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ワールド・リ・クリエイテッド ~縛られ勇者伝~  作者: オニオンスープナイト
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故郷からの旅立ち

負けイベント ー ゲームの演出として使われる、初めから勝つことができないイベント。相手のレベルが法外に高いや、敵の体力が無限などの、明らかに倒すことができない要素を持って、敵の強さや、自身の無力さなどを主人公たちに痛感させる。イナ○マイレブンの初エイリア戦や、ド○クエ5の幼少期のゲマ戦などがその例。数多くのゲームプレイヤーがその展開を打ち砕こうとしてきたが、得た戦果は少なく、虚しく散っていった。



<エマージェンシー!エマージェンシー!後方より、高熱源体接近!推定レベル65!魔王のそれを大いに凌駕しています!気を付けてください!>


ー えー⁉︎ なになに。後ろ⁉︎ レベル65⁉︎ 魔王より強いって、そんな奴がなんでこんなところに⁉︎ それが、なんで今このタイミングで…


「グァェェェェゼェェェ‼︎」


  けたたましい鳴き声が聞こえてくる。この世のものとは思えない声。理性を失った、ケダモノのような声。迫力というよりも覇気を纏った声が、背後から迫ってくる。


  考えている時間はない。まずは、敵をこの目で捉えねば。オレはそう思い、後ろを振り返った。だが、目にはなにも映らない。では、今聞こえた声はなんだ。ただの空耳か?しかし、あの咆哮ははっきりとこの耳を通ってきた。じゃあ、あのアラートは?いや、だからあのアラートの主、誰だよ!


  途端に目の前が真っ暗になる。

ー アレ? どうなってんだ⁉︎

  甘い香りがどこからか漂い始める。すぐに理解した、これは吸ってはいけないと。だが、時すでに遅し。オレは、深い眠りに落ちて行った。



  灰色の壁。こちらの世界のものとは思えないほど、ひんやりとした壁。体が、立ち上がる。歩き始める。見たことがある世界。デジャビュなのだろうか。体はしっかりと歩き続ける。俺は眠っているはずだ。体がひとりでに動いているのか、止めようとしても体は言うことを聞かない。急に右に曲がる。そして、目の前にある部屋に入る。その部屋は…明るい。何色までかはわからないが、眩しいほどに輝いている。壁には…あれは本か。何かの背表紙がいっぱいに広がっている。体は、また歩き始める。


  部屋を抜け、長い廊下に入る。まだ足は止まらない。また部屋が見えてきた。部屋に入る。暗い。唯一のあかりが一つのものを照らす。モニター。大きなモニターが壁に張り付いている。吸い込まれそうなほど黒い。唐突に体が下を向く。床に置いてある硬いものを拾い上げる。箱の中には、歩い円盤…DVDディスクのようだ。手が、ディスクケースの背をこちらに向ける。『XX/##/OO』数字のような、記号のようなものが書かれている。区切り方からして、日付のようだ。手が、ケースを元の場所に戻す。そのまま、体は前を向き直し、足を進め、部屋を出る。


  また、歩く。長い廊下を。だんだんと意識が遠くなる。いま、体が進んでいる場所がどこなのか、視界がぼやけてわからない。歩く。歩く。ただ真っ直ぐに。


  気を失いかけていたその時、体が止まった。視界が少し、鮮明になる。扉だ。門とも言えそうなほど重厚な扉。視界が横に動く。表札なのか…板が、壁についている。『OOツO』3文字目だけがかろうじて見える。だが、そこから連想する言葉も気力もない。ただ、目の前を映像のように流れて行く視界を理解するだけで精一杯だ。


  目が、顔がまた前を向く。右下から手が出てくる。扉についた金属を掴む。扉が重いのか、手に力が入るのがわかる。そして、ギシギシとぎこちない音とともに、おもむろに扉が開く。


  机と椅子。そして、椅子に座ったペンを持っている男。見えたものはそれだけ。男の顔も見えない。ペンの形も、服の色でさえもわからない。


「もう来てしまったのかい?」


  透き通った男の声が聞こえる。あの男の声なのだろうか。聞いたことがあるようでないような声。耳からではなく、直接頭の中に聞こえる。男はこの体に面識があるようだ。


「僕の予想では、もっと後に来るはずだったんだけどね。確かに、僕の世界の扉は、来るものすべてを拒まない。だからと言って、やすやすと来られても困るんだけどねぇ…」


  男の声は少し残念そうに話している。ここはどこなんだ。夢の中か。それともまた違う世界なのか。お前は誰だ。俺が作った夢の中の虚像か。それとも、こちらの世界の神とかそういう類のものか。どうやったらここから出られるんだ。さまざまな疑問が頭をめぐる。口に出したいが、声にはならない。そんな思いとは裏腹に口が何かを喋り始める。聞こえない。体が言うことが一つも聞こえない。しかし、その言葉を受けて、男が話し始めた。


