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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第2章 学園の支配者

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第110話 支配者の帰還(下)

 目が覚めると、知らない部屋のベッドの上だった。



「シェルビー!!」



 セレナがボクの名前を呼んでくれる。

 起きたときから誰かが右手を握ってくれていたのは分かっていたけれど、やっぱりセレナだったんスね。



「ここは?」


「学園の救護室ですわ。先輩たちが運んでくれましたの」



 ボクが聞くと、セレナがすぐに答えてくれた。

 目に涙を浮かべたまま。

 もう。心配しすぎッス。


 あれ? 先輩…? そういえば…。


 ボクは眠ってしまう前のことを少しずつ思い出し始める。

 でも、記憶にかすみがかかったように、鮮明に思い出すことはどうしてもできなかった。


 頑張ってはっきり思い出そうとすると頭痛がして、ボクは左手で頭を押さえた。



「そういえばボク、なんか急に変な感じになって…。それで先輩たちが…」



 ダメだ。夢を思い出そうとしてるみたいッス。

 なんとなくしか覚えていない。



「『狂化きょうか』中のこと、ある程度は覚えてるんだな。それは知らなかった」



 すると、急に思い出そうとしていた声が聞こえてきた。

 ボクはびっくりして体を起こし、声がしたセレナの後ろの方を見る。


 そこには、なんとなく覚えている黒髪の先輩と金髪の先輩2人が立っていた。



「シェルビー。私達を助けてくださった、セイ・ワトスン先輩とアレクサンダー・ズベレフ先輩ですわ」



 セレナがそれぞれの先輩を紹介してくれる。

 黒髪の方がワトスン先輩、金髪の方がズベレフ先輩らしいッス。



「シェルビー・コリンズ…です。助けれくれて、ありがとうございました」



 ボクは危うく出そうになった口癖くちぐせを封じ込めつつ、ペコリと頭を下げて挨拶あいさつをした。



「シェルビーって呼んでいいかな? オレのことはセイって呼んでくれ」


「僕もアレクでいいよ」



 人懐っこい感じでニッと笑うセイ先輩と、ふわっと優しい笑みを浮かべるアレク先輩。



「…ッス」



 ボクは状況についていけずに、自分でもよく分からないうなづき方をして肯定こうていを示した。



「シェルビー、あなたは『狂化』っていう神に愛された能力を持っているそうなの…」



 セレナが伏し目がちにボクに状況を説明してくれる。



「えっ? でもボク、入学試験のときの鑑定でそんなこと言われなかったッスよ?」



 ボクが神に愛されているなら、鑑定のときに分かったはずッス。



「たぶん、その鑑定のときに学園は気付いたはずだ。同時に、真偽判定でまだ能力に目覚めていないことも知った」



 セイ先輩は、たぶんと言う割には決めつけたような言い方をした。

 でも、確かに…。



「言われてみれば、真偽判定の質問が妙に具体的だとは思ったッス」



 ボクは入学試験の時のことを思い出して話す。



「鑑定ではどんな能力かは分からなかったんだろう。いずれ自然に目覚めるまでは放置とされた。それがかなり危ない能力だとは知らずに」



 セイ先輩の言い方にハッとする。

 曖昧あいまいではあるけれど、覚えているッス。

 ()()殺そうと思ったこと。



「『狂化』って…、どんな能力なんスか?」



 ボクは思い切って聞いてみた。



「理性を失う代わりに肉体を大幅に強化する能力だね。ターゲットを全滅させるまでは落ち着くことがない。今回で言うと、イジメていた貴族を全滅させる前に、セレナやノバク殿下も殺してしまう可能性が高かった」



