魔王と勇者
魔王?今、魔王って言ったのか?魔王と言えば、ラスボスじゃないか。悪の化身じゃないか!そんなやつがどうしてこんなところに...なんで、お前はコイツと知り合いなんだ、アーサー!!
「アーサー様。その紹介はやめてくださいと何度も申し上げたではありませんか。失礼しました。改めて、自己紹介をさせていただきます。」
そう言うと、大柄の男はこちらを向いて、丁寧に一礼した。
「初めまして。第一世界、A地区担当。第五魔王の『ゼンズ』と申します。以後、よろしくお願いします。」
「あ...どうも...」
思わず返事をしてしまった。
魔王がお辞儀?魔王と言えば、モンスターの力を使って悪事を働き、世界征服をしようとする存在ではないのか?その悪の化身がお辞儀だと?何が起きているのかさっぱりわからない。
「そう、固くならないでください。ほらぁ、アーサー様。その説明方だと、いつもこんな風に構えられてしまうのですから。まったく、もぅ~。しかも、相手は勇者様なんですよ!我々を敵と認識している方々なのですから、より敵意を向けられることは目に見えていたじゃありませんか!」
「うぷぷぷ...すまん、すまん。勇者様ってなかなか思った通りの反応をしてくれるので、ついつい。」
「その人をからかう癖は治ってないようですね。もっと、大人になってくださいよ!」
「はいはい。十分、身に染みております。」
二人が仲良く話す声が、より一層オレを惑わせる。
本当に悪い奴ではないのか?では、オレたちが勇者として学んできたことは何なのか。勇者とは?魔王とは?頭が今の状況に追い付かない。
「ゼンズ...さん...は、本当に...魔王なのですか?」
自分は頭がおかしくなったのか?何なんだ、この質問は?今まで、こんなことを魔王に聞いた勇者はいないだろう。でも、聞かなければ分からない。聞いても分からないだろうが、せめて自分の頭に現状を無理やりにでも刷り込ませるために、答えを聞きたい。
「アハハ。そうですよ。紛れもなく、魔王、その人です。」
その一言で、頭は認識した。目の前にいる大男が魔王だと。その威圧感、気配。どれも魔王だと言われれば、納得できるものだ。
「ゼンズ!せっかくの機会ですので、魔王とは何者なのかを勇者様にお話しいただけませんか?これは、一応、重要機密ですので、他言無用でお願いしますよ、勇者様。これを話してしまうと、魔王とあなた方の関係が崩れてしまい、果ては世界の危機ともなりかねませんので。」
「承知しました。しかし、アーサー様の方が詳しくご存じだとは思います。おそらく、お話しいただけないとは思いますが、詳しくはアーサー様にお聞きください。この世界の成り立ちにも深くかかわる話です。私は、それほど頭が良いほうではないので、深くは存じ上げておりません。なので、知っている限りのことをお話しします。」
落ち着いた様子で話す、魔王『ゼンズ』。その表情は、魔王とは思えない、勤勉さを思わせる顔つきだった。
「先ほど言いました通り、この世界は第一世界と呼ばれております。第一と言うからには、第二世界も存在します。世界は第一世界から、第1072世界まで存在し、その数は時を経て増えております。ここ第一世界は、一番初めに作られた世界で...」
「話が脱線していますよ、ゼンズ。そのことは話さなくてもよいはずです。」
「申し訳ありません、アーサー様。どうも、どこから話せばよいのか分からないもので。」
「私たち『サクシャ』と『魔王』の関係から話してはどうでしょう。余計なことは言うものではありませんよ。」
ゼンズが、蛇に睨まれたかのように固くなった。それほどまでに、知られてほしくないのだろうか。
「そう...ですね。では、そこからお話ししましょう...我々、魔王は『サクシャ』直属の部下です。正確には、『サクシャ』に特別に作られた存在。特異な力を持ち、寿命はなく、死にもしない。そのように作られた存在です。『マリオネット』と『ヒーロー』についてはご存知ですか?」
「そんなには知らないけど、だいたい何なのかは知ってる。」
「そうですか。私たちは『マリオネット』とも、『ヒーロー』とも異なる存在です。この二つの存在は、中身は違えど、本質は同じ。ですが、我々とその二つは本質から異なります。あなた方『勇者』は、『マリオネット』の部類に入ります。当然、『勇者』は『魔王』にはなれません。」
