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ワールド・リ・クリエイテッド ~縛られ勇者伝~  作者: オニオンスープナイト
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旅立ちの先で

 天井からさす、白い光。それを浴びて、オレンジに光るテーブル。きれいに整えられた部屋。色彩豊かな絨毯が、部屋を床から照らしている。壁には湖を描いた絵画。やけに人工的な部屋だ。人工的だが、落ち着きをもたらしてくれる。久々に人気(ひとけ)を感じられることがうれしい。今は正直どこでもいい。ただ『安心』の一言に、一秒でも長く触れておきたい。


「それにしても、こんなところにつながっていただなんて驚きですね、勇者様。では、あそこはあの生物の檻だったのでしょうか?」


 不意にオレも感じた。あの固い扉。中のものを出させないためだったのだろうか。石のボールを激突させても壊れないほど強固だった。しかし、とてもそうは見えない。整備されていた壁面。地面にはフンや食べカスもなかった。しかし、あのサイズのモンスターだ。閉じ込められた部屋で長く生きられるとは思えない。あの知能レベルで自身の汚物を片付けられるとも思えないし、第一、ネズミが出入りできるような穴すらなかった。誰かの手が入っていると考えるほかない。あのモンスターを手なずけることができる誰かが、ここに住んでいるとしか考えられない。


「おい、アーサー。どうやってあの扉を開けたんだ?あの石のボールがぶつかっても、ビクともしなかったぞ。」


「あぁ、あれですか。あの扉に強力な守護魔法がかかってたんですよ。私がちょちょっとやって、魔法を解除したのですが、とても勇者様のレベルでは解除できません。叩いても壊してもいいですが、あのままやり続けても、ざっと五年はかかりますね。」


 オレの攻撃力ってどんだけ低いんだよ...


「まぁ、勇者様の考えていることはわかります。この建物の持ち主は、相当の手練(てだ)れだと言いたいのでしょう。そうですね。あの生物はレベルにすると、ざっと70はいっています。勇者様が生きていたことが奇跡に感じられるぐらいです。それほどの生き物を管理できる強さ。計り知れない力の持ち主なのでしょう。」


「なんで、そんな悠長に構えていられる。そんなやつに来られたら、オレたち一捻りだぞ!」


「ご心配なく。おそらく、この世界に私より強い存在は...いません。勇者様、そんなに心配しなくてもチーターによるクソゲーとか、オレつえー系にはなりません。基本、私は傍観者。戦いには参加しませんので。」


「それって、オレからしたらもっと不都合なんだけど...」


「死なれても困るので、ピンチの時は助けます。いきなり力が湧いてきた、といった感じで。いわゆる『主人公補正』ってやつです。」


「じゃあ、できる限り早く使ってくれることを祈るよ。」


「それよりも早くここを出ましょう、勇者様。やることはまだ沢山残ってますよ。」


 それもそうだ。こんなところに長居しておく必要もない。人気(ひとけ)が恋しいのなら、人里に帰ればいいのだ。


「そうだな。」


 焦りと恐怖にさいなまれていたが、気にすることは無いのかもしれない。地下での一悶着はなかなかのものだった。上に住んでいるのなら、その異変に気付かないことはあるまい。そうだ。もし住んでいる人がいたとしても、今日は留守なのだ。きっとそうだ。そうに決まってる。そうであってくれ。


 出口を見つけたいが、一部屋がこんなに広いとなると、建物自身も大きいのだろう。今いる部屋が、10m×10mもあろうか。そこに廊下に通じる開けっ放しの扉が一つ。隣接する部屋への扉が二つ。豪邸。いや、城だ。いまいち間取りがわからない以上、歩き回って探し出すしかない。廊下が目の前にあるから、そこを通っていこう。玄関につながっていない廊下なんてないはずだ。


 安直な考えのもと、部屋を抜けて廊下に出る。右に行くか左に行くか悩みどころだが、勘に従って右に進む。もしかしたら誰かに合うかもしれないという恐怖に、体中の筋肉がピリピリとしびれる。アーサーの方を見るが、アイツは特にそんなそぶりは見せていない。これが、強者の余裕というやつか。オレもそんな設定なら、胸を張って堂々と冒険できるのにな。


「行き止まりですよ。」


 アーサーの一声でふと我に返る。目の前には壁。振り返ると、さっきの部屋がそう遠くないところにある。こちらの道は間違いの様だ。


「こっちは間違いだったようだな。戻るか。」


 来た道を戻り、部屋を通り過ぎる。廊下には窓はなく、ただ扉だけがたくさん並んでいる。そして、またも行き着く行き止まり。


 どちらに進んでも行き止まりとは。この建物はどんな設計をしているのだ。


 もう一度反対側へ向かって歩く。気の焦りから、歩幅が大きくなっていく。案の定、行き止まりだ。では、扉はどうだろうと思い片っ端から扉を開けていく。しかし、どれも隣接する部屋との扉があるだけで、他に通じる扉は見当たらない。それどころか、よく見るとすべての部屋が同じ作りになっている。同じ照明。同じ絨毯。テーブルの素材から位置まで、すべて寸分違わず同じ物が同じ場所においてある。初めに入った部屋に駆け戻ると、オレたちが来た扉もなくなっている。


