鉄パイプでの旅立ち
本話をお読みいただく前に一つお詫び申し上げます。私、作者が調子に乗ってしまいましたせいで、携帯でお読みになる方々に一部読みにくい場所ができてしまいました。申し訳ございません。ここで訂正部分を掲載してもいいのですが、本話の内容を先に知ってしまうことになりかねませんので、後書きの方で見やすいバージョンを書かせていただきます。
パソコンでご利用下さっている皆様は、後書きの方がおかしくなっているのでご注意を。
では、第5話、「鉄パイプでの旅立ち」 至らぬ文章ではございますが、お楽しみください。
て、て、てッ...鉄パイプの勇者!? なんじゃそりゃ!? そんなヤツ聞いたことねーよ‼ 確かに最近はいろんな武器持ってるよ、勇者って一言いっても。勇者なのに杖持ってたり、斧持ってたり。別に、それがダメとは言わないけど、勇者と言えば剣と盾じゃん。なんか、その組み合わせがしっくりくるしさぁ。でも、鉄パイプってぇ...もうその次元の話じゃないじゃん‼ 雑魚キャラのイメージじゃん。敵の取り巻きのチンピラじゃん。
<なんだ、そんなにじろじろと見て。もしかして気に入ったのか?うーん... 気に入らない展開のほうがこちらとしては面白かったのだが... まぁ、いい。これから魔王を共に倒す相棒だ。大事にしてやれ。>
「大事にだと...!? 大事に、デキルカーーーッ!!!!!!!! てめぇは勇者様を何だと思ってんだよ‼ こちとらなぁ、ただ働きなんだよ‼ ただで他人様の世界の世界救ってやろうとしてんだよ‼ それをなぁ、横からちょっかい出しやがってよぉ!前から気に入らねーんだよ!ツラ出さんかい、ワレェ」
<オー、怖い怖い。落ち着いてくださいよぉ、勇者さまぁ!いいじゃないですか。新鮮ですよ。聞いたことないですよ、そんな勇者。絶対人気になれますって!>
「ダマレ!そんなわけないだろ!どれだけオレをバカにすれば気がすむんだ!」
<あれ?その鉄パイプの筒の中に何か入ってますよぉ。アレは何かなぁ?>
声の煽るかのような話し方にいら立つが、気を落ち着け、言われるがままに筒の中を覗き込む。見ると、奥に丸まった紙が入っていた。パイプを振って中の紙を取り出す。少しさびがついて茶色くなっている。そこにはまた見たことある文字でこう書いてあった。
『取扱説明書
この度は、本鉄パイプを御購入いただき、誠にありがとうございます。創業40年。橘製鉄所が作り上げたこの鉄パイプは非常に優れた強度を有しており、......«中略»......お客様のお役に立てるよう、心より願っております。
制作者 — 橘 登
制作日 ― **年**月OO日』
ここまでくると、もう何が何やら...素直に声に踊らされるのも馬鹿々々しくなってきた。もう、めんどくさい。
「だからどうしたってんだ!?もう、驚かねーし、怒る気力もねーんだよ。どうせわかってるんだろ、この洞窟からの出方。さっさと、教えろ。」
<あ、ごめんごめん。そっちの紙じゃないんだよ。もう一枚ちっさな紙が入ってるだろ?>
もう一度、強く鉄パイプを振ってみる。すると、ひらひらと手のひらサイズの紙が出てきた。
タチバナ工具店
ネンノガル支店
**領収書**
装備用鉄パイプ(駆け出し勇者用ー攻撃力 5) 7600G
消費税(10%)
――――――――――――――――――――――――――――――
合計 8360G
よく見たことがある書き方。レシートだ。ご丁寧なことに、見たくもないことまではっきりと書いてある。オレはこの身近い間に成長したのかもしれない。この件については触れないで起こう。
<いろいろ迷ったんだよ。歴戦の勇者って設定だけどさ、実際はまだレベル5だからさ。強すぎる武器使って、自分磨き忘れられると困るなぁって思ってコレにしたんだよ。>
「いらぬお気遣いをどうも。頼むから、もう放っておいてくれ。」
疲れた。転送後からいろんな苦労があったが、なんだかんだでコイツが一番だ。なんでこんな奴の声が聞こえるんだ。というか、終始疑問に思っているが、誰なんだあいつは?聞いたことある声なのは確かだが、どこで聞いたかが思い出せない。ただ、もう今後一切思い出したくないぐらい鬱陶しい奴だと言うことは、身にしみてわかる。もう行こう。こんなところに、もはや二人っきりみたいな状態でいたくはない。
気が抜けて力が入らない足をたたき、道の続く方へ一歩踏み出す。
<おや。何をやっているんだい?君はまだ先へは進めないよ。なにか忘れてはいないかい?>
これ以上オレに何をしろというのだ。お前の戯言に付き合っている暇は、何度も言うが無いんだ。無視だ、無視!
