表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/215

幕間 須藤、土下座する

さて、ここで皆様に提案なのですが、ナカヤマジョウ様と話し合い、タイトルがクロスオーバーだとわかり辛いのではないか、という意見が出ました。


案として、タイトルを同じにして、あちらの作品を

『分枝世界の戦国記譚・蒼』 (青でも可)

此方の作品を

『分枝世界の戦国記譚・黒』 (紅という意見もありました)

としてみないか、という結果になりました。


皆様からの意見が聞きたいです。

宜しければ感想覧にお書き下さると嬉しいです。



 1560年 六月下旬 京 二条御所 【視点:須藤惣兵衛】



「申し訳ございませんでした!」


 軍議を終え、その他諸々の事を終えた俺は、信長が京の本拠としている二条御所の一室で、土下座していた。

 畳に額を擦り付けての、ガチ土下座である。

 もうすぐ三十歳にもなろう人間の、土下座である。

 恐らくは今まで生きてきた中でも一番真剣に謝っているんじゃないかと思う。

 笑いたければ笑え。

 今の俺にプライドなんてないのだ!


「いや、あの、えっと……!」


 柊殿の狼狽する声が聞こえるが、土下座している為、その表情は伺い知れない。

 此の場にいるのは俺、柊殿、奥方様の三人だけなのだが、俺としては土下座以外する事は無い。


「須藤殿。あの時柊の求婚を断ったのは、貴方が策の為、策に柊を巻き込ませない為の行為だったと理解しております」


「……はい」


 奥方様の発言に、ただただ頭を下げる。

 もし、あの時俺が柊殿からの求婚を受け入れていれば、短期間とはいえ柊殿は裏切り者の奥、と周囲から言われて肩身の狭い想いをしただろう……なんて事を考えてもいたのだが、今はただ目の前で俺の事をニコリと笑いながら見ている奥方様が怖いだけだ。

 信長弱っ! なんてもう言えません。

 なんだろう。絶対に勝てないオーラがビンビンなのだ。

 正しく『蛇に睨まれた蛙』状態である。

 まぁ奥方様は”()の娘”だから蛇では無いけど。


「確かに、貴方の策は知られてはならぬもの。ですが、柊は聡い子です。この子には話しても良かったのでは?」


 いやぁ……それは流石に……。


 ……なんて言える状況じゃねぇ!

 そんなこと言ったらどうなる事か!


「や、やはり知る者が数少ない事が重要でありまして、柊殿を通して信長に伝わる可能性も「――はい?」……ナンデモアリマセン」


 と、奥方様がそこで一度佇まいを直したので、俺も正座し直す。

 そして、


「では、貴方に上総介様からの上意を、申し付けます」


 緊張を孕んだ声。

 俺は奥方様の言葉を待つ。


「――『柊を娶れ』。以上です」


 ………………ちょっと、ナニヲイッテルカワカラナイ。


「……はい?」


「策が為に柊からの求婚を退けたのならば、それが終わった今、柊を娶る事に何の障害もないでしょう」


 ……否定は出来ないなぁ。

 何の蟠りも無い事は確かである。


「あの、須藤殿」


 それまでずっと事の成り行きを見ていた柊殿が、ふと声を上げる。

 その表情は、必死そのものだ。


「はい」


「須藤殿、私では妻として至らぬでしょうか?」


 流石にここまで言われて、気付かない程鈍感ではないつもりだ。

 柊殿は、一度は振った俺を、未だに慕ってくれているのだ。


 別に、容姿等に問題がある訳じゃない。

 というか、寧ろ俺には勿体ない程の美人である。

 初めて会った時は幼さを残していたが、ここ数年で『大人の女性』になったと思う。

 それに教育係をしていた関係上柊殿の性格も理解している。

 知的で、冷静、働き者だ。

 それを好意的に見ていないと言えば、嘘になる。

 …………ふぅ。

 俺は溜息を吐き、柊殿に向き合う。


「……柊殿。――”俺”は、こういう人間です。織田の為ならば悪者の誹りも喜んで受け入れましょう。そんな俺の妻ともなれば、苦労する事も多い。それに、俺は役割上前線に出向く事が多い。いつ死ぬかもわかりません。……貴方と共にいる時間も、多いとは言えないでしょう。それでも、ですか?」


 俺の質問に、柊殿は俺を真っすぐ見つめ、まるで睨むかの様な鋭い視線で、


「無論です。私とて武家の女。その様な事、最初から覚悟しております。私は五年の間”須藤惣兵衛”というお方を見てきたのですから」


 そう言い切る。

 こりゃ、完敗かな。

 否定する理由が見つからない。


「……柊殿の思い、考え、相分かり申した。……俺で宜しければ喜んで夫となりましょう」


 何処か嬉しそうだが、それを表情には出すまいと我慢しようと努めている柊殿を見る。


 何時の間にやらやってきたこの世界で俺は歳を重ね、そして今結婚しようとしている。

 それを自覚した今、漸くだが、この世界で生きて、死ぬ覚悟が――出来た気がした。





 ……そう言えば柊殿と俺って十程も年齢が違うし、相手十代だから、現代だったら変な眼で見られただろうなぁ……。

 ……いや、考えない様にしよう。




ブックマーク、感想、評価有難うございます!

この作品がここまで伸びたのは一重に皆様のお陰です!


宜しければブックマーク、評価していただければ幸いです。

ナカヤマジョウ様の『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』も鋭意毎日投稿中。

読んで下されば嬉しいです。


https://ncode.syosetu.com/n6524ee/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