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第五十八話 謀反人達の動き

総合評価4000超え、有難うございます!

感謝の言葉もありません!


須藤視点。

相変わらずほのぼのなんて縁遠いシリアスばかりの作品です。

 1560年 五月中旬 畿内 大和 【視点:須藤惣兵衛】



 朝倉・浅井攻めから京へと帰還した数日後、俺は松永のいる大和へとやって来た。

 松永は俺の姿を見ると、意地悪そうにニヤリと笑う。


「……おぉ、須藤殿。良くぞ御無事で。……そう言えば小谷城の戦は随分と苛烈な手段を取ったようで。これで須藤殿も拙等(嫌われ者)の仲間入り、ですかなァ?」


「……嬉しそうだなぁ」


 呆れながらそう返すが、勿論そんな事でどうにかなる松永弾正では無い。


「で、草が知らせてくれたけど……状況は?」


「えぇ。……既に荒木村重の下に使いを送り、向こうからは『歓迎する』との返答を得ております。……此方も兵の支度は済んでおりまする。何時でも、行けますぞ」


 これからやることが楽しみでならないのだろう。

 その笑みが先程よりも更に濃くなる。

 そんな同行者に、若干引きながらも、


「じゃ、行くとしようか」


 俺と松永は六百の手勢を率い、摂津へと向かったのだった。





 1560年 五月中旬 摂津 伊丹城 



 伊丹城は、史実においては荒木村重によって改装され、有岡城と名を変えた堅城であり、かのポルトガルの宣教師、ルイス・フロイスが「甚だ壮大にして見事なる城」と称した程の城だ。

 南北に細長く、信長等が”有岡城の戦い”で攻めてきた際には、一年もの間、籠城を成功させている。

 その評定の間で、俺と松永は、伊丹城城主荒木村重と邂逅した……のだが、


「お初にお眼に掛かる。松永弾正少弼に御座る。此度我等を受け入れてくれた事、真に忝く」


「同じく、須藤惣兵衛に御座いまする」


「よ、良くぞ来てくれた! 某が荒木村重である! まさか松永殿程のお人が御味方してくれるとは! これよりは手を携え、公方様に忠義を尽くして織田と戦おうぞ!!」


 立ち上がり、嬉しそうな様子で此方の手をがっちりと握ってくる荒木には、織田に反逆した城主としたの威厳があるとは思えなかった。




 それから七日程で、荒木は俺や松永をえらく高く買っているらしく、当人が城主であるのだが、様々な事を訊ねてくる様になり、俺達は織田に居た時とそう変わらず”相談役”となっており、周囲からも一定数の信頼を得る様になった。

 例えば、


「うむ、兵の士気が上がらぬ。お二方、何か良い手は無いか?」


 という問いには、


「士気が上がらぬならば、飯を豪勢にし、酒を振舞い、祭りが如くなされ。戦はまだ遠い。飯が豪勢になり、それが続けば、兵の士気も高まりましょう。いっそのこと、周囲の城にも行わせ、どの城が一番豪勢かを競わせれば宜しい」


 と答え、実際にそれを行わせた。

 断る者にはそれ相応の罰を与えるとして、周囲の城に詰める守将達にも同じく豪勢に振舞わせた。

 更に、


「城の警備の兵が足りない」


 と言われれば、俺達の兵で補い、城内の警備をさせ、


「織田の情報が欲しい」


 と言われれば、甲賀の者に調べさせ、報告した。

 それをやっていく内、いつの間にやら荒木村重からの信頼は厚くなり、”軍監殿”等と周囲の者からは言われる様になった。

 ……ま、いいか。

 信頼してくれるのは、有難いからな。





 そして、須藤・松永の謀反に乗じて動く者がいた。

 甲斐の虎、武田晴信である。

 義昭の命に応じて上洛しようとしていた武田は、今川からの妨害を受けて上洛する事が出来ずにいた。

 だが、上洛を諦めた訳では無かった。


「……ほぅ? 松永と”軍監”の一人が織田を裏切りおったか。それは重畳な事よ。……では、此方も動くとするかな」


三つ目よりの報告を聞き、晴信は髭を扱きながら笑う。


「……如何なさいますか?」


「この”軍監”、それ相応の活躍がありながら、家も無く、家臣も与えられぬ故に裏切ったのだろう? なら、織田家中においてそれと同じ状況の者に、此方に靡くようにすれば良い。そうさな……例えば――」


 裏切りそうな武将の名前を出し、武田晴信は虎の如き獰猛な笑みを浮かべて笑った。




「……『武田につけ。でなければ上洛の折、手始めにそなた等の国の悉くを焼き払い、民草は蹂躙されるだろう。此方についた暁には、美濃一国を約束せん』……か」


 そして、武田が選んだ者。

 その一人が、西美濃三人衆が一人、安藤守就だった。

 須藤が織田に帰参した際、間者ではないかと疑い、以降も須藤の事を余り良く思っておらず、朝倉・浅井攻めの際にも他の三人衆と美濃勢として戦い、須藤の小谷焼き討ちに際しては人道的ではないと非難した人物だ。

 安藤は、武田より送られてきた書状を前に、家臣団と、それを受けるか否か話し合っていた。


「武田がもし上洛すれば、”最強の軍”と名高き武田の兵に、尾張の弱兵が勝てるかと言えばわからぬし、一番に狙われるのは文の通り美濃やもしれぬ」


「で、あるならば武田に付く方が宜しいのでは?」


「いや、流れは織田にある。それに、裏切れば浅井と同じ末路になるやもしれぬぞ」


「だが、殿の稲葉山城の包囲があったが故に上手くいった”稲葉山城の戦い”がありながら、それ以降織田からの扱いが良くなったとは言えぬ。……飼い殺しとなるだけではないのか?」


 安藤の言葉に、家臣団があーでもない、こーでもないと言い合う。

 それを、安藤は手を叩くことで止め、


「……ふん、両方を上手く渡れば良い事よ。織田が優勢な今は織田に。武田が上洛し、美濃へと迫ったのなら武田に降れば良い」


 と笑い、紙と筆を取り、さらさらと何かを書く。

 そしてそれを、家臣の一人に手渡し、


「武田の使者には『攻めてきた際には、城を明け渡し、其方に御味方する事は約束する』と伝えよ」


「――はっ!」


「……さて、情勢はどう動くか。高見の見物といこうか」


 安藤は家臣達を見回し、自信満々な笑みを浮かべた。




 それを、小姓に扮した甲賀の手の者が見ているとも知らずに。



安藤、ゴメンね。

でもいいよね?

後々野心の疑いあり、って放逐されるんだし。


ブックマーク、評価宜しくお願いします!

この作品とクロスしております、ナカヤマジョウ様の『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』も投稿されておりますので、其方もどうぞお読みください。


http://ncode.syosetu.com/n6524ee/

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