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第七十六話 織田対武田 開戦

『新しい感想があります』という表記に、毎回びくびくし、中々ページを開くことが出来ないノミの心臓を持ってます。

更には指摘やネガティブな感想が書かれているのでは無いかと戦々恐々、胃がキリキリし始めます。

なので感想や指摘が来るのは嬉しくも、どこか嫌という……メンドクサイ人間です。


あ、感想はホントに嬉しいですよ? (フォローになってないけど)


 1561年 六月 美濃 長良川



「いざ、武田が”赤備え”の強さを見せる時ぞ! ――己が”赤備え”、織田の血肉で更に赤く染め上げよ!」


「「「「――おおおぉぉぉぉお!!」」」」


 武田軍左翼、武田の将達の中でも武勇優れる武人と謳われている山県昌景率いる、赤い鎧をまとった事から”赤備え”と呼ばれる武田軍の精鋭部隊は、気勢を上げて突貫を始める。

 その速度は風の如く、その勇猛さは虎の如く。

 槍や刀を構えた兵士達が、人馬一体となって織田軍へと突撃していく。

 その気迫は、正しく”日の本一”と言っても良いだろう()()があった。




 だが、それに臆する織田軍では無い。

 武田軍左翼と相対する織田軍右翼鉄砲隊を率いる佐々成政、前田利家、前田利益等は、猛然と吶喊してくる武田軍が、鉄砲の射程に入るまでジッと構えていた。


「――さて、俺は槍働きの方が得意だ。故に指揮は佐々殿に任せよう」


「佐々の小父貴は鉄砲隊を率いるのに慣れてるからなぁ」


 普段は信長の馬廻りである”赤母衣衆”の一人である前田利家と、その甥利益はそう言って後ろに下がる。


「任された。……鉄砲隊構え!!」


 佐々成政の指示で、鉄砲隊が武田の軍勢に向けて銃を構える。

 そして、ジリジリと、その時が訪れるのを待つ。

 額にはいつしか汗が吹き出し、否応なしに視界を奪う。

 例え、馬防柵や掘があったとて、視界に武田の軍旗が見えてくれば、緊張感も生まれていく。

 そして――


「今! ――放てえええええぇぇっ!!」


 ドドドドドドドドドド!!


 幾つもの銃弾が、武田勢に向けて放たれた。





【視点:須藤惣兵衛元直】



「――始まったか!」


 ドドドドドドドという銃声が遠くから聞こえてくる。

 右翼――佐々殿や前田殿がいる方向だ。

 ……さて、どっちが勝つかは分からないが、俺も俺で仕事をするとしよう。


「――奇妙丸様。では、某も行って参ります。勝三、奇妙丸様をしかとお守りしろ」


「――須藤も、武運を」


「おう! 任せとけ!!」


 俺が声を掛けると、奇妙丸様は真剣に頷き、勝三は元気良く腕を振り上げる。

 じゃ、いつも通りの仕事をするとしよう。

 俺達は敵にバレない様に、移動を開始した。





【視点:山県昌景】



 ……こんな、こんな馬鹿な事があるだろうか。

 我等が――”日ノ本一”の軍勢と名高き武田の、更にその中の精鋭である”赤備え”が、また一人、また一人と死んでいく。

 織田軍は、我等と打ち合う事無く、我が軍には五百程しかない鉄砲を、惜し気も無く使った。

 その轟音で、武田が誇る屈強な馬は驚き暴れ、乗っていた兵士を振り落とし、時には踏み殺してしまう。

 そして何十、何百といった銃弾は兵士や馬の身体を貫いていく。

 胸や頭に当たってしまった兵士は一瞬でその命を散らし、腕や足、腹などの致命傷にはならなかった兵士であっても、余りの痛みによってか倒れ伏して呻く。

 かく言う某も、腕や足、腹に銃弾を食らってしまい、立ち上がる事すら儘ならない。

 我等が粗方倒れた時を狙い、織田の兵士達が近付いて来てはまだ息のある兵士達を殺していく。

 ……こんな、こんな事があってたまるものか!


 戦とは、人と人、刀と刀、意志と意志、武勇と武勇がぶつかり合う、誇り高きモノだ。

 策謀家達が己が知略を尽くし、軍を勝利へと導く為の道程を示し、武勇優れる者が槍や刀を以て敵を討ち斃してその道を作る。

 そして相対した者と名乗り合い、命を懸けて死合う。

 勝利したならば、敗北し、死んでいった敵を賞賛し、敗北したならば、勝者を讃えて逝く。

 それこそが戦のはずだ。

 それこそが我等武人の――武士(もののふ)の戦の筈だ。


 それがどうだ。

 名乗りを上げる事も無く、刀を打ち合う事も無く、誇りある者達が誇り無き死を迎える。

 武士ならば、家の為、主家の為に戦い、誇りある死を迎える事こそ一番の誉れ。

 それがこの様な死に様などっ……許せるものかっ!


「――昌景様!」


「……又右衛門、か」


 現れたのは、家来である志村又右衛門光家だった。

 砂埃で汚れてはいるが、どうやら無事な様だ。

 又右衛門が某の手当を始めるが、それを静止して訊ねる。


「……我等が軍はどうなっておる?」


「……内藤様は退却、中央の逍遙軒様も同じく退却。右翼の馬場様等は未だに抵抗を続けております」


「……そうか」


 ……そう、か。

 武田が……我等が負けるか。

 これもまた時代の流れ、なのだろうな。


「……又右衛門、某の頸を取れ。既にこの身は長くはない。……だが、我が頸、織田になぞくれてやるものか。故に……ゴフッ! この頸を取り、殿の下へ」


「――っ! 昌景様!」


 某は眼を瞑る。

 ――あぁ、御館様。先に死に逝く某をお許し下され。


「――御免!!」


 ……あぁ、そう言えば、越後の鬼との再戦を約束しておったなぁ。

 もう一度、あの武人と仕合たかったが、それも叶わぬか。

 口惜しい……事……よ。



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