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第1話 農民の家に転生! これからは『セイ』として生きていく

2020/8/5 改稿しました



 ヤバい! 息ができん! 苦しい!

 どういうことですか、神様!

 いきなり死にそうですけどー!


 ゴポっと何かを吐き出して息を吸うのと同時に、オレは泣きはじめた。

 泣こうって思ってる訳でもないのに、泣けてくる。

 とはいえ、涙が出るわけでもない。

 おぎゃあおぎゃあ言ってるだけだ。

 とにかく、息ができてよかった! マジで死ぬかと思ったよ。


 自分が全くコントロールできないけど、たった今生まれたんだなって理解した。



「おー、よしよしよし。よく生まれてきたねぇ。ほら、アン、元気な男の子だよ! アンタもよく頑張った」



 む、すぐ近くから声がする。威勢の良いおばさんって感じの声だ。

 オレをとりあげてくれた産婆(さんば)さんかな? お母さんの名前はアンっていうのか。



「ありがとう。お義母かあさん。この子が無事に生まれてきてよかった。ジードを呼んでくれる? この子の名前を付けてあげなきゃ」



 アンお母さんの、鈴を転がすような声が聞こえた。

 声だけで、優しそうな印象が伝わってくる。


 さっきの人は産婆さんじゃなくて、おばあちゃんだったか。ジードっていうのはお父さんの名前だろうな。




 おばあちゃんがジードを呼ぶと、すぐにバタバタと音がしてドアが開く音がした。



「アン、生まれたか! よくやった! 赤ん坊はどこだ? オレにも抱かせてくれ!」



 慌てているような、大人の男性の声だ。大人にしてはやけに元気な感じというか、せわしない感じというか。

 たぶん、この人がジードお父さんだろう。



「父ちゃん、父ちゃん。次はオレな。オレにも抱っこさせくれ」


「あ、兄ちゃんずるい。父ちゃん、オレにも!」



 ジードお父さんに輪をかけて元気な子供の声が2人分。

 ずいぶん騒がしくなったな。どうやら兄弟もいるようだ。


 ところで、さっきから音は結構拾えるんだが、視界がどうにも悪すぎてよく見えない。

 生まれつき目が悪いとかじゃないだろうな…。


 心配だ。

 赤ん坊だから、まだ目が発達してないんだと信じたい。



「あんたたち、あんまり騒ぐんじゃないよ。赤ちゃんがビックリしちゃうじゃないかい。ジード、この子の名前は決まってるんだろうね?」


「おう、当ったり前よぉ! お前の名前はセイ。ジードとアンの息子、セイだ!」



 おばあちゃんにうながされたジード父ちゃんが、オレのことを高く抱き上げながら名前を付けてくれた。


 セイ。セイか。


 うん、覚えやすくていい。農民だからだろう、名字というか、ファミリーネームはないんだな。

 これからは農民ジードとアンの息子、セイとしてこの世界を生きていこう。


 とりあえず、泣く以外は何もしてないけど、疲れたから寝たい。

 起きたら能力の確認とかをしてみたいな…。







 ―――――――――――――――――――――――――







 目が覚めても、なんと視力はあんまり変わらなかった。

 どうしよう…。

 とはいえ、何かできるわけでもないし放置しておくしかないけど。


 気を取り直して能力の確認をしよう。実はずっと気になってたんだよな。


 神様からもらったオレの能力。

『超万能型情報端末アカシックレコード』


 アカシックレコードはすごく便利な能力だ。

 簡単にいうと、世界の全ての情報を知っていて、オレに教えることができる妖精のようなものである。


 世界の全ての情報を把握する能力としなかったのは、どう考えてもオレの脳が情報量の負荷に耐えられないのではないかと思ったからだ。

 それに、友達ができなかったとしても、話し相手になってくれるからな。素晴らしい!


 では、まずは声を出さずに発動できるかどうかだな。



『発動、アカシックレコード!』



 ………うん、発動してないっぽい。


 よし。次は発声で発動できるかどうかだな。

 これでダメだったら、(しゃべ)れるようになるまではお預けかぁ。

 神様にちゃんとこの辺り言及しておけばよかったなぁ。

 なんとか発動して欲しいところだ。


 いくぜ!



おぎゃあ(発動)おぎゃーあ(アカシックレコード)



 ………………ダメだな。

 発声した瞬間に無理だと思ったよ。

 ただ、泣いただけじゃねぇか…。


 はぁ、さっさと喋れるようになるしかないのかぁ。

 オレは未練たらたらに、どこにもいないオレの妖精さん(アカシックレコード)に話しかけた。



おぎゃあ(待ってろよ)おぎゃーあ(アカシックレコード)おぎゃあ(すぐ喋れる)おぎゃあ(ようになって)おぎゃー(呼んでやるからなー)


「いえ、その必要はございません。ご主人様。私は呼ばれずともここにおりますので」



 突然、オレの言葉に対して返事があった。

 あまり抑揚よくようのない、女の子の声だった。


 思わぬ返事ににビックリしすぎて感情の制御が出来なくなったオレは、尿を漏らした上にマジ泣きして、駆けつけたアンお母さんに介護されることになった。



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