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第四話 歴史を変える邂逅

主人公登場回

 尾張国 清洲城 城下町


 信長は幼い頃より城下町に繰り出しては町民達と遊んでいたが為”うつけ者”と称されていた。

 今でこそ尾張統一を成し、大名となっているが、時折幼い頃と同じ様に城下に繰り出しては気分転換をしている。

 評定を終えた信長は庶民が着るようなモノへと着替え、城下町を歩いていた。


「……」


 だが、信長の顔は険しいモノであった。

 勿論、頭の中ではどう今川に対処するかを考えていた。

 臣下達の前では冷静に、さも『今川が何するものぞ』とでも言うかの如き態度をとっていた信長であるが、彼とて今川義元との戦力差を理解していない訳では無い。

 寧ろ国主として誰よりも理解していた。

 そんな状況で周囲が見える訳も無く、


「――痛ぇなぁ、おい!」


 城下町をまるで我が物顔で肩を切らせて歩いていたごろつき達の先頭とぶつかってしまうのも仕方のない事であった。


「あぁ、すまんな」


 謝る信長であるが、その程度で許すごろつき共ではない。

 信長が考え事をしており、一瞥して頭を少し下げる位で謝ったのが、尚更彼等を怒らせた。


「すまんじゃ済まねぇんだよテメェ!」


「ぶつかって来たのはそっちだってのに誠意ってのがねぇのか?」


 今にも掴み掛らんばかりに罵倒し、信長の周囲を囲む十人のごろつき達。


(やれやれ、面倒だな)


 仕方なしに、睨み付けると、その視線の鋭さに一瞬慄いたごろつき達だが、直に気を取り直して殴りかかろうとして、


「――はい、そこでストップだ」


 ガキン、と音を立てて、信長を正面から殴ろうとしていたごろつきの拳が何者かによって遮られた。







 尾張国 清洲城 城下町 《視点:須藤直也》



 俺が清洲の城下町を歩いていると、ごろつきに絡まれた男がいた。

 ……どう見ても庶民とは雰囲気が違うのがわかる。

 着ている着物は庶民と同じものだし、刀は持ってないが、ごろつき達を慄かせた視線の鋭さと言い、精練された所作と言い……多分、間違いない。

 ――戦国三英傑の一人、織田信長だろう。

 信長は幼い頃から城下町を町民に扮して歩き、町の若者と戯れていたって逸話もあるしな。

 俺は近付きながら刀を鞘ごと腰から抜き、


「――はい、そこでストップだ」


 殴りかかろうとしていたごろつきの拳を刀の柄で受け止めた。

 ……ついつい英語が出てしまった。

 ま、良いか。


「なんだテメェ!!」


「やんのか!!」


 ごろつきが威嚇してくる。

 やれやれ、血気盛んなのは結構だが、一応相手はこの国の国主だぞ?

 ま、知らないで突っかかったんだろうけど。

 それを言う義理も無い。


「いやなに、たった一人にそんな大人数で取り囲むなんて酷いもんだと思ってね」


「ならテメェからだ!!」


「おう!」


 やれやれ、一応助けたつもりなんだがねぇ。

 殴りかかって来た男の顔面に鞘ごと刀を叩きつける。

 更に後ろから殴りかかって来たごろつきを足払いして転ばせて腹を鞘で突いた。


「――アガッ!」


「ゴッ!?」


 そして更に後ろにいた男を――


「――フンっ!!」


「――ぐあっ!!」


 先程まで成り行きを見守っていた織田信長がぶん殴った。


「悪いな。巻き込んで」


「いや、俺が自分から関わったんだ。気にしないでくれ。それより――」


 そう言って俺は刀を抜き、投げ渡す。

 信長はそれを器用に受け取り、


「――ん? こりゃあそれなりの業物じゃねぇの」


 おや、師匠から譲渡された(モン)だけど、それなりの刀だったのか。


「素手じゃなんだ。使ってくれ」


「相済まぬ」


 俺は鞘を、信長は刀を持ち、ごろつき達に向かって行った。



 俺達の戦いはこれからだ!




 なんてことにはならず、俺と信長はごろつき共を気絶させた後、そこから逃げる様にして路地裏へと入った。


「刀、返すぞ」


 信長から返された刀を鞘に仕舞い、俺はニコリと笑い、


「いえ、いらぬ助太刀でしたでしょう? ――織田三郎信長殿?」


 俺の言葉を聞き、信長は驚いた顔を一瞬浮かべるが、直に真顔にした。


「……何故俺が織田三郎信長だと?」


 おぉう、信長さんの真顔怖ッ! 迫力あるな。流石あの”織田信長”。

 まぁ警戒するのもわかるし……さて、どう説明しようかね。


「庶民や浮浪者があの様な剣呑な視線等致しませぬ。……それに加え、所作が垢抜けておる様に見受けられました。如何に”うつけ殿”であろうと、武家の嫡子なればそれ相応に学を学び、所作を身につけましょう。更に着物の上からでも、筋の付き方は農民と武士のそれでは違いが出ます。それに……町人に扮し、町を歩くなど”尾張の大うつけ殿”位しかおりませぬ」


「フ、フフフ、そうか。良く聞こえる耳と見える眼を持っておるのだな」


 さも心底面白い、と笑う信長だが、俺を見る眼は鋭い。

 まるで品定めしているかの様な視線だった。


「いや何、耳を澄ませば微かな音でも聞こえましょうし、眩しき光は遠くからでも煌々と輝いて見えましょう。それが今、尾張を統一せしめた噂のお方ともなれば、その音は大きく響き、その光は太陽の如く、に御座います」


 まぁつまりは『アンタは有名なんだから噂になってるよ。少し噂話とかを聞けばその容姿がわかるから、見る人間が見ればわかるよ』と言ってるわけだ。

 信長はそれを聞いて一しきり笑うと、ニヤリと笑い、


「気に入ったぜ。……手前(テメェ)、名は?」


「……須藤。須藤直也(すどうなおや)と申します」


 どうやら、六天魔王に気に入られたらしい。

 恐ろしいったらありゃしない。


 つーか、信長口悪っ!



読んで下さり有難う御座います!

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