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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第2章 学園の支配者

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第78話 最善手

 オレ達はあの後しばらくノーリー教授を手伝っていたが、今は手伝えることがないので、主に研究室の生徒の机が並べられた手前の部屋で休憩をしていた。


 それが、どうしてこんなことに。



「ねえ、ワトスン。先生が奥にこもってる間、私とコレで勝負しなさい」



 エレーナ先輩が机の上にボードゲームのようなものを持ってきて、ドヤ顔で言う。


 前世でいうところのチェスや将棋のようなゲームみたいだな。

 どうやら拒否権はないらしい。


 面白そうっちゃ面白そうなんだけど、相手が王族だからなぁ。

 面倒だ。



『アカシャ、ルールは知ってるよな?』



 考えるふりをしつつ、アカシャに聞く。

 まぁ、知らないってことはないだろうけど。



『もちろんです。王棋おうきというゲームですね。確実に勝つには先手をお持ちください。これは突き詰めれば先手が勝つゲームです』


『なるほど。どうしようかなー』



 オレはルールを知らないゲームだけど、アカシャに教えてもらおう。


 問題は、勝負にアカシャを使うか使わないかだ。

 使えば確実に勝てるけど、怪しまれるよなぁ。

 ヒ○ルの気持ちがよく分かるよ…。


 オレが悩んでいると、エレーナ先輩が笑みを浮かべて挑発してきた。



「あなた、この学園に入学してからまだ負けたことがないでしょう? 私が最初に負かしてあげるわ」



 そうか。オレもまだまだガキだからね。

 そんな言い方をされると、勝ちたくなっちゃうじゃないか。

 エレーナ先輩にはア○ラの気持ちを味わっていただこう。



「大賢者様には負けましたけどね。先手をいただければ、エレーナ先輩に勝ってご覧に入れましょう」



 オレは顔色を変えず、淡々と挑発し返す。



「ふふ。いいわよ。教えておいてあげる。私、王棋で負けたことないのよね」



 すでに勝ち誇った顔で笑いながら駒の準備を始めるエレーナ先輩。


 それはアカシャに聞いてないから知らなかったけどさ、そりゃそうだろうよ。


 アンタの神に愛された能力、『最善手さいぜんしゅ』はこのゲームと相性最高だろうからね。






「え…、嘘? まさか…」



 ずっと淀みなくし続けていたエレーナ先輩の手がピタリと止まった。


 終盤から寄せに入り、いつの間にか自分のおうが詰んでいることに気づいたのだろう。


 ずっと最善手を指してきたはずなのにどうしてと思っているんだろうね。

 しょうがないよ。

 いつの間にかというより、アカシャが先手を持った時点で詰んでるんだから。


 ガチャリと音がして、奥の部屋の扉が開く。



「お待たせ。簡単な構造の魔道具だけど、試作品第1号ができたよ。あとはこれをこじ開けてみて…、って、え? エレーナ君が、王棋で負けてる?」



 試作品の魔道具を作り終えて奥の部屋から出てきたノーリー教授も、盤面を見てエレーナ先輩が劣勢だと分かったらしい。


 エレーナ先輩の実力も知っていたようで、とても驚いているようだ。



「たまたま、このゲームの勝ち方を知っていたんですよ。先手を譲っていただけましたので」



 オレは悔しそうに手を進める先輩の王を詰ましながら、ネタばらしをした。



「な、何通りの変化があると思ってるのよ…」



 エレーナ先輩が信じられないといった様子でつぶやく。



『無限ではありません』



 先輩の言葉を聞いて、どれくらいなんだろうなと思っていると、空気を読んでくれたのか、アカシャが短く答えてくれた。


 言い方的に、億や兆って単位じゃないんだろうな。



「王手です」



 オレはあえて先輩の呟きはスルーして、笑顔でごまかすことにした。



「はぁー。負けよ。負け。絶対勝てると思ってたのに、計画が台無しだわ」



 エレーナ先輩はふてくされたように椅子の背もたれに身を預けながら投了をした。


 それにしても、聴き逃がせない言葉だな。

 知らないぞ。



『アカシャ、知ってるか?』


『いえ。彼女が頭の中で考えた計画でしょう。話したり書いたりといった記録はありません』



 アカシャもエレーナ先輩の計画については知らないらしい。



「計画ですか?」



 自然に聞いてみる。

 自分で言葉に出したんだ。教えてもらえるかもしれない。



「そ。あなたを王棋で叩きのめして、私の能力『最善手』の有用性を見せつけようと思ってたわけ」



 エレーナ先輩は口をとがらせながら、わざわざ自分の能力をバラしてまで答えてくれた。



「何のために…?」



 オレも同じことを聞こうと思ったが、ノーリー教授に先を越された。

 教授はメガネのブリッジに指をかけ、少しおそれるような声色で聞いた。


 オレは少しだけ教授の方に目をやった後、先輩に視線を戻した。



「私の『最善手』は、私がイメージした手の中から最善と思われるものを選び出してくれる。そうね、例えば、王位継承権を持つ者の中で誰に付くのが最善か、とか」



 先輩は教授の問いには直接答えず、おそらくはその前提となる自分の能力の説明をした。


 先輩はニヤニヤ顔で、オレに試すような視線を投げかけてくる。



『なるほど。そういうことでしたら最近、最善がノバクではなくなりましたね。誰もがほぼ同価値です。目まぐるしく変わっているでしょう』



 アカシャが先輩の例えの答えを教えてくれる。

『最善手』も情報系のスキルだからな。上位互換のアカシャでも同じことはできる。



「なるほど。それで?」



 オレは表情を変えずに、先をうながした。


 なんとなく分かった気がするけど、面倒なことになりそうだ。



「私は、あなたに付くことにするわ。セイ・ワトスン」



 エレーナ先輩はフフッと笑いながら、自信満々にそう宣言した。







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