第七十八話・裏 公方側の動き 【公方・朝倉・浅井】
七十九話にしようと思ったけど、時系列的には同時なので、こんな中途半端な形になりました。
時数の少なさといい、申し訳ありません!!
平に、平にご容赦を。
1561年 六月 槙島城
織田と武田の戦が終わってから少し経った頃、思った以上に上手くいかない状況に苛立ちを募らせていた足利幕府将軍の足利義昭の下に、武田軍が織田に攻め入ったという報告を齎したのは義昭からの信頼厚き幕臣、細川与一郎藤孝であった。
織田――というよりは須藤――と通じている細川は、須藤の放った草によって織田や諸勢力の情報が齎されるのだ。
それを、自分に被害が無い……つまりは裏切ったとバレない程度に情報を話すと、義昭は喜んだ。
「あの日ノ本一と名高き武田が織田のうつけに攻め入ったか!!」
「――はい。既に美濃の北方城へと進軍したとの事です」
それを聞いた義昭は、苛立っていた表情から一変、満足気に笑みを浮かべる。
「そうか、そうか! これで織田の高くなった鼻もへし折れよう!」
実際には兵力差も圧倒的に織田の方が多く、更に鉄砲の数は異常なまでに多い為、幾ら武田軍でも負けただろうと考えていた藤孝であるが、それも伝える事はしない。
公方には、まだ自分を信頼していてもらう必要があるのだ。
機嫌を損ねる様な発言はする訳がない。
義昭は、そんな藤孝の考えなど知る由も無く、
「良し! 朝倉と三好に書状を書くぞ! 武田が攻勢に出た今、余等も挙兵し、織田を包囲するのだ!」
と自信満々に言う。
藤孝はそれを内心呆れながらも、
「それは良い案ですな。では、紙と筆を持って参りましょう」
そう言って、飄々とした笑みを浮かべたのだった。
その数日後 越前 一乗谷城
「……お呼びですか義景殿」
小谷城より辛くも逃げ延び、父の死に打ちひしがれていた浅井家当主浅井長政が評定の間に遅れてくると、その場には既に朝倉家の将や、長政と共に逃げ延びた将達が揃っていた。
「来たか長政よ。……これを」
そう言って義景は手に持っていた書状を長政へと手渡す。
「……これは?」
長政が訊ねると、
「公方様からの書状だ。内容は『武田が織田に攻め入ったこの機に乗じ、挙兵せよ』との要請だ」
義景の言葉に、長政は驚いて、慌てて書状に眼を通す。
そこに書かれていたのは間違いなく、挙兵せよという内容の書状であった。
公方方に先んじ、朝倉は草から織田が武田に勝利した、という情報を得ていたが、それを修正する必要はない。
「――義景殿っ!」
先程の落ちこんだ表情から一変、嬉し気な笑みを浮かべる長政に、義景も頷く。
「うむ。長政よ、お主が親久政の仇、そして我が甥を敗走させた怨敵である織田に一泡吹かせる機が、漸く来たのだ。……我等も公方様と共に、戦を巻き起し、この日ノ本を乱す織田を、討つ時だ」
「――はい!!」
義景は家臣達を見渡すと、立ち上がり、
「――長政よ! 生き延びた精強なる浅井の将よ! そして私に忠義を尽くす朝倉の兵共よ! 今こそ、織田を討つ時ぞ! ”日ノ本一”と呼ばれた武田に勝利したが、それがどうした! 我等江北武者こそ、真の日ノ本一の兵である! 主等の知勇、存分に振るい、公方様に――我等に勝利を!!」
そう言って拳を突き上げる。
それに倣い、家臣達も立ち上がって拳を突き上げる。
「「「「――勝利を!!」」」」
「……待っていろ織田信長ァ! 必ず、貴様の頸を取り、父の仇とするぞ!!」
浅井長政は、暗い闘志に、全身を滾らせた。
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