「どうなっているんだ。オマエ、何かわかるか?」


 不安になり、アーサーに尋ねると、


「これは、何でしょうか。とても難解な術式ですね。空間魔法と束縛魔法の掛け合わせでしょうか。興味深い。これほど難解の呪文を生み出せるとなると、私とて覚悟が必要かもしれません。」


 と答えた。


「で、解けるのか?それとも...」


「私を誰だと心得ていらっしゃるのですか?面倒ですが、そこまで大変ではありません。いざとなれば『消去(デリート)』すればいいだけですし。」


「その、『消去(デリート)』ってなんだよ。」


「サクシャに与えられた唯一無二の二つの力の一つ。対象や対象の状況を無条件に破壊、消滅させる能力です。強い力ゆえに条件はありますが、なかなか使い勝手のいい能力ですよ。例えば、焼き魚の骨を取ったりとか、ミカンの皮を消したりとか...」


 なかなかえげつないことを言ってきたが、コイツが敵でないことが一番の救いだ。今までの行為から感じる限り、魔王を凌駕する力があるのは明白。それに、常識を逸脱した『消去』の力に、それと同等の力がもう一つあると来た。にしても、なんてことに『消去』を使ってるんだ。罰が当たるぞ。


「とにかく、早くやってくれ。何らかの罠が敷かれていて、見事にひかかったんだ。気づかれるのも時間の問題だ。」


「はい、わかりました。では。」


 アーサーはどこからともなく手帳とペンを取り出した。金と何かの革でで作られた高級そうな手帳。それに、羽が付いた銀色のペン。手帳の背を優しくなでると、ページが次々にめくられ、4分の1程めくれたところで止まった。そこに、ペンで何かを書き入れ、手帳を閉じ、また背をなでる。


「終わりました。もう大丈夫です。」


 何かが変わったようには見えない。魔法が解けたような感じも無ければ、見た目が変わった感じもない。


「何か変わったのか?オレには何もわからんぞ。」


「プログラムの上書きをしたので、変化しているハズなのですが... 変ですねぇ。元からこんな作りだったのではないでしょうか。」


 コイツの力を使ってこの結果なら、妥当な考えだ。元々がこんな感じだったと思うしかない。でもなぜだ?あからさまに人をだますような設計だ。魔法を解除したにしても、成功か失敗か分からないじゃないか。ここから、変化したところを探すなんて大変だぞ。


「勇者様。そう頭を抱えることはなさそうですよ。」


 廊下の方からアーサーの声がする。


「さっきまで行き止まりだったところに扉ができてます。ちゃんと解除できてましたよ。」


 良かった。先に進めそうだ。


「よくやった。今行く。」


 廊下に出て、アーサーが立っている方へ行く。


「この扉には細工されてるか?」


「いえ。これはただの扉の様です。」


 恐る恐る扉に触ってみる。何も起きない。取っ手を押すと、扉は勢いよく反対側へと開いていった。


 今度目に映るのは暗い部屋。それこそ真っ暗だ。


「行くのかぁ?こんなくらい中をぉ...」


「当たり前ですよ、勇者様!何を怖がってるんです!ちなみに私は夜目が効くので、何も心配ありませんが!」


 アーサーが満面の笑みでそう答える。


 仕方がない。行くしかない。入ったら槍が降ってくるとか、矢が飛んでくるとかはやめてくれよ...


 思い切って部屋の中に入る。すると、体が入ったと同時に、扉がバタンと音を立ててしまった。


 しまった。退路を断たれてしまった。何の対策も取らずに来たのが悪いのだが、この先に道が続いているのかもわからない状況で、これはキツイ。どうする。アーサーに頼んで先導してもらうか。それとも...


 ブッ


 何の音だ?頭上から聞こえる。機械のノイズのような音。


<あ、あ、あ~。テストテスト。マイクのテスト中。聞こえますか?>


 一気にテンションが下がる。張り詰めていた緊張が一気に散っていき、笑いが込み上げてくる。


<ようこそ。お客人の皆様。いかにして、我が城においでなさったのかはわかりませんが、招かれざる客なのはご存じのはず。即刻お帰りくださいと言いたいのですが、あいにくそこまで優しくしてあげられる場所でもございませんので...>


 顔が一気に白くなる。この状況で一番欲しくなかった展開が最悪の形で訪れた。アーサーはまだ笑顔でこちらを見ている。この状況を楽しんでいるんだ。


<もしかしましたら、出会う前にさようならとなるかもしれません。では、ご健闘を。>


 頭の中に広がる死の文字。役に立ちそうのない味方。どうしようもない。あの術式を書くことができるレベルだろ!?勝ち目なんてあるのか!?それに出会う前にさようならって...どうすればいいんだオレはぁ!

 第十話、お読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか。

 早速ですが、タイトルを変えたいと思います。とはいえ、全然いいタイトルが思いつきませんので、変更自身は先の話になると思うのですが。実際、話の内容とタイトルが全然かみ合わなくて...自分の理想がずれてきたからなんでしょうが、本当にある意味タイトル詐欺的な作品になりつつあります。申し訳ございません。

 今後のなんとなくの展開からある程度のタイトルは決まってくるのですが、どうも聞いたことあるものばかりになってしまい、頭を悩ませている次第です。タイトルって大事ですよね。それより、タイトル変えたら何らかの手続きが必要なのでしょうか、このサイト。とにかく、タイトル変更を行う場合は事前にどこかの後書きに記させていただきますので、よろしくお願いします。

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