第六十五話 謀反を終えて
と、言う訳で診断メーカー引き続き、主人公の本名版。
須藤直也が戦国武将だったら第六天魔王とおそれられ、姫だと狂い咲きの毒姫と評判です。そんな須藤直也が住んでる国は安芸です。
……誰が六天魔王だ。
京へと戻った俺達は戻って直ぐに評定の場へと呼ばれた。
俺と松永を、家臣団が左右から見ており、まるで裁判の容疑者の気分だ。
特に、一部の家臣達からは怒気を含んだ眼で睨まれている。
上段の間に座る信長が、呆れた様な、感心した様な複雑な表情で俺達を見る。
「で? つまり手前等は元々こうするつもりで荒木の方に降ったと?」
それを聞いて、松永が唐突に笑う。
「降った? ハッハッハ! ――これは異なことを。拙等はただ手勢を率いて荒木殿を説得しに参っただけ。拙等は一言も『離反する』等とは申しておりません」
それを聞いて、評定がざわつく。
家臣達の中からは「嘘を吐け!」やら「謀反人共が!」やら「詭弁を!」等と叫ぶ声が聞こえる。
だが、松永は一切それを気にしない。
「……報告を続けろ」
「――はっ。……拙と須藤殿は、荒木の動きがおかしい事を知り、間者を差し向け、離反する事を事前に掴んでおりました。そこで、拙等は策を弄しました」
松永が俺の方をチラリと見るが、俺は少しだけ頷くだけで続きを促す。
「戦は、兵を失わずに勝つ事が最も大事な事。ですが、実際に事を構えてしまえばそれは不可能。多少なりとも被害が出ましょう。ですが、織田は槙島城の公方、越前の朝倉、阿波の三好、武田の甲斐とこれからも連戦が続く事は間違いなき事。そこで、須藤殿が弄したのは、拙等の"悪名・悪評”を利用する事でした」
それを聞いて、家臣達の一部がバツが悪そうな表情を浮かべる。
まぁ俺等としてはそれを利用したから、逆にナイスと言いたいのだが。
摂津は阿波の三好にしても、京に入る為の玄関口となる場所だ。
それを『裏切り者』の誹りを受ける程度で抑える事が出来るのだから、全然問題無しだ。
まぁそれを言うとまた睨まれそうなので黙っておこう。
「拙は義輝公を弑した事で悪評が流れておる事を知っておりますし、須藤殿も”二兵衛の伝令”等と呼ばれておる事を知って、それを利用する事を考え申した。……つまりは『離反すると見せかけて、内部から敵を崩し降伏させる』事」
そこまで言ってから、ニヤリと笑う。
「荒木勢へと降り、士気高揚の名目で兵糧を浪費させ、織田勢へと離反しそうな者達に会い、織田方に寝返る事を唆す。……そして、『騙すのならば先ずは味方から』と申します通り、この策を実行する当たり、荒木勢に拙等の離反が信じられる様に、事実を知る者を少なくする必要がありました」
松永は、息子である久通を横目で見る。
「この策は拙等から須藤殿の部下の草を通し、我が倅の久通に荒木勢の情報を渡し、そして久通は評定で拙等の裏切りを報告する一方で、半兵衛殿と官兵衛殿へと拙等が書いた報告書を渡す。これが、味方を誰一人として死なせず、荒木の謀反を治める為に拙等の行った全てに御座います」
そう言ってもう一度平伏した松永を真似して、俺も平伏する。
「……やれやれ」
暫くして、信長が呆れた様な溜息を吐いた。
「……せめて俺には伝えてくれなかったのかねぇ」
「大将が慌てていれば、家臣達も『これは事実だ』と感じ取るモノ。故に、殿や若君には知らせぬ事にしたのですよ」
松永の言葉に、納得したのか、再度溜息を零しながらも、首肯する。
「……成程な。……ったく。――つー訳だ! 確かに家中に混乱を招いた事は褒められた事では無いが、損害無く荒木勢を降伏させる事が出来たのは此奴等のお陰だ。よって此度の件はこれで終いだ。それでも尚罰が必要だと思う奴がいるのなら、俺に直接言いに来い! 良いな!」
「「「「――はっ!!」」」」
信長が出て行った事で、場の空気が緩む。
……やれやれ、漸く一区切りか。
あー怖かった!
敵の中に潜入して演技するなんて、もう御免だな。
ま、次からは警戒されるだろうから多分二度と使えないこれっきりの策だろうけど。
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