表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第3章 大陸動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/366

第9話 利権と遠足

 毎週水曜の放課後に委員会が開催する情報共有会。


 今日の共有会は、ほとんど全校生徒が集まったのではないかと思われるほどの人であふれかえっていた。


 理由は2つ。


 ヘニルで大規模なミスリル鉱床こうしょうが発見されたといううわさがすでに出回っていること。


 それから、事前に今日の共有会では委員会から大きな話を持ちかける予定があると発表していること。


 以上のことから、生徒だけでなく教師までが、この大教室に多数集まる事態に発展した。


 毎週、共有会と同じ日程で開催されている生徒会の情報交換会は今日はお休みということになったようだ。

 ただでさえ風前ふうぜんともしびといった状態だったわけだが、今日開催したら誰も集まらないと判断したらしい。

 正しい判断だけど、来週以降は存続が危うくなりそうだな。


 ちなみに、ノバク達や、ペトラ殿下などの生徒会メンバーも偵察という名目でこの場に来ている。

 特にそれについて文句はない。意外にもあいつらは委員会に出禁になってないからな。堂々と差別する割に、イジメはしないみたいだ。もちろん、しない方がいいんだけどね。


 オレとしては、この機会に交換会は共有会に吸収されるのが理想的だと思う。

 彼らの性格や感情を考えると、無理だろうけど。



「セイ先輩、セイ先輩! ボク、楽しみでしょうがないッス!」



 委員会メンバーと共に教壇の前に立ち、開始の時間になるのを待っていると、一番前の席に座るシェルビー・コリンズが目を輝かせながら話しかけてきた。



「もう。シェルビーったら、先輩を困らせてはいけませんわ」



 シェルビーの隣に座るセレナ・ハレプが、彼女を注意する。



「いや、まだ始まってないから大丈夫だよ」



 オレは笑ってそう伝える。

 シェルビーとセレナとはあの一件以来仲良くしている。

 修行にも結構な頻度ひんどで参加しているくらいだ。


 いつも委員会には授業が終わるとダッシュで来て、いい席を確保している可愛い後輩達である。



「フッフッフ。今日の情報は特大よ。期待にはこたえてあげるわ」



 セレナから見てシェルビーをはさみ込むような形で座っているネリーが、腕を組んでふんぞり返って語る。

 すっげぇ楽しそうだな、おい。



「え? ネリー先輩、もう知ってるんスか!?」


「ふふん。当ったり前じゃない! セイが知ってることは、そこそこ知ってるわ!」



 シェルビーがネリーの欲しそうな言葉を言うもんだから、ネリーが調子に乗っている…。

 そこそこって…、その通りではあるけど、得意げに言うことか?



