、力がない妖精達から不満が出るのではと思った。

 だから、人間にはじゃんけんという方法があると話してみたのだ。


 妖精女王は面白いから話すだけ話してみようと、世界樹についての説明を民衆にすると共に、一案として提案してくれた。


 その反応がこちらだ。

 まぁ、抽選は知っているが使わないと言っていたからね。似たような理由なんだろうな。


 言っていることは分からないでもない。


 地球人的感覚で言えば、スポーツの大会の結果をじゃんけんで決めようと言われたようなものなのだろう。

 知らんけど。


 妖精達がそれでいいなら、文句はない。



「決まりだね! 大会は明日、トーナメント形式で行う! 世界樹行きは明後日だ! 出場するものは今日中に言ってきな! 子供達も参加していいけど、負けても親が勝ったら連れて行くからね。枠は上から10枠が埋まるまでだよ!」



 妖精女王がバルコニーから、民衆に宣言する。


 子供達は戦闘面で不利な分、特例を設けるらしい。


 アールヴヘイムでは20歳以下を子供としている。

 平均寿命が300歳の長寿な種族だからか、子供の数はそれほど多くはない。

 おそらく上位者の中で20歳以下の子供がいるのは、多くて2人といったとこだろう。


 この特例があるから、10位までではなく、10枠埋まるまでと言ったようだ。


 城のバルコニーから行われた妖精女王の説明が終わると、さっそく妖精達がエントリーのために、城内の受付に長蛇の列を作る。


 うわあ…。

 これは受付の人が修羅場になるヤツだ。

 自身も出場するとしたら、明日の試合に差しつかえるレベル。


 見かねたオレは、助け舟を出すことにした。



「ベアトリーチェ様。出場者の管理はお任せください。民衆に出場するかしないか、つぶやかせていただけますか?」


「は? 助かるが、それだけでいいのか?」



 妖精女王に提案すると、いぶかしみながらもすぐに行動に移してくれた。

 妖精女王の呼びかけに応じて、妖精達が各々(おのおの)出場の有無を口に出し始める。


 普通なら、絶対に聞き分けることなどできないような状況。

 普通ならね。


 出場を表明した者のリストアップ。

 それはすなわち、()()()()にあたる。



『アカシャ』


『造作もないことです』



 アカシャは名前を呼んだだけで、即座に頭の中にできあがったリストを出してくれた。

 オレのアカシャ、超有能。知ってたけど。



「"念写"。ベアトリーチェ様、こちらが参加者リストです。この後に増減すれば、新しいのを出しますので」



 ふところから取り出した羊皮紙に、アカシャが作ってくれたリストを魔法で印刷する。

 オレの周りに現れ、浮かび、細分化されたインクが羊皮紙に飛んでいく。

 あっという間に印刷された羊皮紙を、妖精女王に差し出した。



「は? …え? ちょっと待ちな、これは本当に正しいのかい? そもそも、なぜお前が皆の名前を知っているんだい? ちょっ、ベイラっ! 説明しな!!」



 自分の身長ほどもある羊皮紙を、ちゅうに浮かぶことで器用に受け取った妖精女王は、それを見て目をき、わなわなと震えだした。



「セイのことは気にするだけ無駄なの。ちょっとどころじゃなくズルい能力スキル持ってるから、そういうものだと思っとくの」


「そういうものって…」



 妖精女王が、だらしなくオレの頭の上に寝そべったベイラの言葉を聞いて絶句している。

 ベイラの態度に絶句しているわけでは無さそうだ。


 ベイラの言い方はともかく、否定はしづらいね。

 確かにアカシャは、ズルいと言われても仕方がないくらい圧倒的な能力だ。



『オレのアカシャは最高ってことだな』


わたくしが最高であれば、ご主人様はより最高ということです』



 珍しく少し照れた感じのアカシャは、いつも以上に可愛かわいかった。




 翌日行われた闘技大会は、かなり見応えがあって面白かった。

 ネタバレ禁止をアカシャにお願いしたかいがあったぜ。


 1戦ごとにボロボロになった妖精達を回復したりして、オレ達も結構忙しかったけどね。

 いつもは自力で回復するか、ボロボロのまま次戦に望むらしい。そこまで調べて無かったから驚いたよ。


 結局、ベイラと妖精女王を除く世界樹行きの妖精10名は、闘技大会の上位9名と、3位になった妖精の子供1名となった。


 1位は宰相のグリゴルさんだった。

 兵士長より強いんかい、とツッコミをいれてしまったよ。

 この世界、高齢者がやたら強い。理由は魔法があるからで間違いないけれど。


 そんなわけで、明日は妖精達をともなって世界樹ツアーだ。

 久しぶりだけど、世界樹の婆さん元気かな。


 いや、元気なことは知ってるんだけどね。






前回は感想をいただきました。ありがとうございます。

カッコ良さは『空間歪曲』の方が上なんですが、隠蔽度が高い『空間湾曲』にしたという感じです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