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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

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第13話 金儲けは情報を制した者が勝つ

 リヴァイアサンの亡骸なきがらをマジックバッグに収納して、沈没船の場所に戻ると、残った皆が宴会えんかいをしていた。


 宴会と言ってもどんちゃんさわぎをしているのではなく、残った海人の皆さんがオレ達を待つ間に、軽くもてなす程度のものだったようだ。


 オレ達が戻ったのを見た瞬間、待っていた海人達ははじかれるように席を立って、こちらへと走ってきた。



「'も、もう戻られたのですか!? やはり、あのリヴァイアサンを倒すのは難しいのでしょうか?'」



 年配の海人が息を切らしながら、オレ達に聞いてくる。


 返事に少しだけ間が空いたことで、オレ達の視線がスルティアに集まる。



「'ふふん。もう倒したのじゃ。楽勝じゃったぞ'」



 腕を組んだスルティアが、ニヤリと笑ってドヤ顔で答える。

 なぜだかベイラも、スルティアの頭の上に仁王立におうだちして、ドヤ顔をしている。


 ちなみに、スルティアは海人語が分からない。

 アイツがどうしても勝利報告をしたいというから、アカシャに通訳をしてもらいながら話している。


 面倒くさいヤツだけど、オレはスルティアを甘やかしてやると決めている。

 1000年ぶりに地上を満喫まんきつしているのだ。ちょっとくらいの我儘わがままは許されていいだろう。



「'ま、まことか!?'」



 年配の海人は、嬉しさと信じられなさが半々といった様子で、オレ達を先導してくれた若い海人にたずねた。



「'はい。遠くから見ていましたが、あっという間でした'」


「'お、おおぉぉ…'」



 若い海人が答えると、年配の海人は泣きくずれた。


 リヴァイアサンは海人の集落を常に見張っていて、集落から出た者を捕食し続けていた。


 海人達はまともに集落から出ることもできず、命がけで遠くにいる他の海人達に今回のようにして助けを求めても、誰もリヴァイアサンを倒せる者はいなかった。


 もはやゆっくりとほろびの道をたどるしかないと思われたところに現れたのがオレ達だったわけだ。


 多くの者が犠牲ぎせいになった。今の気持ちはさっするにあまる。


 …ごめんよ。

 アカシャに聞いた時点でどうにでもできたのに、こちらの都合を優先して助けた。


 少しだけ落ち込んだ気持ちになっていると、隣にいたネリーがオレの服のそでをつまんだ。


 ネリーと目が合う。


 気にするなって顔だな。

 ネリーの能力じゃオレの感情は分からないなずなのに、バレバレかよ。


 ネリーにありがとうの気持ちを込めて笑いかけると、ネリーも笑った。

 近くにいたアレクも、良かったというように微笑ほほえむ。



『良い友人達です』


『ああ。まったくだ』



 アカシャが嬉しそうに言った念話に、オレは完全に同意した。





「'ありがとうございました。本当に、何とお礼を申し上げれば良いのか分かりません'」



 別れ際、年配の海人が改めてお礼を言ってきた。

 他の海人達も深く頭を下げて、感謝の気持ちをあらわしている。



「'たいしたことはしていませんよ。それより貿易の件、よろしくお願いします'」



 オレはミスリルとアクエリアスをしゅとした交換貿易について改めてお願いし、握手を求めた。



「'ええ。私共わたくしどもとしても願ってもない条件。こちらこそぜひ、よろしくお願いします'」



 年配の海人が、オレの握手におうじる。

 水かきのついた手はひんやりしていたが、まったく嫌な感じはしなかった。


 地上でのアクエリアスの価値はミスリルの10倍以上。

 海底での価値はほぼ真逆だ。

 明らかにWin-Winとなる貿易になる。


 しかも、オレ達にはヘニルで発見されたミスリル鉱床こうしょうがある。

 地上でのミスリルの価値を落とさないためにも、海人への輸出は丁度ちょうど良かった。


 オレと年配の海人はあくどいみをわし合う。

 商売のにおいをぎつけたクーン先輩とシェルビーも、オレの後ろで似たような笑みを浮かべている。


 ミスリルへの投資だけでも大儲おおもうけなのに、そこにさらにアクエリアスがからむ。

 商人ならば面白くてしょうがないだろう。


 オレの場合はさらに、ヘニルが儲かるほどオレも儲かる仕組みだからな。

 金儲けは情報を制した者勝ちだ。





 浮遊大陸に戻った後は、ミロシュ殿下が想像をはるかに超える成果に目を白黒させたり、ギルドマスターのアリソン・キーズがリヴァイアサンを見て顔を引きらせたりと色々あったりもしたが、あまり騒ぎになりすぎることはなかった。


 ダンジョンや商売目的で浮遊大陸に滞在している者はともかく、純粋な浮遊大陸の住人は、そのほとんどがスラム出身の者だからだ。


 彼らからすれば、お腹いっぱい食べられ、幸せに暮らしている今の状況が最大の驚きなのだ。

 オレ達が何をやっても、あの人達ならそれぐらいやるという感想で一貫いっかんしている。

 これについては嬉しい誤算だった。



「あー、面白かった! ねぇ、残りの夏休みは何をする?」



 領主屋敷の談話室で、ネリーが満足気にオレに話を振ってくる。

 帰りもイザヴェルで一泊だ。


 オレ達は修学旅行の最後の夜のように、今回の宝探しの思い出話などに花咲かせながら、だらだらと過ごしていた。



「それなんだけどさ、そろそろ本腰入れてやろうぜ」


「何を?」



 ネリーが首をかしげる。



「領地経営」



 オレはニヤッと笑って短く言った。


 戦争の褒美ほうびで、アレクとネリーはヘニルに領地をもらっている。

 オレは領地こそないが、ヘニル全体の税収を上げると利益がある。

 それに、スタンにヘニルをませると約束もした。


 イザヴェリアはミロシュ殿下が優秀だし、オレ達もいることが多いから問題ない。

 でもほかは、代官に任せっきりにしておくと残念なことになりそうな雰囲気ふんいきがある。


 夏休みは、直接領地をいじるにはいい機会だ。


 特にアレクは、ヘニルだけでなく、ベルジュもどうにかした方がいいだろう。






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