「君の要望には答えてあげたい。でも、こちらにもやるべき責務というものがある。君の言うことが私の利害と一致しているのなら、話は飲もう。僕が今聞く限りでは、今のところ、君の身勝手にしか思えないのだが。」


  なんのことだ。誰のことを話している。話が理解できない。そんなオレの意思を無視し、体はまた話し始める。相も変わらず、言葉は聞こえない。目の前の男が体の声を受けて、心なしか笑っているように見える。そして、男はまた話し始めた。


「なかなか面白いことを言うね。そうだよ。僕は全部見てた。見ながら何もしなかったと言われるのは聞き捨てならないけどね。楽しませてもらったよ。いや、楽しくさせてもらったと言うほうが正解かな?とにかく、僕には作り上げたものすべてに対する責任がある。だから、今回は君の意見を尊重しよう。わざわざここまで来てくれたんだしね。手を貸してあげよう。なぁに、心配ないさ。最近、ちょうど暇だったんだ。ただ、僕...はぜっ...いし...ん...も、はっ...たぜん...ぜん...うのそ...んで...ない...ね。」


  急激な眠気が突如オレを襲う。そのせいか、言葉も聞こえづらくなってきた。意識が遠のく。視界もどんどん暗くなる。まて、今あの男はなんて言ったんだ。もう一度、意識を凝らす。飛びそうな気を抑え、男の言葉に集中する。


「やれることにも限度があるってわけさ。そこのところは、理解しておいてもらいたいね。おっ。どうやら、そちらさんの限界が来たみたいだ。無理...しな...くていい...よ。さっき...言った...ど、君...来る...の...は...だ早...元...ま...っ...て。す...行っ...げよ.........」


  それは、もう限界だった。意識が、これ以上目の前の映像を見せたくないかのように、オレを真っ暗な深い谷底に落としていく。前も見えない。横も、後ろも。ただ、なされるがままに落ちていった。






ピタッ...


  額に冷たい何かが当たる。


ピタッ...

  

  また。


ピタッ...


  うっとおしい。だが、体全体にジワジワと感覚が戻ってくる。まぶたが重い。体も重い。手先にゆっくりと感覚が戻ってくる。


ピタッ...


  どうやら、顔にあたっているのは水滴のようだ。まぶたがだんだんと持ち上がる。二重にぼやける視界。今度は黒い天井。そして、ゴツゴツした床。石、いや岩か。まだ、体は言うことを聞かない。


ピタッ...


  手先の感覚が、徐々に体全体へ広がっていく。急に頭が痛む。背中も。痛む体を大きく揺さぶってうつ伏せになる。前には大きくそびえたつ壁。壁に向かってはって進む。すぐそこにあるはずなのに遠い。小石が顔にあたって痛い。やっとの思いで、壁にたどり着く。震える手。揺れ動く手を地面につけ、大きく力を入れる。うまく力が入らない。顔にも力を入れ。地面に押し当てる。下半身をもちあげ、膝を体の下に潜り込ませる。揺らめく上半身をやっとの思いで持ち上げ、壁にもたれかかる。頭はまだボーっとするが、そんなことはどうでもいい。息を大きく吸い、吐く。視界がやっと安定してきた。ゆっくりと顔を動かす。周りにあるのは、さっきと変わらなく黒くゴツゴツした壁。



  結局、ここはどこなんだ?オレは何に襲われてここにいる?そして、あの男は誰だったんだ?頭をめぐる疑問は止まらない。ただ、わかるのは自分の身の危険のみ。勇者としての経験が、体をこわばらせる。戦える武器も...どうやらない。オレは、ここからどうすればいい...


                                     to be continued







毎度、本作をお読みいただきありがとうございます。自分、結構ネガティブなタイプでして、他の作者様方の作品を拝見しながら、「自分の作品って、そんなに面白いのかな」っと悲観的に考えてしまいます。例えるなら、スーパーの半額シール張られても売れ残るご飯の様...

 私事ついでにもう一つ。読者の皆様ならもうお気づきかもしれませんが、わたくしは重度のゲーム好きでして、ゲームの話を今作にも入れさせていただきました。本題ですが、ズバリ、「パパスが死んでしまうのが許せない」のです。様々な点から良作とされるドラクエⅤですが、幼少期の勇者のゲマ戦のパパスの死が私の中では一番です。詳しくはwiki等と言わず、プレイしてみてください。彼の死あってこその主人公と言われれば納得もできますが、それでも彼の死のシーンではいまだに涙を流さずにはいられません。

 「お前は、後書き書きてーのか?それとも小説書きてーのか?」という声が私の中で響いてきたので、今回はこのあたりで...

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