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幕間 横山城帰還

前話、前々話の主人公の行いについて、賛否あると思いますが、このままで行かせて下さい。

申し訳ありません。


あと、主人公は転生主人公ですが、物事の考え方としては、戦国時代のそれに近くなっています。

十年以上戦国時代で生きてますので、慣れたと言うべきか、慣れてしまった、と言うことで。

 小谷の焼き討ちを終えた俺が横山城へと帰っている最中、”雑賀衆”の一人が俺に近寄ってくる。


「……須藤様、仲間より報告が。……『仕度その悉くを終えたり』と」


「そうか。……後は合図を待てと伝えろ」


 俺がそう言うと、そいつは頭を下げて撤退する部隊の中に消えていく。

 ……やっぱ優秀だなぁ……()()は。

 ”雑賀衆”に紛れさせておいて良かった。


 そう、俺が石山本願寺勢の村を足利軍に扮して襲った際も、浅井本陣を奇襲した際も、事前に忍に地形等を調べさせておいたからこそ出来た事である。

 因みに、俺が甲賀衆を雇用している事は、信長と松永などの数人しか知らないし、信長からは”甲賀衆”は俺に一任すると言われているので、遠慮なく使わせて貰っている。

 奴等を雇用する事になったのは、織田軍に帰参して直ぐ後の事だった。





 三好征伐を終え、織田軍に帰参した俺は、”雑賀衆”の有力者である鈴木重秀と五人程度の部下と共に、旅人に扮してある場所へと向かっていた。


「……で? 旦那、これからどこ行こうとしてるんです?」


 重秀が聞いてきたので、端的に答えてやる。


「ん? ……おう、近江甲賀(こうか)だ」


「甲賀? ……って! 敵陣真っただ中じゃねぇか!?」


 俺の言葉に、重秀が眼を見開いて驚く。

 ……はて? そんなに驚くような事か?

 確かに、観音寺で織田に負けた六角親子は、甲賀郡の石部城へと逃れて織田への徹底抗戦をしている。


「でもまぁ……今の俺達は織田の将兵じゃなくて、ただの”旅人”だぜ?」


「……旦那がそう言うんなら従うだけだけどよぉ」


 目的地までは少しばかり遠い。

 ゆっくりと行くとしよう。




 さて、甲賀という名前で、俺の目的地は戦国時代の知識がある人間ならばわかるだろう。

 そう、甲賀忍者だ。

 忍者と言えば、忍術を使い、隠里に住むイメージがあるが、実際には違ったりするもので、甲賀忍者は六角氏の傘下にありながらも、自治組織である”惣”を組織しており、郡に関わること全てを、合議制によって運営していた。

 平時には農業をしており、一部は行商を行いながら各地の情報を集め、戦では情報収集や工作活動をする事で有名である。

 そんな甲賀忍者は、趨勢を見るのに長けており、史実では属する家を六角、織田、豊臣、徳川と転々と変えており、生き残る事に長けた者達だと言える。


 そして、俺の目的は甲賀忍者の勧誘である。

 上杉には軒猿、武田には三つ者や歩き巫女、北条の風魔、徳川の服部配下の伊賀衆と、天下に名を馳せる勢力には高名な忍集団がついているものだ。

 だが、織田にはそれがいない。

 確かに、現状甲賀は六角に属しているが、趨勢を見れば、此方の味方となってくれるかもしれない。

 甲賀の忍者だって、滅びたくはないだろうからな。





 甲賀にある山深い農村地区を”雑賀衆”を引き連れて歩く。

 ここら辺は既に甲賀忍者のテリトリーのはずで――


「旦那、気付いているか?」


 鈴木重秀が、俺に顔を寄せ、囁いてくる。


「……あぁ」


 そう訊ねてくる重秀に、俺は首肯した。

 武士としての危機察知能力ともいうべきか、首の後ろがピリピリとするし、視線を感じるのだ。

 恐らくは、既に包囲されている。

 俺は重秀に頷くと、道の途中であるも、木々の生い茂る山の中へと入っていく。

 そして少し開けた場所まで来て、


「――某は須藤惣兵衛! 織田家家臣である! 此方は敵対するつもりは無い! どうか姿を見せてはくれないだろうか?」


 そう叫ぶと、木々の間から、いつからそこにいたのか十数人の男女が現れた。

 ”雑賀衆”が身体を強張らせるが、俺はそれを制する。

 その中で、一人の壮年の男が前に出る。


「須藤惣兵衛……織田の軍監が甲賀の里に何の用か?」


 ……ふぅ、先ずはファーストコンタクト成功、かな?

 というか、しっかりと俺の事を調べられてるし。

 いや、彼等にとってはそれが生命線にもなるのだから、周囲の有力な勢力の事を調べるのは当然か。

 俺は頭を下げる。


「急な来訪で驚かせた事、真に申し訳無く。……此度は某に力を貸して頂きたく、此処に参った次第」


 史実では、甲賀忍者達は六角が劣勢となると、織田に接近し、仕えているのだ。

 六角が追われ、織田が勢力を伸ばしているこの状況で勧誘する事は、悪いタイミングでは無い筈だ。


「……六角はこれより、織田によって更に窮地に追い込まれましょう。甲賀は一つの家に忠義を尽くす者達だと理解しております。しかし、既に窮地の六角に仕え、共に滅びるなど勿体ない。織田は、働きに応じ、正式に家臣の一員として迎える用意が御座います。どうか、織田に力を貸して頂けないでしょうか?」


「……」


 何を考えているか分からないが、とりあえず言いたいことは言った。

 後は、その時勢を見る確かな眼が、どう判断するかだ。


「……今すぐに返答せよ、とは言いませぬ。某等は此処より近隣の宿に二日程宿泊致しまする故、もし此方について頂けるのならば、返答を頂きたく。……では」


 俺はそう言って頭を下げると、その場を辞した。




 結果として、俺達が出立する直前に、使いの者がやって来て、織田に仕える事を約束してくれた。

 そして、”多羅尾光俊”と名乗った使いの者を連れて京へと戻った俺は、秘密裏に信長と面会させ、”甲賀衆”を織田傘下とする事に成功した。

 信長も、機嫌良さそうだった。


 ”甲賀衆”の事を一任された俺は、直ぐに上杉や武田、北条、朝倉、浅井、三好、足利、毛利等の織田家にとっての脅威となるであろう各勢力の情報収集の命令を与え、その一部を繋ぎとして”雑賀衆”に編入させた。

 書面上は”雑賀衆”の一員となっているが、まぁ余り関係ない。

 どうせ”甲賀衆”を他国から秘密にする為の処置だし、基本的には”甲賀の里”でこれまで通りの生活をする様にと伝えてあるし、精密に調べなければ、六角氏に仕えてゲリラ戦法をしていると見える様にしている。

 そして朝倉・浅井攻めの前に更に幾つかの命令を出して、裏で動かしていたのである。




ブックマーク、評価、感想有り難う御座います!

これからも頑張っていきますので、宜しくお願いします!

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