表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・リ・クリエイテッド ~縛られ勇者伝~  作者: オニオンスープナイト
8/24

サルとの旅立ち

 ゲーム内でマップに、突然だだっ広い広間が出てきたら要注意だ。さらに、セーブポイントが広間の入り口にあったら確信を持って言える。その先にはボスがいると。今やお決まりとなったこの設定は、あらゆるアクションゲームに取り入れられている。ボスモンスターが戦いやすい環境。プレイヤーが、モンスターの攻撃をかわすことができ、かつ肉弾戦に持ち込めるステージ。そのちょうどよい間隔を持ったステージが最高のボス戦を生む。ゲーム内では、あたり判定がデータ表示と実際映像で微妙に異なる。いわゆる「当たってないのに、当たったことにされてる」というやつだ。ある程度のプレイヤースキルがあっても、某狩猟アクションゲーム最新作のように、謎のあたり判定により根こそぎ体力を持っていかれるなんてことはある。なので、広いステージの中で戦い、かつ態勢を立て直すことができるスペースが必要となる。ちなみに、ゲームによってはボスをスルーして次のステージに行ける仕様を組み込んでいるものもある。



 と、頭の中でどうでもいい言葉を並べてはいても、目の前のモンスターが消えるわけでもない。力も呪文も持ち合わせていないオレに対抗する手段はない。生き延びる方法は逃げることだけ。左に見える扉に向かって少しづつ体をずらしていく。ズズッと壁とこすれる音を出すたびに、モンスターの耳がぴくぴく動く。呼吸すらままならない緊迫した状況。大きく荒い呼吸音だけが、広間の中をこだまする。


 扉まで、あと5mぐらいか。すごく近いはずなのに、遥かかなたのように感じる。扉にたどり着くのが先か、食われてしまうのが先か。冷汗が止まらない。指先がしびれてくる。頼む!あとで欲しいもの何でもあげるからあげるから、見逃してくれ!


 そんな思いが通じたのか、サル型モンスターは途端に背中を向け、オレの来た方向へと向かって言った。


 助かった。九死に一生を得るとはこんなことを言うのではないだろうか。今の隙に扉へ向かいしかない。おサルさん、いつかバナナでも買ってあげるよ。


 扉に向かって走り寄る。さっきまでの恐怖のせいか、まだ鳥肌が収まらない。取っ手に手を伸ばす。その手も震えており、何度か取っ手をつかみ損ねる。左手で手首を押さえつけ、震える手で扉を思いっきり引っ張る。


 開かない。


 扉が開かない。なぜだ。さては押戸なのか。そう思い、押してみても開かない。向こうから鍵でもかかっているのか?押したり引いたりとガチャガチャとやっても、ビクともしない。スライド式かもと思い、横に引いても、うんともすんとも言わない。蹴る。殴る。鉄パイプでたたく。体をぶつける。いろいろ試しても微動だにしない。焦る思いはつのるばかり。いつまたあのサルが戻って来るやもしれない。そう思うと、気が気ではなかった。


 オレを阻むかのように、閉ざされた扉は一向に開こうとしない...


 絶望した!このどうしようもない展開に絶望した!これ以上無意味に続けて何になる。どうせ、出れもしないんだろ!? ヘイヘイわかってましたよ。素直に行くなんて思ったオレがバカでしたよ。だいたいさ、こんな若造が世界救えると思ったか?レベル5の勇者が、しっかりと成長して最後には魔王倒せると思ったか?んなわけねーだろ‼ こんなボンクラに倒される魔王なら、もう死んでるっつーの!王国親衛隊的なグループの団長に倒されてるって。今までもやってきて身に染みて知ってるよ。はじめの町で王様の城に行ったらさ、レベル70って頭の上に書いてあるヤツ居たもん。クリアした頃でもそんなレベルいかねーよ!要するに、こんな世界俺じゃなくても救えるって!もっと、適任のヤツいるって!いっそ首吊って死んでやるよ!死ねばいいんだろ!教会で目が覚めるんだろ!そしたらルーラで意地でも元の世界に帰ってやるよ!神様的なヤツもそれを望んでるんだよ。不適合者ですんませんでした‼さぁ、ちゃんと謝ったんだから、誰か縄持ってこーい!


 ズゴーン!!


 右の方から爆破音のような、すさまじい音がする。音の方に顔を向けると、土煙の太い柱が出来上がっていた。


 ゴゴゴゴゴッ!!!!