<無視するのかい?うーん。君はまだ私のことを甘く見ているようだねぇ。では、私がどれほどの力を持っているのか、とくとご覧に入れようではないか。>
二、三歩歩くと突然、『ゴンッ』という鈍い音と共に、壁のようなものにぶつかった。壁ではない。壁のようなものなのだ。目の前に見えない壁があるとでもいうのか。しかし、そう考えるほかない。その不確かな存在を確かめるため、体を壁の方からそらしたまま手を伸ばす。手が、平たく広がる板に触れる。そのまま手をずらし続けるが、手元の感覚は消えない。平たい物体は洞窟の壁面とつながっている。これは壁だ。しかも透明。愛刀となってしまった鉄パイプを思い切りたたきつけるが、『カーン』と鈍い金属音を立てるだけである。
<どうだい?すごいだろ。君が相手にしているやつはここまですごいんだぞ‼>
声が得意げに話し出す。聞いているこっちはイライラで頭が爆発しそうだ。
「で、何すればいいんだよ。」
<やっと話を聞いてくれる気になったかい?こんなところに閉じ込められるのは嫌だろうしねぇ。いい心がけだよ。>
「だから、早く言えよ‼」
<言うまでもないさ。後ろにすっ転がってるアレ。食え!>
「嘘だろ!? その話まだ引きずってたのかよ。」
<引きずるも何も、君は食べなきゃいけないんだ。食べなきゃ話は進まないぞォ。君はこのまま、この世界で、この穴倉で、無口なホームレスとして生活したいのかい?>
そう言われるとキツイ。あんなゲル生物は死んでも食べたくない。ただ、食べなければおそらくここから出られない。イヤだ、イヤだ、イヤだ。食べたくない、食べたくない、でも食べなきゃ。でも食べたくない。ア—、どうすれば...
<そんなに迷うことかい?それじゃ、仕方ない。君に大サービスだ。もし、そのゲル生物を食べれば、この洞窟から出してやろう。ここまでのサービスはないだろう。で、どうする?>
確かにいい条件だ。ここは人工の洞窟で、道なりに進めば出られたとしても、どれほどの時間がかかるかはわからない。ましてや、この状況でどんな強敵が襲ってくるのかもわからない。抜け道ルートがあるなら使わない手はない。だが、そんなことのためにスライムを食べると言うのか?
<おそいなぁ。カウントダウンするよ!? はい、10、9、8、7、6...>
どうしよう、どうしよう、どうしよう...
<5、4、3、2、いー...>
「わかった、やる。やります。」
思わず「やる」と言ってしまった。もう引き返せない。こいつの力はさっきの通りだ。ウザいヤツだが、強い。とても今のオレが反抗して勝てるレベルじゃない。おとなしく「やります」と言うほうが利口なのだろう。いや、利口であってくれ。
<いいねぇ。んじゃ、食べてもらおうか。>
スライムに近づき、ドロドロの体の一部を手にすくい取る。こんな液体、本当に人が食べるものなのか。そもそも、コイツを食う生物なんてこの世にいるのか?考えれば考えるほど、手が口から遠ざかっていく。もう、やけくそだ! まずければ吐いてやる。
オレは、一気にスライムを口の中に流し込んだ。味は...しない。少し固めのゼリーのようなのど越し。ウマいかマズいかで行くと、マズい。だが、決して食べられなくはない。
<そんなにビビらなくてもいいのに。そいつは食用スライムだよ。主に乾燥させてとろみ付けの粉として使うのさ。そのまま食べる人はいないけどね。>
だまされた。食べられるものと聞いて安心したと同時に、より一層声の主に対する怒りがこみあげてくる。
「やることはやっただろ‼ 早くここから出せ‼」
<ちょっと求めてたのとは違うけど、まぁ約束は守ってくれたし。いいよ。君を外まで連れて行ってあげよう。>
ようやくだ。やっと、まともな旅ができそうだ。すでに、まともな人間ではないが...だが、それでも予想よりはるかに早くこの洞窟から出られる。さぁ、待ってろ魔王よ‼ もはや、この世界のためにではない。オレのために成敗してくれる‼
いかがでしたでしょうか?携帯でお読みになってくださった皆様、本当に申し訳ございません。今後はこのような試みは控えさせていただきます。
では、その例のやつを…
タチバナ工具店
ネンノガル支店
*領収書*
装備用鉄パイプ…… 7600G
消費税(10%)
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合計 8360G
書き直しながら、「もういいよね,書き直さなくても」と思ってました。後書きってプレビューできないから分かりにくいんだよォ(言い訳)
何度もお詫びしますが、こんな作者ですいません