表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/366

第20話 スルトでの立場

「こんなに魔力を使ったのは、あの戦争以来だ…」



 スタンはそう言いながら、つくったばかりの炭鉱都市の宿のベッドに倒れ込んだ。


 "都市創造"の手伝いで、スタンとヤニクさんからもかなり魔力を使ってもらったからね。

 疲れが出るのは仕方しかたがない。



「なぜマジッグバッグにベッドや家具が…」



 カロリナさんが不可解ふかかいそうにつぶやいている。

 あなたの部屋はとなりなんですけど…。まぁ、いいか。寝るまで1人ってのもさみしいよね。



「オレのマジッグバッグは容量が多いんですよ」



 ダンジョン・アルカトラ踏破とうは報酬のマジッグバッグだからね。メチャクチャ容量が多いんだよ。


 手ぶらでいられる空間収納の方が便利ではあるんだけど、出し入れに魔力を使う上に、入れているものの重量に比例して最大魔力量が減ってしまうというデメリットもある。


 なので、オレの空間収納には、即座に出し入れをしたいものを除いて、たくさんのマジッグバッグが入っている。

 これで空間収納の重量問題が解決するのだ。


 かさばらないようにマジッグバッグにマジッグバッグを収納するというのは割と有名なので、オレがベルトポーチからマジッグバッグを取り出しても特にあやしまれることもなかった。


 ここに賢者や大賢者の爺さんがたがいれば、魔法の気配がーとか言われてたかもしれんけど。



「それにしても、たった1日で街道も町も完成しちまうとはなぁ…。化物バケモンなんて言葉じゃ足りねーぜ。戦闘だけじゃなかったんだな、おめぇはよ」



 ヤニクさんが、どっこいしょとベッドに腰掛けた後にそんなことを口にする。その仕草しぐさはどう見てもおっさんだ。



「まだまだですけどね。どっちかと言えば戦闘以外の方が得意なんですよ」



 そう。まだまだだ。特に戦闘面は。

 少なくとも、毎日の修行を欠かすことはできない。


 アカシャがいるからこそ分かる。


 上には上がいる。



「まだまだねぇ…。おめぇにそれを言われると立場がねぇな。まいったまいった」



 ヤニクさんの言葉は軽かったけど、ガシガシ頭をく姿はくやしそうだった。



「……貴様、スルトでの立場は大丈夫なのか?」



 多少の沈黙の後、スタンが突然神妙(しんみょう)面持おももちで話しかけてきた。



「スルトでの立場?」



 いきなり話が変わったな。

 スタンの雰囲気ふんいきからして重要な話なんだろうけど、その言葉では情報が足りなくて、何が言いたいのか分からん。



うわさがある。スルトの上層部はあまり貴様のことを良く思っていないとの噂だ」



 オレが話を聞くつもりなのを見て、スタンはベッドから起き上がり、座り直して真剣な顔で語り始めた。



「ああ、それか。どうなるんだろうな? スルトに利益をもたらせば歓迎かんげいされるというわけでもないらしいね」



 スタンが何を話したいのか分かった。

 もちろん知っている。

 噂も、その噂の発生源も。


 第1王妃とノバク、ペトラ殿下、そして…王だ。


 何をしたいのか予想はできるけど、相談して行われていることではないので、どうなるかはまだ知らない。今はまだ彼らの頭の中だ。


 謀殺ぼうさつとか、具体的な計画を立てた段階で分かるだろう。


 オレも興味深く観察している。



「まるで他人事ひとごとだな。もはや貴様の存在はヘニルにとっても欠かせぬ。敗戦後、限りなく混乱を抑えらているのは、旧体制を維持いじしつつ改革を進めているからだ。だが、それも貴様のうしだてあってのこと。今貴様につぶれられては困るのだ」



 スタンの言葉は切実せつじつだった。

 ヤニクさんとカロリナさんもうなずいている。


 確かにオレがいなくなれば、ヘニルの待遇は確実に今より悪くなるだろう。

 彼らの心配はよく分かる。


 彼らはオレに情報を伝えて注意をうながしてくれているのだ。

 でも、注意はすでにしている。


 これ以上の対策はオレにも何かしらのデメリットがある。

 そしてオレは、それを望んでいない。



「できるだけの対策はしてるよ。あとは、向こう次第さ」



 だからオレは、そう答えた。


 向こうに合わせて、対応を決めるだけだ。

 用意はしてある。



「ふ。貴様は恐ろしいやつだ。敵でなくなって心から良かったと思う。…む、どこに行くのだ?」


「修行だよ。日課なんだ。一緒に行くか?」



 なんかスタンが格好つけた台詞せりふで話をめたので、オレは笑顔で席を立った。



「ま、まだ魔力に余裕があるというのか!? 化物ばけものめ!」



 スタンは顔芸が上手だなぁ。


 魔力は割合回復だからね。

 最大魔力量が多ければ多いほど、魔力回復量も多いんだよ。


 この辺りの魔物を狩り尽くすくらいなら全然いける。



「俺は行くぜ。まだまだだからな」



 ヤニクさんは挑戦的な笑みを浮かべてベッドから立った。

 今度はどっこいしょとは言わないんだね。

 分かってるよ。あれはわざとだったって。



「歓迎しますよ」



 オレはニヤリといたずらっぽく笑って言った。


 1人でやるより楽しいし、狩りだけじゃなく対人戦もできる。



「私も行くわよ」


「くっ…! 無論、私も行く!」



 スタンは参加すると言ったヤニクさんとカロリナさんを見て嫌そうにしつつも、みずからも参加すると言った。


 そんなスタンだったが、結局この後の修行では、魔力切れで気絶するまで頑張った。


 根性ならお前がナンバーワンだな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