第11話 レベル2
2020/10/16 改稿しました
真っ暗な中に、淡い緑色の光の玉が2つ見える。
『なるほどね。アカシャが言ってたことが解ったよ』
迷子騒動の翌日。
赤ちゃん用のベッドの上に座って日課の瞑想を始めてすぐ、オレは大きな変化に直面し、呟いた。
『そうでしょう。2つの玉の色の違いは見分けられますか?』
目を瞑っているので姿は見えないけれど、アカシャの念話が頭の中に響いてきた。
『ああ、分かる。確かに、事前に教えられて時間をかけて覚えてなかったら厳しかったかもしれないな』
目の前に浮かんでいる2つの光の玉は、その両方がオレの魔力である。
先日、レベルが上がったことで核となる魔力が分裂し、1つだった玉が2つになった。
いや、正確に言うと、大きな経験を経て核となる魔力が分裂することをこの世界ではレベルが上がるというらしい。
魔力の玉が2つある状態がレベル2、3つある状態がレベル3という具合だ。
つまり、オレは昨日の騒動を経てレベル2になったということになる。
この2つの玉は大きさも光量も同じに見えるが、色だけがほんの少し違う。
オレは2つのうち、少しだけ色が薄い方を見つめ集中する。
こっちがオレの核魔力だ。
だてに1年近く見つめ続けてきてはいない。
『ご主人様の魔力が微増したことを確認いたしました。今見つめているのが核魔力です』
『よし、このまま続ける』
正しく核魔力を見つめていることをアカシャが教えてくれ、オレは頷いた。
瞑想で増える魔力は核魔力だけらしい。
もしオレが核魔力でない方の光の玉を見ていたら、魔力は増えなかったということだ。
核魔力が増えると、分裂した魔力も同じ大きさまで増えるので全部が増えるように見えるらしいが、あくまで増えているのは核魔力のみらしい。
なので、瞑想をするときは魔力全体を見つめるより、核魔力のみを見つめた方が効率よく成長するらしい。
全体を見つめるとレベル2で効率が2分の1に、レベル3で効率が3分の1に落ちるらしい。
恐ろしいほどの差だ。
全てアカシャの受け売りなので、らしいとしか言えないけど、アカシャの言うことだから間違いはない。
『これさ、あらかじめ聞いてなければどうしようもなくないか?』
瞑想を続けながら、ふと思ったことをアカシャに聞いてみる。
試してみたところで、レベルの高い人ほど何日やっても全く魔力が増えないと感じるはずだ。
無数にある光の玉のうち、魔力が増えるのはたった1つしかないのだから。
知っていなければ、このほんの僅かな色の違いに気づかず、全部同じ光の玉と思うだろうし。
そもそも、一般的には魔力が増えたかどうかの確認方法がほとんどない。
光の玉の大きさは1日かそこらじゃ違いが分からないからな。
『過去に仮説を立てた者は何人かおります。多くの理由から未だ証明には至っておりませんが、いずれ証明されるときも来るでしょう』
それでも仮説を立てた人、いるのか。
修行僧かな?
生涯を瞑想に明け暮れたに違いない…。南無…。
『多くの理由ってのには、間違いなくレベルアップでの魔力量の増え方が入るだろ。知らなきゃ瞑想とか馬鹿馬鹿しく感じるぜ』
『そうですね。そして大きくレベルが上がった後では核魔力を見分けるのは困難を極めます。理由の最たるものですね』
オレが10ヶ月ちょっと毎日かかさず何時間も瞑想して増えた魔力が、元を1とすると4を越えるくらい。
昨日1日でそれが2倍になった。
予め知っていなければ、まずレベルを上げて、レベルを上げるのが厳しくなってから瞑想すればいいと思うだろう。
世の中には、知っているかいないかだけで天と地ほど差が出ることがあるものだ。
神様にアカシャをもらって、本当に良かった。
『先ほどから集中が途切れ気味です。魔力がほぼ増えておりませんよ』
『はい…』
ちょっと口うるさいけどな…。
この後、集中してみっちり4時間も瞑想した。