灰色の道の前で
<色付け>という言葉に、なぜか覚えがあった。オレの人生では一度も聞いたことがないはず。しかし、デジャブと言うには、懐かしさを思わせる言葉だった。意味は分からないが...
「深く考えるな。考えても、あの次元のやつらのことは理解できん。理解する必要もないからな。その部屋を出ろ。こちらまでの道を作っておいた。時間がないのだろ?早く来い。待っている。」
人に理解できないことは多く存在する。その一つが「人間の存在」だ。人生そのものが夢だと考える者。人間はモルモットのように、外に住まう何かに実験されていると思う者。神に作られた存在だと言う者。ビッグバンから続く生命の進化の過程だと唱える者。真意はわからない。分からないからこそ、人は思考し、答えを求めようとする。ただ、その答えも確かめるすべはない。人は理解できないを理解しようとすることに多くの時間を費やし、理解できないと知ったときに人生を終える。分からないことがわからないまま終わる。それが人生。ならば、理解できないことを考えないことが正解なのだろう。
「わかった。行こう。」
部屋を出る前に、もう一度人形をみた。できればこの笑顔のまま、人らしい姿の彼女と会いたかった。なぜ今になって笑顔なのだ。人にすると死。なのに、なぜ笑っていられるんだ。
彼女の儚い姿に後ろ髪を引かれたが、その思いを振り切り、部屋を後にした。
次なる道が目の前に広がっている。道を進むほかに道はない。
早くこの塔の真意が知りたい。マリオネットとは何だ。<色付け>とは。そして、あの声の主は誰なんだ。
知りたいという思いが足を加速させる。気が付けば、もう目の前には扉一つしかなかった。
「入りたまえ。君の知りたいことが、中で待っているぞ。」
扉の奥から聞こえる声。部屋の中で聞いた声よりもずいぶん年老いている。
ゆっくりと扉を開ける。その奥に広がる世界への恐怖に、手に力が入らない。
始めに見えたものは...釣り下がる人。それも100を超える。天井から糸でつるされ、皆等しく下を向いている。部屋自身が暗いせいで、松明を近づけなければ顔も見えない。
「どうだい?変わってるだろう。マリオネットばかりの部屋だ。気味が悪いとは思わないかい?」
部屋の奥から、しわがれた声が響く。
「ここには100を超えるマリオネットがある。それら一つ一つは、同じ素材で、同じ型で造られたものだ。よく見てみろ。性別。身長。顔の形、目の色、髪型。何から何まで同じだ。」
つるされた人形を一つ一つ見てみる。男性の顔立ち。背丈はすべて同じ。顔も、目の色も。髪型も髪の長さも同じ。
「ここにあるものは、人形なのか?」
知りたかった。人形と言うには、人間味あふれる姿。魂の抜けた人。うまくは説明できないが、とにかく人形としてくくるには、切なすぎる存在に感じた。
「人形ではない... マリオネットだ。」
「マリオネット... さっきもそういっていたが、マリオネットと人形は何が違うんだ。」
「人形は。人の形をしたモノだ。あくまでモノに過ぎない。モノがしゃべるか?モノが飯を食うか?しないだろ。モノは生きていないのだからな。ただ、マリオネットは違う。操り人形だ。人形にはない動力源を持っている。マリオネットは話す。マリオネットは飯を食う。マリオネットは生きている。いや、生かされているのだ。」
全然、わからない。マリオネットは生きている。人形は生きていない。違いはそれだけなのか?
「マリオネットは人間だ。斬れば血が出る。痛みを感じ、顔をゆがませ、泣き叫ぶ。笑わせれば、笑う。顔に花のような笑顔を浮かべる。美しい物には心打たれ、汚れたものを忌み嫌う。」
「何が言いたい!」
「こちらへ来なさい。君が知り得るはずのない『この世の真理』の一部を説明しよう。」
芽生えた興味の心が、老いた声へと体を導く。つるされたマリオネットの群れの中を通り抜けて、行きつく先をこの目に収めようと。
「待て。そこから少し動くな。」
「どうした?何かあったのか?」
胸騒ぎがした。何か奥で見てはいけないことが起こっているような気がして。
う、うぅ
老人のうめく声。
「本当に大丈夫か?今行く!」
「クルナァ!!!」
人とも思えぬ声に身がすくんだ。先ほどまでの老人の声ではない。獣の声。生物を寄せ付けない、威嚇するような声。その一声に、体は心の動きを止めた。
五分ほどたった。あの言葉の後、何の物音もしない。本当に見捨ててよかったのか。行って、介抱すべきではなかったのか。背中から押し寄せる後悔と正面から感じる威圧感に、オレは身動きが取れなくなっていた。
「来い。思ったより、長くはないようだ。」
足が動く。前からの圧力が消え、後悔の念が部屋の奥へとオレを突き飛ばした。
「ようこそ。「糸繰の塔」へ。」
車椅子に腰かける老人。ほこりをかぶったコートに身を包み、つばの広いハットを深々と、顔が見えなくなるまでかぶっている。
「もう、ここには誰も来ないと思っていたよ。私が死ぬまでね。予想外だった。もう一度、人に会えるとは。」
声に覇気はなく、死を前にした老人とも言える姿だった。
「お前は誰だ?ここまでの道にあの人形を置いてきたのは、お前なのだろ!何か伝えたいことでもあったのか。」
聞きたいことは山のようにあった。しかし、いくら聞いてもこの老人が答えられるのは、あと二つか三つ。気持ちを抑え込み、このことだけを聞くことにした。
「あなたの伝えたいことを教えてください。」
口を伝って出る言葉に、無意識に敬意が現れていた。
「その選択に、悔いはないのか?」
「ありません。」
「老い先短い命。いや、命という言葉は使うべきではないな。話してやろう。私がなぜここにいるのか。私が、いかにして生まれたかを...」
息を大きく吸い、老人はゆっくりと口を開いた。
「私は、小さな村に生まれた...」
そう言って、物語は始まった。
第十四話、お読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか。
今回は少し短くなってしまいました。キリが良かったので。次回、この物語の核心になりそうなことを書くので、許してください!!
では、本日のブログ...
ユーフォ―キャッチャーって楽しいですよね。景品取ろうと頑張って、機械に金貢いで、挙句の果てに取れた景品って、大抵いらないんですよね... 最近では、確立機が増えて、より金使えばもらえるというものが増えました。ユーフォ―キャッチャ―限定フィギュアとかなら、後で売るとかもできるのですが、売るのも思い出を捨てるようでもったいない気がしてしまうのです。かくゆう、昨日友達と始めたら止まらなくなって5000円も気づいたら使ってました。結果はぬいぐるみ2つとお菓子系が数品。それに、ボックスフィギュアが一つ。しかも、そのキャラクターしらねーし。なんかの宣伝で見ただけのヤツ。結果はビミョウでしたが、楽しかったです。