 セイ先輩の説明に血の気が引くのを感じる。

 ボクは危うく親友を殺してしまうところだったのか…。



「ごめんセレナ。ボク…」


「気にしなくていいですわ。何とかなったんですもの」



 ボクの言葉は途中で、今までよりギュッと右手を握ってきたセレナにさえぎられた。

 セレナは笑っている。

 ボクは胸が締め付けられるような感じがした。



「でも、ボク、怖いッス…。また今回みたいなことがあったらと思うと…」



 ボクはうつむいて弱音を吐く。

 同じようなことがあったら、今度は()()()助けてもらえるとは限らないから。

 今度こそセレナを傷つけてしまうかもしれない。



「大丈夫だよ。大抵たいていの神に愛された能力は、訓練することで調整できるから。そうだよね、セイ?」



 アレク先輩は何でもないことのように言う。


 話を振られたセイ先輩に、ボクもセレナも視線を送った。



「ああ。全部オレ達に任せとけ」



 セイ先輩はニヤッと笑いながら自分の胸を叩いたッス。


 ボクはクーン先輩が、「セイ・ワトスン達が戻ってくるまでの我慢だ!」って言っていたのを思い出して、泣きそうになった。


 でも、号泣ごうきゅうしてしまうことはなかったッス。


 その時、バンッと扉を開く大きな音がして、真っ赤なベリーショートの髪の女の先輩が部屋に入ってきたから。


 なぜか正規の扉ではないところに突然できた扉から入ってきたその先輩は、ちょっと涙目になりながら叫んだッス。



「アンタ達、どうして私だけ置いてったのよ!!」



 息を切らして叫んだ先輩に対して、セイ先輩は言った。



「いや、だって、お前だけテスト終わってなかっただろ…」



 その後のやりとりに、ボクとセレナは泣きながら笑った。






 次の日から、帰還した先輩達は2年生の1軍に昇格して配属された。

 あの先輩達が去年2軍だったなんて、聞いてはいたけれど信じられない気持ちッス。


 その日の放課後、先輩達はボク達の授業が終わると同時にクラスにやって来た。



「これから毎週水曜に『委員会』は『情報共有会』をすることになりました。貴族も平民も自由に参加できます」



 セイ先輩はそう宣言した。

 毎週水曜は、生徒会の『情報交換会』がある日ッス。



「それから、今後イジメをした人は『委員会』には出禁できんとします。仲が悪いのはしょうがないとしても、イジメはダメ。絶対。心を入れ替えてください」



 セイ先輩は続けてそう言った。

 これだけでイジメがなくなるんだろうか?

 セイ先輩には申し訳ないけれど、ボクは疑問に思ったッス。



「証拠もなしにそんな事言われても困りますー」



 ボク達をイジメている貴族の1人が、嫌味な言い方で先輩達に反論した。



「何言ってるのよ。証拠ならあるわ」


「コリンズさんとハレプさんは気分が悪いだろうから、目をつむっているといい」



 ネリー先輩とアレク先輩が言った。

 アレク先輩の配慮は嬉しかったけれど、ボクはそれよりも()()()()()証拠を出すのかが気になったッス。


 セイ先輩がいいのか? というようにこちらを見たので、ボクはうなずいた。


 すると、先輩達が立つ後ろにある黒板にいくつもの映像が流れ始めた。


 全て、ボク達がイジメられていた映像ッス…。

 どこから、どうやって、手に入れたんだろう?


『学園の支配者』という言葉が頭をよぎった。



「分かったか? 証拠はある。今後やったら出禁だ。本当は退学にしたいんだけど、権限がないからな。まぁ、委員会への出禁がどれくらい厳しい罰かは、そのうち分かるよ」



 セイ先輩の言葉に、貴族達は押し黙った。


 先輩達はその後、全学年全クラスに同じように話に行ったみたいッス。




 それから2週間。

 たった2週間で何もかもが変わり始めたッス。


 先輩達が帰還してからの委員会は、先輩達がいないときとは別物だったッス。


 月曜の講義と演習は、出るか出ないかで魔法使いの()が違ってしまうような内容だとすぐに分かったッス。


 水曜の情報共有会は、出るか出ないかで実家の盛衰せいすいすら左右してしまうのではと思うような内容だったッス。


 意味分かんないッス。


 2週目の時点ですでに生徒会の情報交換会に出る貴族は激減したみたいッス。


 あの人達、王族もいる生徒会に喧嘩売って大丈夫なんスかね?

 大丈夫な気がしてしまうところが恐ろしいッス。

 学園長や教頭とも仲いいみたいだし。



 ボクとセレナは個人的にも先輩達と仲良くしてもらっていて、色々教えてもらってるッス。

 今はまだ怖いけれど、いずれ神に愛された能力も使いこなしてみせるッス。





 ある日、セイ先輩が言ったッス。



「これはここだけの話なんだけどな…」


「はいッス!」



 ボクは元気に返事をした。

 もうボクはすっかりセイ先輩が大好きッス。



「オレは『学園の支配者』じゃないんだ」



 仲良くなったボクやセレナに『支配者』と思われるのは恥ずかしいらしいッス。


 どうでもいいッス。

 支配できてるッス。







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