旅立ちの朝
縛りプレイ―それは、SMプレイのうち亀甲縛りなど縄を使うプレイのこと。昭和から存在する言葉。また、ゲームをプレイする際、本来ゲーム側からは設定されていない制限(縛り)を自ら科す事によって、より難易度の高いゲームをプレイする事...(ニコニコ大百科より)
歴戦の勇者となると、世界の一つや二つ救うなんてことはたやすい。そこら辺の雑魚から、魔王に至るまで、よくよく考えれば皆テンプレートな動きばかりだ。雑魚戦では、取り合えず味方に「ガンガン行こうぜ‼」とか言っておけばいい。魔王戦では、僧侶だけは「命を大事に」。後は結局「ガンガン行こうぜ‼」とかいう魔法の言葉で一発クリア。多少のレベル上げも、歩いて出てきた鉄色のゲル状の物体に剣を当てれば、「パララパッパッパパーン」という天からの謎の音楽とともに、なんとなーく強くなる。そろそろ、魔王狩りも疲れてきた。ここらでいっちょ隠居生活をしたいんだが、なにぶん、定年までまだ長いし、隠居生活のための資金もまだ足りない。意外と勇者ってシビアなんだよ。村救って、100G。これじゃ、最後までパーティみんなヒノキ装備じゃねーか!ってね。ま、なぜかモンスターがお金持ってるからさ。そこは助かるよ。なんか、臭かったり、ドロドロだったりするけど...あれ、いつの間にか話口調になってる。
そんなことはさておき、また上からのお達しだ。今度もまた魔王退治。しかもレベル1から。仲間集めて、お金集めて、強くなって、魔王倒す。この生活もいつになったら終わるのかな...
「勇者No,8130、5番窓口までどうぞ」
「はーい」
「はい。ではいつも通りですが、ここに新しい世界での自分の名前と生年月日。あと、ここの同意書のほうにサインをお願いします。」
名前か...毎回ここで悩むのだが、一回やたらと中二臭い名前で登録したら、パーティーのみんなに名前を呼んでもらえなかったことがある。『認めたくないものだな。自分自身の、若さ故の過ちというものを。』
名前に関していえば、意外と規則が厳しい。まず、「あああ」とかいう「めんどくさいから、コレでいいっしょ!」みたいな名前はアウト。他にも、敵が使いそうな名前や、後で村人が呼ぶときに恥ずかしい思いをしそうな名前もアウト。だからかしれないが、窓口では勝手に名前を付けてくれる。
「えっと...じゃあ、名前はランダムで。」
「はい。では、好きなところでボタンを押して下さい。」
ポチッ!!
「では、お名前は《ギギン》でよろしいですか?」
ギギン!?いやいや、読みにくすぎだろ!!もっとましな名前ねーのかよ!!
「すいません、変更ってできます?」
「あ、はい。できますけど...後ろがつっかえてますのでお早めにお考え下さい。」
「あ、じゃあ、《ギン》でお願いします。」
ギンか...とっさの考えながら、よい名ではないか。
「《ギン》でよろしいですね。では、準備ができ次第お呼びしますので、こちらのカードをもってお待ちください。」
はぁ、それにしても《ギギン》はないだろ。せめて《ギン》だよな。そういえば、前に《ポコ》とかいう、やたらかわいい名前引き当てたが奴いたような。ポコはないな、ポコは。
「No,8130。No,8130。出発準備が整いました。十分以内にすべての準備を完了させ、11番ゲートまでどうぞ。」
ん!いつもより早いな。んじゃあ、出発前に一服するか...にしても、11番ゲートなんてあったっけ。
出発前にタバコを吸うのは、いつものことだ。ヤニ臭い勇者とかイヤだろ?でもさ、勇者だってさ、息抜きしないとやってらんないのよ。でも、向こうで吸うとイメージダウンだし。そこらへんは厳しいんだよな。勇者を美化しすぎなんだよ。
「あ!8130番さんじゃないですか!」
「お!その声は304番か!久しぶりだな。元気にやってるか。」
「はい。おかげさまで。」
おっと、ここで読者の皆さんはお思いだろう。『勇者、何人いんの?』お答えしよう。勇者ナンバーというものは0~9999まで存在する。実際、9999人いるのかと言われれば、ノーだ。たまに勇者生活に疲れ、あっちの世界で家族を作り帰ってこなくなるやつもいる。そんなこんなで空き番号が500~2763まで現在存在する。いずれは埋まるが、今は少子高齢化やらなんやらで、ここのところは5,6年埋まっていない。ちなみに、1~100まではスーパーエリート。後の数字は、平勇者といったところだ。
