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第六十七話 勝三、茶の道を体験する その1

ほのぼの回。

間違った箇所がありましたら、指摘して下さい。

なるべく優しい言葉で、母親が赤子に歌う子守歌の様に優しくお願いします。

 1560年 七月下旬 京 二条御所 【視点:須藤惣兵衛】



 七月も後数日となり、俺は柊殿との婚姻の儀も近付いてきていたが、再び半兵衛や官兵衛と軍議をしたり、奇妙丸様や勝三に兵法を教えたり、松永や信長達と茶を飲んだりといつも通りの日々を過ごしていた。

 朝倉・浅井には横山城に詰めている秀吉達がいるし、摂津には降伏した元荒木配下の連中が詰めている。

 武田は今川や徳川が見張っているし、もし何かあれば美濃に詰めている美濃勢からの報告が上がる筈だ。……若干きな臭い動きがあるけど。

 公方に対しては織田勢が京に詰めている時点で牽制になっているので、問題はない。

 そんな訳で、ここ最近は実に穏やかな日々が流れていた。




 そんなある日、俺がまた松永に茶でも飲もうかと誘われて城の廊下を歩いていると、勝三と鶴千代殿が一緒にいるのが見えた。

 ……随分珍しい組み合わせだな。

 まぁ織田の次代を担う奴等だから仲が良くなるのは悪い事ではないけど。

 少し気になった俺は、二人に声を掛ける事にした。


「勝三、鶴千代殿」


 先に気付いたのは勝三だった。

 笑みを浮かべ、


「お、旦那!」


 と近寄ってくる。……犬みてぇだな。

 隣にいた鶴千代殿も、近寄って来て頭を下げてきた。


「須藤殿。……それと、私の事は鶴千代と呼び捨てに。同じ織田の家臣に御座いましょう?」


「いやぁ、鶴千代殿は信長――殿の御息女の婿。つまりは織田一門に御座いましょう。その様な方をおいそれと呼び捨ては出来ますまい?」


 ニヤニヤ笑いながら鶴千代殿を見る。

 俺のその表情を見て、鶴千代殿は弄られているのを理解したらしく、諦めた様な表情で笑い、


「今日は何方に?」


 と訊ねてきたので、俺は素直に、


「松永殿と茶でも飲もうと思いましてな。なんでも、随分珍しい菓子が手に入ったとか」


 と返答する。

 まぁその菓子が何なのかってのは教えてくれないんだが。


「お二人は何を?」


「おう! 丁度その”茶”の話になってさ! 鶴千代が詳しいって聞いたからさ。聞いてたんだ」


 へぇ、勝三って脳筋だから戦や武器の事しか興味ないと思ってたからビックリだ。

 でもまぁ考えてみれば史実の森長可は茶を嗜んでた筈だし、書も嗜む数寄者としての一面もあったのだから、そう考えれば意外って事でもないのか。


「鶴千代殿は茶をおやりに?」


 俺がそう訊ねると、鶴千代殿は恥ずかしそうにしながら、


「未だ未熟の身ではありますが……」


 いやいや、後に”利休七哲”、それも筆頭として千利休に「文武二道の御大将」とまで称された人間が御謙遜を。

 ……それよりも、だ。


「勝三、お前茶に興味があるのか?」


「おう! 旦那達が良くやってるのは知ってたからさ! どんなんかと思ってよ」


 そんな勝三をジッと見て俺は少し考えてから、聞いてみた。


「――じゃ、今から体験してみるか?」





「――では、拙が茶を点てます故、暫しごゆるりとなされよ」


 と言う事で、俺は勝三、鶴千代殿を伴い、松永のいる茶室へと来た。

 その場には高山右近もおり、此方を見て小さく礼をする。

 俺が参加させても良いかと訊ねると、松永は快く二つ返事で承諾してくれた。

 ホント、此奴は数寄の事になると()()である。


「此度が茶菓子は既知の堺の商人より取り寄せました南蛮菓子、かすていらをご用意させて頂きました」


 ……随分奮発するなぁ。

 南蛮菓子なんて、贅沢も贅沢、大名でさえ中々手に入れる事が出来ない品である。

 そう考えれば、安ければたった数百円で食べれる現代って凄いな。

 この時代での一般的な茶菓子は、干した昆布や焼いた茸等菓子と言えないモノが殆どだ。

 辛うじて麩の焼きというクレープに似た茶菓子がそれに当たるだろうか?

 小麦粉を水で溶いて薄く焼き、芥子の実等を入れ、味噌を塗った生地を巻物状に巻いたモノだ。

 勿論味噌なので、甘いかと言われれば甘くは無い。


「へぇ! 南蛮菓子か!」


「勝三、茶室でそうはしたない真似をするな」


 勝三は美味そうに舌なめずりをしており、それを鶴千代殿が嗜めていた。

 そんな二人を見て、右近殿と松永が声を出して笑った。


「ハハハ。鶴千代殿、そう堅苦しくなさいますな。茶道とはそう畏まって行うモノではありませぬ」


「左様左様。穏やかな”空気”を楽しみ、茶道具を愛で、茶を飲みながら会話に花を咲かせる。……それで良いのですから。ささ、遠慮はいりませぬ。勝三殿、どうぞ食べなされ」


「おう!」


 元気良く返事をして、かすていらを遠慮無く頬張り始める勝三に、


「――勝三、知ってるか? そのかすていら、信長でさえ滅多に食えないんだぜ」


「――ぶっ!!」


 ……あ、汚い。




ブックマーク、評価有難うございます!


ナカヤマジョウ様の『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』も投稿中。

読んで下されば嬉しいです。


https://ncode.syosetu.com/n6524ee/

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