 地面を揺らすほどの何かがあの煙の中にある。舞い上がった砂が次第に解け、黒い影が姿を現し始めた。



 丸い。球体。どんどん大きくなっている…… いや、近づいている!石のボールだ。それにサル。サルがボールを転がしている!とりあえず逃げるしかない。


 扉から離れ、ボールの通り道から遠ざかる。石のボールはそのまま回り続け、扉に激突した。扉の上の壁面が崩れる。ボールは壁にめり込んで動かない。サルは止まったボールを眺めた後、表情をうかがうかのようにこちらを見た。オレも見返す。すると、サルが首を傾げた。思わず、オレも首をかしげてしまう。


 微妙な空気が流れる。アイツはオレを食う気はないのか?どうも悪い奴には見えない。オレに攻撃するそぶりは見せないし、殺すならもう死んでいるだろう。何より、敵意や動物本能による警戒意識を感じさせない。なんだか、アイツの目がキラキラしてみえる。


 すると今度は、食い込んだボールを引っ張り出し、手元で転がし始めた。体は大きいが、そのしぐさは可愛らしい。右手で転がし、左手で転がし。最後には頭の上にのせて背中を滑らせたりと芸達者で愛らしい。もう、あのおサルさんが化け物になんて見えない。


 あの子がボールを投げたのは遊んでほしかったからではないだろうか?はじめは食べられると勘違いしたが、あれもただ興味があって近づいてきただけなのでは。あぁ、近づいて触ってみたい。あの毛皮、なんだか気持ちよさそうだ。


 心が思うのと同時に、体は動いていた。さっきまで脅威だった存在に、まっすぐ歩み寄っている。サルもこちらに気付くが、何もしてこない。ボールに夢中なようだ。サルのすぐ近くまで歩み寄ると、ようやく手を止め、犬でいう「お座り」の姿勢をしてしっぽを振ってきた。


 ヤベェ! 可愛い! ずっとここに一人でいて寂しかったのだろう。遊んであげたいが、さすがに軽く200キロを超えそうなボールを投げてあげることはできない。でも、こんなおとなしい子なら外の世界に散歩にでも連れて行ってあげたいなぁ。


 気持ちが伝わったのか、サルが顔を下げてぺろぺろと顔をなめてきた。少々息が臭いし、べたべたするが、久々の暖かい感触にオレは感動していた。わけのわからないうちにオレを閉じ込める女。人を助けたいと言うよりはからかうだけの声。そんな疲れ切ったオレにこいつは安らぎを与えてくれた。もう、この子と旅に出てしまおうか。強そうだし、いい旅のパートナーになるだろう。一人ぐらいペットと魔王を倒す勇者がいてもいいじゃないか。そうだ、この子にあの扉を開けてもらおう。力もありそうだから一発で壊せるに違いない。


 オレは扉の方に走り、大きく手を振った。サルはそれを見てこちらに駆け寄り、扉の前で立ち止まった。扉を指さし、殴るポーズをしてみる。思いのほか簡単に意図が伝わったようで、サルは右手を大きく振り上げた。


 よし、これで出られる。オレの初めてのパートナーとの旅が今始まるわけだ。さぁ、力強く扉を壊してくれ!


 振り上げたこぶしが流星のように振り下ろされたその時...


「勇者さまー!あぶなーい!!!」


 突然頭上から声が響き、愛しのサルの頭上に落ちた。その勢いは計り知れず、すさまじい衝撃波にオレの体は空中をくるくると舞っていた。そのまま地面に勢いよくたたきつけられ、体を起こしたその時には目の前に砂の霧が立ち込めていた。


 霧が薄くなり、うっすらと見える人影... それと...横たわるサル。


「危なかったですねぇ、勇者様。さしずめ私は命の恩人といったところでしょうか。」


 霧が晴れ、全貌が明らかとなる。頭を殴られて伸びているサルと、その顔の上に座る男。


 ってか、オレのモンちゃんがァ...

 第八話、お読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか。

 今期のアニメに「ポプテピピック」というものがあり、私は毎週楽しみに見ています。声優を変えたり、ハチャメチャな内容だったりと、のんびり見ていて面白いのですが、中でも「ボブネミミッミ」というコーナーが好きです。と言うよりも、AC部という制作ユニットが作っていらっしゃるのですが、その方々が好きなんです。「突然何しゃべっとんねん、コイツ!」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。まぁ、見てください。このクソアニメだからこそできるコラボレーションと言いますか、圧倒的な独創性があるんです。それを見ながらいつも「こんな衝撃的でユーモアのある作品を作れたらなぁ」と感じています。

 この作品がどこまで成長できるかわかりませんが、全力を尽くしてクソ小説を作り上げます(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