幕間 半兵衛の一日
次話で戦力の補強をします。
感想で指摘頂いてから調べるまで伊賀と甲賀って敵対関係にあると思っていたよ。
「……むぅ」
日の光が部屋に差し込んだ事で眼が覚める。
私の名は竹中半兵衛重治。
織田の”軍監衆”を纏める”軍監”を務めている。
私の朝は遅い。
”軍監衆”の仕事は完全に日が昇った朝四つからである故、私はそれまでは寝ている事が多い。
”軍監衆”の中で一番早いのは須藤殿だ。
日が出る明け六つには起床し、勝三殿や若君様等と鍛錬を行っている事が多いのだ。
”軍監衆”としての頭脳労働があるというのに、その様な朝早くから鍛錬するとは本当に尊敬に値する。
本人の自己評価は余り高くない人であるが、殿や旧臣達からの信頼も厚いのは、彼の人の功績と人柄が認められている故だろう。
先の荒木の件で、須藤殿のことを”私達の伝令役”等と呼ぶような家臣もいなくなった。
あの様な下手をすれば己が首が落ちる様な大胆な策を実行した人間を侮る事など戦国に生きる者ならばいないだろう。
「……さて、と」
朝餉を食べ終わった私は、二条御所へと参内し、”軍監衆”としての仕事をする為の部屋へと向かう。
「お早う御座いますお二方」
既に”軍監衆”の業務を行う為の部屋には”軍監補”である官兵衛殿、そして我等の補佐をしてくれている須藤殿がおり、声を掛けると、「お早う御座います」と声が返ってくる。
基本的に”軍監”の仕事は、分かり易く例えれば、魏呉蜀三国時代における所謂”軍師”の役割である。
軍事における全てを考え、差配するのが我等の役目だ。
同時に、これから起こりうる戦を想定し、策を考えておく事も重要な仕事の一つだ。
私と官兵衛殿、須藤殿の三人で紙に書いた勢力図を見ながら現在の情勢を照らし合わせていく。
現在は朝倉・浅井を退け、荒木を降伏させ、公方を槙島城へと退避させた。
次の敵は阿波の三好か、未だ上洛を目論む武田だろう。
草によれば、今川と武田は絶えず小競り合いを繰り返している。
だが、いつまでもそれを続けさせる訳にもいかない。
場合によっては武田と織田・徳川・今川の連合軍で戦をする事も想定するべきだろう。
そんな事を昼餉の時まで続ける。
昼餉を食べ終えたら、須藤殿に従い、身体を鍛えていく。
須藤殿曰く、私の身体が弱いのは、身体が痩せており、体力が無い故であり、身体を鍛え、良く食べ、良く寝る事である程度は改善されるらしく、美濃調略後旅に出た須藤殿により書き残された書にてそれを指摘されて以降、身体を鍛える事を続けている。
最初は短い距離を歩くだけでもぜいぜいと荒い息を吐いていたが、それを続けていくと、徐々に身体が鍛えられていったのか、より長い距離を、より速い速度で歩く事が出来る様になっていた。
そして摂津調略を終えたここ最近は、須藤殿に剣の振り方を教えて貰っている。
須藤殿曰く、「”軍監”であっても己が身を守る程度は出来なければならない」。
私としても、美濃の家臣であった頃は「武器も振るえぬ痩せ武士」等と嘲笑われていたので、それを悔しく感じていた事も、須藤殿に剣を学ぶ事を決めた理由の一つである。
だが、私にはやはり剣は似合わない。
「……はぁ、はぁ、はぁ」
少し剣を振るうだけでも玉の様な汗が噴き出す。
これでは、戦場で己が身を守るなど出来はしないだろう。
教授してくれている須藤殿に申し訳ないが、そんな事を考えてしまい、剣を下ろしてしまう。
そんな須藤殿は、素振りをする私の横で、森家の次期当主とされている森勝三殿と若君との仕合いを見守っている。
須藤殿も柊殿との婚姻を控えているというのだが、その仕度に追われている様には見えない。
ふと視線を感じると、須藤殿が此方を見ていた。
「――っと、私も続けなければ」
私は再び剣を握り、気合と共に上段から振り下ろした。
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