第五十二話 浅井への対処
慌てて書いたので、間違いやら誤字脱字があるかも……。
”姉川の戦い”で、朝倉・浅井を破った織田・徳川連合軍は、敗走する朝倉・浅井を追わず、降伏させた横山城に入城し、これからの事を決める軍議を行う事になった。
「……さて、これからどうするべきか」
信長が、家臣達を見回し、”軍監衆”が座る一角へと視線を向ける。
「さて、知恵者共はどう考える?」
「――はい。浅井が居城小谷城は、特に堅城として有名な山城。容易く落とせるとは限りません。なれば、ここ横山城に家臣を置き、一度退却して軍を整えるが宜しいかと」
信長の問いに、”軍監衆”を代表して、半兵衛が答える。
更に、”軍監補”である官兵衛も、それに同意する。
「……摂津の荒木村重が、謀反を起こしたとの知らせもあります。更には阿波の三好等も動きを見せておりますれば、ここは京に退却し、それ等勢力を牽制すべきだと愚考します」
確かに、京に残して来た家臣達から、織田の本隊が近江にいるからか、三好や六角の動きが大きくなってきているらしい、という報告が上がってきていた。
一応は松永久秀や、家臣団、石山本願寺や比叡山延暦寺の一向衆等が眼を光らせ、牽制しているが、問題は摂津伊丹城城主である荒木村重である。
上洛戦において信長に従った池田勝正の家臣であったが、信長が朝倉・浅井を相手にしている間に、一族である池田知正と共に、勝正を居城より追放し、三好衆と手を組んだのである。
荒木村重は、将軍足利義昭と懇意であったと言われており、更には国人衆が信長の支配を受け入れなかったことから、将軍と手を組んだ三好衆に降ったのだろう。
史実では、義昭と三好衆が手を組むなど考えられないが、それだけこの世界の織田勢が、義昭――将軍家にとって邪魔なのだ。
兄の仇と手を組む程には。
だが、この先の歴史を知っている俺としては、どうしても看過出来ない事がある。
此の儘朝倉・浅井を放置すれば、恐らく起きてしまうのだ。
”志賀の陣”とも呼ばれる戦が。
摂津の荒木村重、粟野三好三人衆などの所謂摂津戦線に織田勢が釘付けになっている間に、越前朝倉義景、浅井長政、比叡山延暦寺による琵琶湖西岸を南下を切っ掛けとして始まる戦だ。
恐らく、ここで史実通りに織田本軍が撤退してしまえば、見張りとして琵琶湖西岸にある宇佐山城が戦場となる。
ここに配置されるのは――三左殿だ。
三左殿――森可成は、この”宇佐山城の戦い”において手勢千人と共に討死してしまう。
家臣である各務元正や肥田直勝が中心となって抗戦し、落城は免れるも、この三左殿の討死によって怒った信長は、朝倉・浅井勢を援助した比叡山延暦寺を焼き討ちにしたとまで言われているのだ。
ここで三左殿を失えば、どうなるかなんてわかったもんじゃない。
俺も三左殿には良くして貰っているのだ。
失うなんて考えたくもない。
それに――
まだ荒木村重は動かない。
三好衆も京に残して来た家臣達や石山本願寺、そしてこの世界では味方となっている比叡山延暦寺が牽制してくれている。
まだ暫くは時間はある。
前にいる半兵衛と官兵衛の顔を見ると、両名とも、小さく頷いた。
なら――
「――あいや待たれい!!」
俺も仕事をするとしよう。
【視点:織田信長】
「――あいや待たれい!!」
軍議の場に響いたその声に、俺も勿論家臣達もその声の主を見る。
”軍監衆”の後方――目立たぬ場所に座っていた須藤であった。
(ほぉ……珍しい事もあるモンだ)
近頃の須藤は、”軍監衆”の一人として、あくまでも半兵衛や官兵衛の補助としての役割に徹しており、こういった場で発言する事は少なくなっていた。
それが、家臣達の中で俺と須藤の仲が悪くなったという噂の一因にもなっているのだが、須藤はそれを気にするでもない。
寧ろ、先刻の八相山での戦においては、差配を取り、勝利に導いたにも関わらず、論功は一番低くて良いと言ってきた。
最近になって織田家臣となった連中からは、八相山での戦も、半兵衛や官兵衛の策を伝えただけと捉えられており、『二兵衛の伝令』と陰で呼ばれているらしい。
……全く以て見る目がない連中だ。
確かに、奴の仕事は味方にも知られない様な奇襲や裏方が多いのだが。
「……須藤か。……どうした」
「――はっ! 恐れながら、進言させて頂きまする」
そう言うと、須藤は俺の目の前まで歩いてきて、平伏する。
「此度が戦の勢い。これを利用しない手は御座いません。此度は勝利致しましたが、浅井も朝倉も、未だその兵力は健在。今摂津に向かえば、必ずや挙兵し、織田にとっての脅威となりましょう!」
須藤の発言は、上官である半兵衛や官兵衛の意見とは全く正反対の意見だ。
俺はチラリと”二兵衛”の顔を一瞥する。
しかし、須藤の発言に驚きも、怒りもせず、両名とも真っすぐ俺の方を見てきやがる。
……こいつ等、わかっててやってやがるな。
”二兵衛”は、部下である須藤の身勝手な発言を、本来ならば諫めるべき立場なのだ。
だが、それをしないと言う事は、事前に軍議でもして、決めていたのだろう。
「うむ。……して、須藤。手前は何を考えていやがる?」
「――はっ! されば……小谷城とその城下の、その悉くを焼き払いましょう」
その言葉を待っていたとばかりに、顔を上げた須藤の顔には、あの松永弾正とそっくりの笑みが浮かんでいた。
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この作品とクロスしております、ナカヤマジョウ様の『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』も投稿されております。
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