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第七十三話 事前準備と細川の憂鬱

寝落ちしてしまった(汗)


 1560年 十月 美濃 【視点:須藤惣兵衛元直】



 この頃になってくると、京にいた幾人かの将が美濃へと到着し、戦への支度を始めた。

 俺は甲賀衆、伊賀衆に命じて、甲斐からの草――”三つ者”や”歩き巫女”を戦場に指定した場所へと近付けさせない為に索敵させると同時に、庶民や旅人、商人、旅芸人等に扮した草がいる事も考慮し、美濃広範囲での草狩りを開始した。

 多くの人数が必要な事であるが、まぁやらなければならない事なので、織田に元から属していた草や”根来衆”の草経験者にも手伝ってもらいながら、である。

 これがまた面倒なもので、忍ってのは変装する技術に長けているので、見つけるのも一苦労だ。

 なので、慣れている忍達に一任する。

 そして同時に俺と伊賀衆、甲賀衆達で手分けして、美濃各地に分かれて対武田の為の(嫌がらせ)の仕度を始めた。





 更に数日経つと、半兵衛や官兵衛等も美濃へと到着した。


「二人共久しぶり、な気がするな」


「そうですね。……ほぼ毎日顔を合わせていましたからね」


「ですな。――して須藤殿、状況は」


「んー……流石武田。草が多い事多い事。取り敢えずは此方の情報を流さない為に草狩りをしてるよ。それと同時に美濃各地の森林から樹を切り倒して木材を調達させてる。今は三割位か?」


 やる事は簡単だ。

 あの”長篠”と同じ様に馬防柵等を作り、武田の強さの一つである”速さ”を消す。

 その為に堀を作り、馬防柵を立てる。

 それには大量の木材が必要だが、幸い美濃は山国だ。

 木材には事欠かない。


「では養父殿は?」


「安藤殿か。……動きが無い――が、武田と内通しているのは事実だし、情報が余り安藤殿に流れない様にしているよ」


 恐らく、武田は第一に自分達に近い岩村城を落とした後は、木曽川を渡り、岐阜城等ではなく内応を約束している安藤守就が城主を務める北方城へと向かうだろうと俺は考えている。

 他の城を攻め、兵力を浪費するよりも、攻めてくれば開城し、降伏すると書状で約束した北方を得て拠点とするだろうからだ。

 岐阜城と北方城は長良川を隔てているので、馬防柵を建てるならば北方城に向けて――つまりは長良川に向けて建て、北方城より出陣し、川を渡って来た武田軍と相対する。

 勿論、一応の為に逆側にも馬防柵を建てるが、それが俺達が描いた流れだ。


 安藤はその策の為に精々利用させてもらう。

 半兵衛も覚悟を決めたのか、それには反対しなかったし。

 決戦は――近い。





 京 槇島城 【視点:細川与一郎藤孝】



「与一郎! よいちろーう!! おらぬか! 早う来ぬか! 公方の余が呼んでるのだぞ!」


 あぁ、我が儘公方様がまた癇癪でも起こしておいでですか。

 やれやれ、今罷り越しまするよー。


 拙者の名は細川与一郎藤孝。

 今や飛ぶ鳥を落とすどころか、飛ぶ鳥に糞を落とされる程に権威を落としている公方様の幕臣にて、しがない数寄者に御座いまする。

 ここ最近、御自らが書状を出した朝倉・浅井が敗れ、三好は臆病風に吹かれて要請には応えず、本願寺や延暦寺等の金好き坊主共は貧乏公方より豊かな財源を持つ織田に付き……と、己の思うが儘にならない状況にお怒りが怒髪天を突かんばかりの公方様を日々抑えておりまして、私の臓物にも穴が開きそうで……いやぁ、須藤殿より送られてきた薬が真に役立っておりますよ。

 いやいや、真に有難い。須藤殿は神か御使いが如き優しき心をお持ちですなぁー。


 ……おっと、公方様の事を忘れておりましたな。


「はっ此処におりまするよ。……如何なさった?」


「与一郎! 武田は! 武田はいつ動くのだ! あの田舎の虎猫は!」


 はっはっはー、群雄割拠の日ノ本において戦上手と名高き”甲斐の虎”を”田舎の虎猫”とはー、まっこと公方様は豪胆ですなー。

 ……聞かなかった事にしておきましょう。


「武田に御座いまするか? 確か戦支度をしているとは聞き及んでおりまするが……」


 まぁ情報を得たのは織田に仕える草からですが


「いつじゃ! 早う織田と戦をせぬか! 精兵と聞く武田の軍勢なら、織田の弱兵程度、一捻りであろう!」


 ……いやいやいや。

 何を言っておられるのでしょうかこの豪胆(バカ)公方様は。

 織田が持つ大量の鉄砲を使ってしまえば、騎馬軍団など近付く前に死んでしまいましょうに。

 ”雑賀衆”、織田の鉄砲隊と、元より他国より鉄砲の数は天と地程の差があったと言うのに、一大勢力を誇る”根来衆”を家中に引き入れた事で、その数は増すばかり。

 おっと、公方様は鉄砲をご覧にはなった事はありませんでしたなぁ。

 織田殿に連れられて上洛した際も、後方の安全な場所で休んでおられただけでしたしなぁ……。

 しかし、それを言ってしまえば、公方様はまた「ならば此方もそれと同量の鉄砲を作ればよかろう」等と言い出しかねませぬし……ふむ。


「そうですなー。武田の屈強なる兵なれば、尾張の弱兵など、まるで蜘蛛の子を散らすが如く、打ち破れましょうなー」


 ここは同意しておくと致しましょう。



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