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ワールド・リ・クリエイテッド ~縛られ勇者伝~  作者: オニオンスープナイト
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母からの旅立ち

皆さんにとっては、母親とはどんな存在だろうか。思春期の男の子なら、[1にうるさい,2にうるさい,3、4飛ばせど、5にはウザい]といったことを考えるのが一般だろう。しかし、このように[ウザいと思わせる行為にも全て愛が込められている]と心の底から気づけるようになるのは、大人になってからの話だ。現に、今目の前にいる女性に対して思う感情は一つ…ウザい!果てしなくウザい!誰か、この状況から俺を解放してくれ!自由にしてくれ!そう祈るも言葉は出ない。私に残された言葉は<はい>と<いいえ>だけなのだから。


女はまだ喋っている。当然、言葉は右から左だ。ただ、頭の中を「どうする、どうする」と言葉が回り続ける。うぇ、吐きそうだ… オレの言葉は基本的に質問に対してのみ有効だ。しかも、what,who,why,where,

howを訪ねる質問にも使えない。あ、そうだ!筆談はどうだろうか!筆談なら多少の違和感はあるものの、会話を円滑にできる。オレ、天才じゃね⁉︎

オレはそう思い、立ち上がった。

「どこ行くの!」

後ろから、女の声がする。まってろ!勇者はまだ諦めてないぞ、母親よ!


 机の上に紙をみつけ、ペンを手に取り、なんと書き出せば良いかを考える。

—長文だと怪しいな。会話を思うようにできないことがバレると、なおさら旅立たせてくれないよな… 簡潔に、言いたいことをわかりやすくか。何を言えばいい… それか、秘めたる想いを手紙にしました的なノリで行くか… ダメだ。感情移入ができない。だって、今までこんなに旅立ちに真剣になったことねーもん!えぇい!男はシンプルに一言。「行ってきます」で強行突破だ!

 ペンにインクをつける。言葉では伝えられないから、せめて力ある文字で伝えよう。ペンを紙の上に置く。自然と手に力が入った。そして、ゆっくりと一文字目を......書けない!なぜだ!どうして書けない!オレは必死に考えた。だが、原因は考えるまでもない。そうだ。オレはこの世界の文字を知らないのだ。よく考えてみろ。ハ〇ター×ハ〇ターとか、ポ〇モンとか、会話の中では共通言語を話してるようだけど、実際に文字にしてみると全然違うじゃないか。

  さぁ、もうここまで来たらどうしたらいいのかますますわからなくなってきた。文字を書けないから、筆談のラインはアウト。この不自然な状況をどうにかするために、急遽トイレに駆け込んだが、籠城作戦も時間の問題だ。トイレに窓はない。ここからの強行突破も不可能ということか... いっそ、玄関から正面突破...それも不可能だろう。ろくにアイテムや金を持っていない状態で冒険へ行くのは危険だ。だいいち、母親からもらえる重要アイテム第一位のマップがないとなると、どっちへ進めばいいのかすらわからない。現在地確認も行えない。そのマップをもらえるチャンスを失うのはとても大きい。面白いことに、意外とマップは売ってないのだ。だからこそ、手に入れておきたい。

「ギン!早く戻ってきなさい!」

―もう呼ばれたか。仕方ない。戻ろう。とりあえずは一人になる環境を作り出さねば。

  そのあとも長い話は続いた。どうやら、今から女は村長のところへと向かうらしい。そして、村長を家に連れてきて、一緒に謝ろうという寸法のようだ。しめた!村長がここからどのくらいの距離に住んでいるのかはわからないが、おそらく10分、20分程度の時間はできただろう。やるならその間しかない。マップを探し出し、この家から出る。

  そうこう考えているうちに、女は身支度を整え、玄関に立っていた。

「それじゃぁ、行ってくるから。5分程度で戻ってくるわ。」

—なぁにぃ!!早すぎるだろ!てか、村長どんだけ近くに住んでんだよ!普通、勇者の家からなかなか距離あるところに住んでるじゃん!それが、もはやお隣さんレベルだよ!どうする。想定外に短い時間。とりあえず、一回をしらみつぶしに探そう。いや、最優先は出口の確保だ。最終、マップは二の次だ。