だから、シンに「マリオネットか?」と聞かれたのか。
「では、次に我々『魔王』の存在意義についてお話ししましょう。かつて、私たちは『魔王』とは呼ばれておりませんでした。『魔獣及び猛獣管理局』。そこに務める者たちが、今の『魔王』です。『魔王』とは、言わば愛称。実際には、何の王でもありません。強い人というイメージを定着させるために、王の一文字を使ったに過ぎないのです。名前の通り、仕事は世界に住みつく魔獣や猛獣の管理、統率。そして、世界の平穏を乱す者の排除。それこそ、『勇者』のようなことをしていたのです。ですが、日に日に世界は増え、世界の増加と共に、人口も増加。魔獣たちも、環境に応じてさまざまに進化、強化を繰り返し、我々の仕事も増える一方でした。さらに、我々魔王はその特異さゆえに、増える手段を持ちません。『サクシャ』も、私のほかに各世界に一人ずつ『魔王』を作り出していたのですが、力の強大さを考えて、その数を制限したのです。」
ふと、アーサーの方を見た。アーサーはニヤリと笑いながら、こちらを見ている。
「仕事をさばくことも難しくなったある時、私たちはある一つの方法を思いつきました。それこそが、『勇者』なのです。『マリオネット』を強化し、その世界の平穏を守らせる。それが、もともとの目的でした。ですが、マリオネットは非常にもろく、弱い。以前は私たちでマリオネットを何体か譲り受け、教育していたのですが、それでも猛獣たちを押さえつけるほどの力を持たせることはできませんでした。そこで、その逆を考えたのです。私たちが、『マリオネット』の敵になればよいと。それも、ただの『マリオネット』ではなく、特異な『マリオネット』。すなわち『ヒーロー』を使おうと。ということで、『ヒーロー』を一か所に集めたのです。それが、『勇者派遣システム』です。幸い、人口の増加と共に『ヒーロー』の数も増えていたので、集めることは簡単でした。そこで、『魔王』という存在を徹底的に悪だと認識させ、自分たちを世界に平和を取り戻す『勇者』だと思わせたのです。」
自分の今までの行いが、不意に恥ずかしく感じた。自分は、今まで『魔王』をただの悪だと思っていた。だが、彼らも世界の平和を望む存在だったなんて...
「騙していたのは、申し訳ございません。ですが、どうしようもなかったのです。我々の意図を知ってしまうと、私たちを攻撃することを躊躇してしまうでしょう。だから、他言無用なのです。さらに、パーティーを組んで我々を倒したとなると、そのパーティー自身も『魔王』を圧倒する力を持っているということ。それらが世界に残ることで、一時的にも世界を守れるという仕組みです。」
ある程度を話し終えたのか、ゼンズは深呼吸をした。アーサーも満足そうに話を聞いており、話の途中でゼンズは何度もアーサーの様子をうかがっていたことから、何個か話してはいけないことがあったのだろう。
「ゼンズさん。ですが、世界は千個ぐらいしかないんですよね。でも、勇者はその5倍はいます。そこまで必要だとは思えないのですが、なぜそんなに勇者がいるのですか?」
すると、ゼンズの顔が少し険しくなった。
「まぁ、万が一の人手確保やら、教育としてとかはあるのですが... 人手を増やしたのにはある理由があるのです...」
第二十一話、お読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか。
同日二話投稿となりました。特に理由はありません。
さて、四月も五日。入学式やら、就職やらで、『新』という漢字が似合う頃合いとなりました。新しいことに臨むことはとても良いことなのですが、無理をしてしまうことも多いです。自分の限界を把握することです。決して、無理をしない。無理をして、体調を崩しては元も子もないので、自分の体と相談して頑張ってください。
私も、引っ越しをして新生活を始めました。その生活の中で、一つ問題があります。『シンク』です。水場の水跡が全然取れないのです。水跡の原因は、水道水に含まれる『カルシウム』らしいのですが、その跡が洗っても取れません。その汚れが気になって仕方ないのです。まぁ、数日の間シンクの水滴をふき取り忘れた自分が悪いのですが...誰か、いい方法教えてぇ!!




