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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第19話 街道敷設

 オレ達は会議の後、すぐにミスリル鉱山へと出発した。

 スタンがかすからだ。

 まぁ、オレも異論は無かったんだけどね。

 このメンバーなら、全力で走れば数時間もあれば着く距離だし。

 トレーニングにもなる。



「ここが鉱山へとつながる街道になる予定の場所だな」



 ヘニルからスルトへ伸びる街道を数時間走ると、左側に木の切り株が道のように伸びている場所に行き着いた。



「ぜぇ、ぜぇ。き、貴様…。私に羽を伸ばさせるのではなかったか……?」



 スタンがひざに手を当てて息を整えながら文句を言ってくる。



『ご主人様を急かしたからには、最速での行動を要求するのは当然です』



 アカシャが若干じゃっかん怒ったような、抑揚よくようのない声で念話してきた。

 どうやらアカシャは、1番走るのが遅いスタンの体力の限界に合わせて速度を決めていたらしい。



「急かしたのはお前だろ? 今日はたっぷり寝るといいよ。それまではバリバリ働こうぜ」



 オレは笑って言った。

 アカシャを怒らせたんだから、仕方ないよ。



「おめぇその歳でどれだけ鍛えてんだよ、化物バケモンか。で? ここで止まったからには何かやるんだろ?」



 自分だって汗もかいていないのに、ヤニク・イスナーはオレを化物扱いしてくる。


 アカシャが毎日、体が壊れるギリギリ手前まで、最高効率のトレーニングをしてくれるからね。


 前世のプロスポーツ選手とかがよく怪我をしているのは、ギリギリ手前を狙うも()()()()()()()()()()時があるからだ。


 つまりアカシャのおかげでオレは、トレーニングをサボりさえしなければ同年齢で最高の身体能力を持っていることになる。理論値ってヤツかな。


 とはいえ、神に愛された能力や種族での身体能力の差などがあるので、能力なしの普通の人間と比べればって話だけど。


 でもまぁ、毎日しんどいトレーニングをサボらずやってきた身としては、化物と言われてむしろ嬉しいまである。



「鉱山までの街道を完成させます。カロリナさんは土魔法が得意ですよね。手伝って下さい」



 オレはヤニクさんの質問に答えた後、カロリナ・アザレンカに話を振った。



「え? 本気? ここから鉱山までどれだけ距離があるか分かって言ってるの?」



 ヤニクさんと違って多少は疲れた様子のカロリナさんが、汗をぬぐいながらオレのことを疑いの目で見る。


 オレは苦笑しながら答える。



「はは。思いつきでテキトーに言ったりしませんよ。ちょっと待ってくださいね」



 オレはアカシャに確認をとった後、拡声魔法を使って話し始める。



『街道予定地で作業中の皆さん。お疲れ様です。これから残りの作業を魔法で完成させますので、荷物をまとめて少しの間だけ予定地から離れてください』



 現在15人が5キロほど先で切り株の撤去てっきょ作業をしている。この人達を巻き込むわけにはいかないからね。


 作業員達が全員予定地の範囲から距離を取るまで、オレはカロリナさんにこれから使って欲しい土魔法の説明をした。


 ようは掘り起こして埋め直す。それだけだ。


 それにオレが方向性や範囲、切り株の撤去などのイメージを込めた土魔法を重ねる。



「なんで見えない場所の状況がわかるんだよ…」


「あの襲撃のカラクリはこれか…」



 オレの説明を一緒に聞いていたヤニクさんとスタンがそれぞれ感想を独りごちている。


 スタンなどはこれだけで戦争の時の襲撃がどのように行われていたか想像が付いたようだ。すげえな。





「そろそろ作業員が離れたころでしょう。始めましょうか」



 もちろん作業員が全員距離を取ったことは知ってるのだが、オレはそれらしいことを言った。



「正直魔力が足りるか不安なんだけど…。"地ならし"」



 カロリナさんは街道の分岐点まで進んで地面に手を付け、魔法を詠唱えいしょうした。


 "宣誓せんせい"と"限定"を使ってるし、掘りすぎたりして無駄に魔力を使わない限りは足りる。言わないけど。



「足りなかったら後日にでも残りをやりましょう。…"地ならし"」



 オレもカロリナさんの隣の地面に手を付け、カロリナさんに笑いかけながら魔法を詠唱する。


 ゴゴゴ…という、低く小さめの地響きが鳴り始めた。


 目の前の切り株だらけの道が掘り返され、切り株が道の端にけられていく。

 そして切り株がなくなった場所が埋め直されていく。


 それが前方に向かってどんどん進み、やがて見えなくなった。

 見えない場所でもまだまだ魔法は続いているけれど。


 一気に全範囲を掘り返して埋め直さなかったのは、その方法だとカロリナさんも範囲のイメージを持つ必要があるからだ。




「まだ終わらないの? いつまで続ければいいのよ?」



 少し経つと、魔力が少なくなって疲れてきたのか、カロリナさんが焦り気味に質問をしてきた。



「今8割ほどです。オレが止めるまでは続けてください」


「ギリギリつかな…。あなたはずいぶん余裕ね…」



 オレが答えると、カロリナさんは少し安心したようにぶつくさ言った。




「ありがとうございます、カロリナさん。お疲れ様でした」


「だから、あなたは何で余裕なのよ…」



 街道の整地が終わり、手伝ってくれたカロリナさんにお礼を言うと、あきれたように返事を返された。


 何でって、魔力に余裕があるからだよね。

 そのうちヘニルにも正しい瞑想めいそうが広まるように動こうかな。



「ずいぶん街道っぽくなったじゃねぇか」


「うむ。これなら馬車も通れる」



 ヤニクさんとスタンが整地された街道を見て感想を言い合っている。



「いやいや。これじゃ雨の日の馬車は厳しいでしょ。完成はこれからだから。……"街道敷設(ふせつ)"」



 オレはヤニクさんとスタンにツッコミを入れつつ、整地された街道に右手を向けて複合魔法を唱える。


 ガガガガッという石と石がぶつかり合うような音が鳴り響き、一瞬で石畳いしだたみの街道が完成した。



「嘘でしょ…?」



 カロリナさんが、完成した街道を呆然ぼうぜんと眺めながらつぶやく。


 ヤニクさんとスタンもあごが外れそうなほど大口を開けて驚いているようだ。



「土木用の複合魔法はすごく便利だから、戦闘用よりもこっちを修行するのをオススメしますよ」



 オレはカロリナさんに土木系複合魔法の素晴らしさを熱く布教した。




「ところでセイ、この街道の中央に伸びる2本の金属はなんだ?」


「すぐ分かるよ。鉄道馬車ってのを作ろうと思ってね」



 出来上がったばかりの街道を通って鉱山に向かう途中、スタンが質問してきたので、オレはいたずらっぽく笑って答えた。


 スタンは残念ながら、この後に鉱山で行われた"都市創造"を見て、この時の会話を忘れてしまったらしいのだが。


 鉄道馬車を見たときも、いいリアクションで驚いてくれたので良しとしよう。





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