「8130さんは、今からですか?」
「あぁ。何とも面倒だよな。今回はどんなことやらされるのやら...王道系ならまだしも、ダークヒーロー系とかだときついよな」
「ですよね~。役作りとかしっかりしないと、パーティーから浮いたりしますし。もう、めんどくさすぎですよ。あ、それはそうと、聞きました?11番ゲートのこと。なんか、新しくできたんですけど、新システム導入したせいでちょっとバグってるらしいんですよ。」
「おい、ちょっと待てよ!オレ、今からそこ使うんだけど。大丈夫...だよな...?」
「こればっかりは、整備班じゃないんでわかんないですね。別に死ぬとか、帰れないとか、そんなレベルじゃないんで。大丈夫ですよ!」
おいおい。なんだよ、フラグか!?フラグなのか!?そうであってほしくはないが、頼む‼何も起きないでくれ‼
「あ~あ、もう時間だ~。気ぃ重いな。最後に変なこと聞かせんじゃね~よ!」
「いや、すいません。まぁ、でも頑張ってください!!」
「ハァ...んじゃぁ、いっちょ世界救ってくるわ...」
気分重いな~。行きたくないな~。早く帰って、たまった録画アニメみたいのに。『こ*すば』とか、『まお〇う』とか、そんなん世界ならいいのに...いやもういっそ魔王さん、異世界でバイトでもしててくんないかなぁ。
〈11番ゲートへようこそ。勇者カードをかざして、ボードのほうまで進んでください。〉
全自動か。なんか、かっこいいな。
〈それでは、勇者番号8130、勇者ネーム《ギン》様。出発シークエンスを勇者様に移行します。無事、世界をお救いください。行ってらっしゃいませ〉
最後ぐらい、人の手で送り出してほしいもんだぜ。しかもこれ、分子化タイプのヤツかよ。酔うんだよなぁ、これ。
「勇者番号8130、ギン。行きます‼」
けたたましい音とともに、目の前がまぶしくなる。すると途端に体が軽くなり、溶けて消えてしまいそうな心地になる。いつもならそれで終わるはずだった。確かに体が溶けていく感じはある。分子化した自分はまだ核の近くにある。でも、ちょっとずつだが、分子化したオレが離れていく。
え、まって、まって。え...これヤバくね!? だ、だ、だ、だいじょうぶか!?
そのまま体は落ちていく。意識も遠ざかっていく。オレの一部はどこへいくんだ...そう思いながら、オレは深い眠りに落ちていった
目を覚ますと、オレはベッドの中にいた。どうやら無事ついたようだ。体も問題なく動く。どうやらここは、誰かの部屋のようだ。王道パターンなら、ここは自分の部屋で、母親が起こしに来るはずだ。
コンコン
よし!思惑通りだ!いいぞ、いいぞォ!
「ギン!ギン!起きなさい!今日はあなたの大事な旅立ちの日でしょ!」
扉があいたぞ!これだよ、これ。今回の旅は楽勝そうだ‼
母親と思わしき人物がこちらに向かってくる。布団を勢いよくめくり、少し怒った表情でこちらを覗いてくる。
「起きなさいって何回言ったらわかるの!? ほら、早く起きなさい。」
よし、転送されたばかりで疲れたし、ちょっとダダでもこねてみるか...もうちょっと寝させてくれよゥ、母ちゃん!
異変に気付くのには、時間はかからなかった。声が出ない!人間最大の意思疎通の方法がない!
まてまてまて...え、声でないって...嘘だろ‼ おい、まさかあんときに、声を持っていかれた!?どうする、どうする、どうする、どうする...
〈No,8130、No,8130聞こえるか?まあいい。転送ボードの不具合により、お前の意思伝達プログラムに異常が発生している。しかし、問題はない。こちらも急繕いだが、替えとなるシステムを送信した。もうインストールされているはずだ。しばらくはそれを駆使して頑張ってくれ。では、健闘を祈る。〉
おい!健闘を祈るって...どうすんだよ!これじゃ勇者以前に、人間としてやばいじゃん。てか、代わりのシステムって何?あ、これか。
オレは何も考えずそのシステムを開いた。このシステムで、オレの旅が今までの旅以上に大変なものになるとは、まだ気づきすらしなかった。
起きますか?
⇒はい
いいえ
え?
文章へたっぴですいません。どうやったら見栄よくなるんでしょうかね?読みやすい文章も大事ですが、読みやすい文字配置とかも大事なんですが、いまいちうまくできない。でも、不定期ではあると思いますが、最低限の努力とともに頑張らせていただきます。好評、悪評バッチこい‼