「おい、ネリー。始まる前にネタバレするなよ?」



 なんかやらかしそうな予感がするネリーにくぎを刺しておく。



「もちろん! 宝のことなんて言わないわ!」



 良い返事でやらかしたネリーを見て、隣のアレクがあちゃ~って感じで顔に手をやった。

 もちろんオレもだ。釘なんか刺さなきゃ良かった。


 ざわっと喧騒けんそうが広がる。


 宝? ミスリルのことではないのか? などと、そこら中から今のネリーのネタバレに対する反応が聞こえてくる。



「今のは酷い。僕でなくとも記憶しちゃうよね…」


「ネリー、あとで反省会な」



 アレクとオレがネリーに苦言くげんていする。


 やらかしに気付いたネリーはアワアワし始め、ネリーの頭の上のベイラは腹を抱えて笑ってる。

 念話をつなげているスルティアも爆笑だ。

 アカシャは『愚か者ですね』と一言で切り捨てた。


 始まる前からメチャクチャじゃねぇか。



「ワトスン、時間だが…」



 委員会メンバーの7年生の先輩が時間になったことを教えてくれる。

 うん、アカシャも教えてくれたけど、この雰囲気ふんいきで始めるのかぁ。



「静かに! これより今週の情報共有会を始めます」



 かなりざわついていた大教室だったが、声を魔法で拡大したおかげか、一気に静まった。



「えー、皆さん今は宝のことで頭がいっぱいかもしれませんが、まずはヘニルで見つかったミスリル鉱床の話からします」



 静まった教室に向けて、まずは予定を話す。


 ミスリルと宝が別物と分かったことで、再び教室がざわつきかけるが、すぐに静まっていく。

 みんな続きが気になって仕方ないみたいだな。


 オレは少しホッとして続ける。



「実はヘニルのミスリル鉱床は非常に規模が大きく、我が国に莫大ばくだい賠償金ばいしょうきんを払ったヘニルだけでは開発の資金が足りません。よって、開発費の50%をヘニルが出し、残りの50%はスルトで出資者をつのることになりました」



 要点を話すと、ネリーがネタバレをしてしまった時並に教室がざわめく。

 できるだけ静かにしようとつとめているにもかかわらずだ。


 貴族にも商人にも、それだけデカい話ということ。

 出資をするということは、ミスリルの利権が手に入るということだからだ。


 自然に静まるのを少し待って、続きを話す。



「私のヘニルへのコンサルティングによって発見されたものなのですが、事の重要性をかんがみて、出資者の調整は王家にお願いしています」



 コンサルティングの権利を考えると調整はヘニルとオレに権利があることになるんだけど、スルト王家にこれ以上恨まれても面倒だからね。

 お願いするというていで貸しを作っておくことにした。


 オレの言葉を聞いて、まだ詳細を知らなかったノバクとペトラ殿下の顔が輝き始める。

 さっきまでは悔しくてしょうがないって感じだったのに、分かりやすいヤツらだ。

 このネタをえさに復権できると考えてるんだろうな。



「とはいえ、私にも発言権がある形になっておりますので、出資の意思のある家は、私を通して王家に話を持っていく形を取っていただいても構いません」



 さらに続きを話すと、再びノバクとペトラ殿下の表情が怒りに変わる。

 王家に大きな利益をもたらしてるのに、ひどいなぁ。

 働きに対して正当な評価さえしてくれればいいのに。



「より国を豊かにする計画を提示した家が大口の出資者として選ばれるでしょう」



 出資の枠50%は争奪戦になるだろう。


 そのとき、ただミスリルを手に入れようとする家と、手に入れた後の流通まで提示した家では、後者が優先される。

 経済を回すことで国が豊かになっていくからだ。


 ヘニルの50%とワトスン商会の枠、そしてオレを通すことで決まる枠については、関わる者全てが豊かになるようアカシャがきっちり調整する。

 王家だけで決める枠も、宰相の意見を尊重すればおかしなことにはならないと思う。



 その後、ミスリル鉱床の話については質疑応答の時間もとって十分な説明を行った。

 家に関わる話はこれで終わりだ。


 次は、オレ達自身に関わる話だ。



「次は、先程少し漏れてしまった情報に関してです。これも希望者をつのるという話なのですが…」



 オレはニコニコ笑いながら話をする。

 個人的にはこっちが今日のメインだ。

 利権の調整よりは面白そうだからね。



「皆さん、魔大陸とこの大陸で、昔は貿易が行われていたことをご存知でしょうか?」



 急に話が突拍子とっぴょうしもない方向に行ったことで、皆が困惑した顔をしている。



「私達は、当時の貿易品を積んだ沈没船の在処ありかを発見しました。夏休みに私達と一緒に、海に眠る財宝を手に入れに行くメンバーを募集します」



 そう言った後に、イザヴェルで行くから旅は快適ですよと付け加えると、爆発的に盛り上がった。


 財宝探しにワクワクする子供はいっぱいいるだろうし、まだイザヴェルに乗ったことがない子も結構いるだろうからね。


 希望者のみの遠足えんそくって感じになるだろう。

 楽しみだ。 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