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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第49話 戦後処理

 王位継承戦会場は、オレの勝利と勝利後の他国への牽制に対してざわついていた。


 実況席のアナウンスは、ずっとオレとオレを擁立ようりつしたミロシュ殿下をたたえる言葉を繰り返している。

 まぁ、これもプロパガンダの一環だ。


 オレはというと、『大賢者』の爺さんを抱えたまま、騒がしい会場の音を聞きながら戦闘区域の消火活動をしていた。


 爺さんが戦闘区域全てを燃やしたせいで、主に地面が大変なことになっている。

 戦闘が終わったからと一般人が足を踏み入れでもしたら、命が危ないくらいに。

 真っ赤に赤熱した地面を、安易に踏みしめようとする人間はいないかもしれないけれど。



『ご主人様、皆がこちらに飛んできます』



 アカシャに言われて仲間がいた観客席の方を見ると、ネリー、アレク、ベイラ、スルティア、ミニドラ、ジョアンさん、ミロシュ殿下が揃ってこちらに飛んできていた。


 ジョアンさんは"浮遊"が使えないので、ミニドラに乗っている。


 戦いの前から知ってたけど、なぜか今回はミニドラも観客席にいたんだよな。

 なぜかというか、ネリーの仕業しわざなんだけど。


 魔法で大型犬サイズぐらいになって観客席にちょこんと座っているミニドラを、周りの観客達は目を疑うように何度も見ていた。

 今はジョアンさんを余裕で乗せられる、通常サイズだ。



「やったわね!」


「信じていたよ」


「楽勝だったの!」


「魔力徴収の指示が来た時は焦ったぞ」


「ガガッ!!」


「さすがは主殿です」


「はは。本当にあのラファエルに勝ってしまうとは」



 皆それぞれオレに声をかけつつ、まるでサッカーでゴールを決めたときみたいに抱きついてきた。


 え、待って、こんなことするなんて知らなかった!

 ノリなの!?


 ミロシュ殿下は混ざっちゃダメでしょ。これから王になるのに、威厳が!


 ちょっ、ミニドラ、お前は無理だって!

 顔擦り付けるくらいにして!

 ジョアンさんはミニドラの上で笑ってるし!



 仲間たちにもみくちゃにされていると、ミカエルも飛んできた。

 後ろにはナドル家の方達を引き連れている。



「お曾祖父じいさま!!」



 すまねぇ。お前の曾祖父ひいじいさんは、気絶したままオレと一緒にもみくちゃにされてるんだ。



「ミカエル、安心してくれ。気絶してるだけだ。怪我けがもない」



 ちょっと安心できる状態には見えないので皆に離れてもらって、左手に抱えていた大賢者の爺さんをミカエルに引き渡す。


 ミカエルは"身体強化"を使って、そっと大賢者を抱きかかえた。

 お姫様抱っこで。


 11歳の曾孫ひまごにお姫様抱っこか。

 起きたときにこの状態だったら、いたたまれないな。

 目覚める予想時間を考えると大丈夫だろうけど。たぶん…。


 後ろにいるミカエルの父ちゃんとかに引き渡してあげるべきだったんだろうけど、面識があるのはミカエルだけだからね。

 万が一この状態で起きてしまったら、強く生きて欲しい。



「すまない。感謝する…! お曾祖父様じいさまを生かしてくれて…!」



 ミカエルは本当に申し訳無さそうに、泣きそうな顔で震える声を絞り出した。



「気にすんなよ。友達だろ?」



 軽くそう言ってみたけど、単純にミカエルのためってわけでもない。

 オレ自身のためでも、国のためでもある。



「……! ああ、そうだな…。もう、誰かに遠慮することもない…」



 腹黒いオレの言葉を、ミカエルは素直に受け取ってくれた。

 すまんな。

 でも、ミカエルと友達になりたいってのも本心だ。



「オレ達はこの後、王のところに行く。ミカエルは『大賢者』様を家まで運んであげるといい」


「うむ、そうさせてもらう。……ワトスン、ノバク殿下は…」



 そういえば、ミカエルはノバクと行動することが多かったな。

 暴君でも友達だと思ってたのかもしれない。

 それに、ミカエルはかなりオレ達の事情を知っている。

 これで正式な王位継承が行われるとは思っていないだろう。



「ミカエルは優しいな。ノバク殿下次第だ…。大丈夫、殺したりはしないよ」



 オレが答えると、ミカエルは少しホッとしたような表情を見せた。



「そうか。少し安心した…。では、私達は失礼する。ワトスン、今日の借りは決して忘れん。何かの際には必ず力になろう」


「おお、そりゃ得したな。心強いよ」



 笑って言うと、ミカエルも笑みを見せて去っていった。



「では、予定通りスルト王のもとへ参りましょう。ミロシュ殿下…」



 オレは手のひらを上に向けて、王たちがいる観客席を指し示し、ミロシュ殿下の道を開けるように礼をした。


 皆もそれぞれ、ミロシュ殿下に対して頭を下げる。


 ミニドラまで。マジ頭良すぎだろアイツ。

 ちょっとミロシュ殿下を食いたそうなポーズに見えなくもないけど、周りにもちゃんと伝わってるだろ。たぶん。



「うむ。皆の者、私へ続け!」



 少なくともミロシュ殿下にはミニドラの気持ちが伝わっていたようで、特にツッコミはなくオレ達の先頭に立って飛んでいく。


 本当の予定は、オレが観客席のミロシュ殿下のところに行ってひざまずいて勝利を報告して、その後に行くはずだったんだけどね。


 まさかミロシュ殿下ごと乗り込んで来るとは。

 嬉しいサプライズだったけど。


 ジョアンさんが止めなかったってことは、これでも大丈夫って判断なんだろうな。



 王達は、観戦している場所から全く動いていなかった。


 まるで震えるように、いや実際に少し震えながら、オレ達の動向を見続けていたようだ。


 そんな王達の目の前にオレ達は次々と降り立ち、跪いていく。


 正式な王位継承をするためには、王には形だけでもまだ権威を保ってもらわないといけないからね。


 最初に降り立ったミロシュ殿下が跪いたことで、周りで固唾かたずんで様子を見守っていた観客達も全員が次々と跪いていった。


 やけに静かだと思ったら、第1王妃は気を失ってやがる。

『大賢者』が負けたショックからか。

 運がいいな。スムーズに話が進みそうだ。



おもてをあげよ。なんだ、ミロシュ…」



 やがて頃合いを見計らって、王がミロシュ殿下に話を促す。

 見た目とは裏腹に、緊張しているのは王の方だ。

 精一杯虚勢を張って、威厳を出そうとしているように見える。



「王。ご覧の通り、セイ・ワトスンが勝利いたしましたので、"契約"の履行りこうについてのお話をしに参りました」



 ミロシュ殿下は顔を上げて、淡々と話した。


 実は"契約"で決まっているのは、勝ったら王位と継承スキルをよこせということだけだ。


 王達の処遇はこれから決まる。


 だからこそ、ヤツらはビビってるし、オレ達は有利な立場で交渉できる。









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