  オレは、玄関へ向かった。この家の扉に、どうやらカギはついてないらしい。これなら簡単に出られそうだ。次に周りを見渡す。マップが入っている場所はわからないが、アイテムがある場所は鉄則として、引き出し、クローゼット、つぼにゴミ箱だ。あと、たまに宝箱が家にあったりするが、この家にはないだろう。とりあえず、近くの引き出しからだ。上から順に開けてみる。すると、紙のような手触りがあった。なんだこれはと取り出すと、封筒が出てきた。封筒の中にはお金が入っていた。いわゆる、へそくりというやつだろう。惜しい!なかなかにいい線をついているが、今欲しいものでは無い!とりあえずはいただくがな。

  <ギンは『母のへそくり』を手に入れた。>

—うるさ!もしかして、これいちいち鳴るのか?下手したら、コレでばれるぞ!

  <大丈夫だ。他の人間には聞こえないはずだ。>

—いや、何答えてんだよ!てか、お前誰だよ!あぁ・・・もう、今はそんなことどうでもいい。マップだマップ。

  ほかの引き出しや、クローゼットも雑に調べていったが、マップのようなものは入っていない。途中、様々な紙製のものを見つけたが、どれもチラシだったり、回覧板だったりと見当外れだ。ちなみに、自室のベッド下から、健全な青少年なら持っていてもおかしくなさそうな類の本を見つけたが、とりあえずは見なかったことにしておいた。ギン君、そういうのはほどほどにな。人生の先輩として、そんなべたな隠し方はお勧めできないぞ。

  そうこうしているうちに。もう五分を過ぎていた。外からはあの女の声が聞こえてくる。どんどん大きくなる。思わず、玄関近くの窓を凝視してしまう。窓から目が離せない。ふと我に返り、そんな時間はないと視線を下した先に、探し物はあった。玄関近くのつぼ。その中にマップはあった。走り寄り、つぼに手を入れる。しかし、抜けない。というより、下で何かに固定されている。引っ張り上げると敗れてしまうかもしれない。じゃあ、どうやって取り出せばいいんだ!?すると、どこぞの緑のエルフの剣士が頭の中に語り掛けてくる。

 <つぼは何のためにあるんだい?割るためさ!>

  その言葉が聞こえたころには、オレはつぼを地面にたたきつけていた。ガシャン!という大きな音とともに中から、マップが出てきた。よし、コレで旅立てる。もう一度窓の外を見ると、そこにはもう女の姿があった。ヤバい!もう、正面からは出られない。

  一目散に階段を上がり、窓を探す。できれば、家の裏面にあるほうがいい。オレは、裏側へと回った。が、そこに窓はない。この家造ったやる誰だよ!匠に作り直してもらえ!仕方ないので、正面側へと回る。が、そこにも窓はない。というより、この二階には窓が一つもない!

—ただの欠陥住宅じゃねーか!誰だよこの家造ったやつ。責任者出てこい!

  とか何とか言っていても仕方がない。そういえば、今この部屋には窓がないのに光が差し込んできている。ふと、光の先を目で追うと、そこには大きな天窓があった。

—もう、四の五の言ってる暇はない。。あそこから出よう。

  天窓までは、およそ4メートル。周りにある机やいすを積み上げ、天窓に手がとどく高さまで来た。しかし、その物音で下にいた女が気づいたようだ。階段をがってくる音がする。

「ギン!どうしたの。何してるの?」

  心なしか、その女の声は怒っているように聞こえる。

—すまない、ギンのお母様。こいつの体は貸してもらう。だが、心配するな。絶対、無事にあんたの所に戻してやる。世界を救った勇者としてな!


  天窓を開ける。まぶしい光とともに、暖かい風が吹き込んでくる。絶好の旅立ち日和というやつだ。窓を抜け、屋根の上に降り立ち、壁を伝って地面に降り立つ。

  さぁ、行こう!これから、どんな敵が待ち受けていようとも、この世界のため、そして一刻も早くこの世界からおさらばするため、オレは突き進む。魔王よ!首洗って待っていろ!


<エマージェンシー!エマージェンシー!後方より、高熱源体接近!推定レベル65!魔王のそれを大いに凌駕しています!気を付けてください!>




えー!?

                                      to be continued










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