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第五十五話 久政の処遇と京帰還

さて、ここから主人公が動き出しますよ~。



 1560年 五月上旬 近江 横山城 



 小谷城から帰還して直ぐ、久政は信長の前に引き出された。

 周囲は織田の将達が刀を差して眼を光らせている。

 その久政はというと、ただ静かに信長へと視線を向けていた。


「さて、浅井久政よ。……手前はどうしたい?」


 信長の問いに、久政は平伏した。


「……我が命と引き換えに、我が妻や家臣達の命はどうか助けて頂きたく」


 それは、久政にとっての最期の役目なのだろう。

 死ぬのは自分だけで良い、それが大将の役目だ、と考えているのだろう。

 敗将の奥方などは、勝利者の大名の側室として引き取られたり、家臣へと下賜される事もある。

 侍女などはどういった待遇になるのかは分からないが、城で勤めている侍女は、家臣達の娘であったりする場合が多いので、やはりそれ相応の待遇になる。


 此方としても、既に趨勢は決まっているし、小谷城は燃えてしまったので、断る理由も無い。


「……相分かった。サル!」


「――はっ!」


 名を呼ばれた秀吉が、明朗に返事を返す。


「手前には横山城の守りを任せる。それと同時に久政殿の件も任せる」


「――ははぁ!!」


「久政殿を部屋へと案内してやれ」


 信長が小姓に命じ、久政は小姓に連れられて退室していった。

 これで、久政の顔を見る事も無いだろう。


「……でだ、問題はその奥やら侍女やら家臣の処遇なんだが……」


 信長の視線は半兵衛の方に向く。


「……奥方は諸将の中で奥方として引き取りたいという者がおれば、その者に与えれば宜しいでしょう。侍女達にしてもそれは同様。……ですが、浅井の将兵は一ヵ所に纏めるのは不安ですな」


 例えばである。

 場合によっては他勢力……つまりは本願寺や延暦寺等の織田傘下の勢力に送る事も考えられるだろうが、一ヵ所に集まって、浅井家の再興など考えられたらたまったもんじゃない。

 浅井家の現当主である長政は朝倉の越前へと逃げて生き延びているのだ。

 六角から独立した時の様に、武勇に優れる長政を担ぎ上げ、浅井家再興を計るという事もある。

 故に、家臣団はバラけさせるしかないだろう。

 そこら辺は半兵衛や官兵衛、そして重鎮である柴田殿や丹羽殿の役目なので、俺は与り知らぬところだ。

 あくまでも俺は軍事面を担当している、いわば中間管理職なのだ。

 重要な事柄を決めるのは信長や重鎮達、”軍監”の中でもトップの二人の役割である。


 結果として、浅井の家臣達は与力の少ない家臣に与力として付ける事になり、評定は終わった。

 そして翌日、横山城に秀吉と幾人かの将を置き、信長は京へと戻る為に横山城を出立した。




 1560年 五月中旬 京


 数日後、織田軍は何事も無く京へと到着した。

 伝令により、浅井久政が切腹した事が伝えられ、これにより、一先ず朝倉・浅井との戦は織田の勝利となった。

 これにより、更に情勢は織田方へと傾く事となった。

 京で籠城していた足利義昭はこの結果を聞き、幕府奉行衆である真木島昭光を頼り、二条御所から槇島城へと逃げる様に移った。

 まだ荒木の謀反や、阿波にいる三好衆や六角等に対応しなければならないが、一先ずは休息であり、皆が皆身体を休め、英気を養っていた。

 だが、時代はそれを望まない。

 京に帰還してから数日後、織田軍に激震が走る。





「さて、準備は宜しいか?」


「……あぁ。勿論だ」


 二人の男が、この機を待っていたとばかりに動き出す。


「――では、裏切りの華を咲かせる事と致しましょう」


 大和の有力者として織田家家中に認められていた松永弾正少弼久秀。

 そして織田家”軍監衆”須藤惣兵衛。

 両名の謀反の報せによって。



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