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第三十八話 史実より早い邂逅

いつの間にやらブックマーク1200、総合ポイント3000越えです。

皆様本当に有難うございます。


 1559年 一月 京 本國寺 【視点:須藤惣兵衛直也】



 本國寺の変は護衛として滞在していた明智光秀や幕府陪臣である細川藤孝、池田勝正、松永と共に織田に降っていた三好義継の援軍により、俺達が到着するよりも早く決着がついた。

 本國寺の防御の低さを痛感した信長は、各地より技術者を呼び寄せ、二条御所のあった場所に、村井貞勝と島田秀満の二人を奉行に、七十日で建築、義昭は四月に二条御所に入った。




 1559年 三月下旬 



 二条御所建築の後も、暫く京に滞在していた信長の下に、とある人物が接触してきた。

 その人物の名前は小寺官兵衛。

 何を隠そう後世において半兵衛と共に”二兵衛”、”両兵衛”と呼ばれた生涯負けなしの軍師”黒田官兵衛(くろだかんべえ)孝高(よしたか)”その人である。

 信長は三好を撤退させた際の拠点とした大津の東福寺で、官兵衛と相対した。

 その席には半兵衛、そして何故か俺が同席していた。

 いや、確かに官兵衛を推薦したのは俺だけどさ。

 ……何故こうなった?


「お初にお目に掛かる上総介殿、小寺家家老、小寺官兵衛に御座います」


 備前国、播磨国、美作国を領地としていた赤松家の重臣である小寺家、その家臣である黒田家に生まれた黒田官兵衛は、先見の明があることから若いながらも小寺家の中で要職を任されており、小寺性を名乗ることを許される程に重用されていた。


 主家である赤松義祐には敵が多く、義祐の分家であり、敵対関係にあった赤松政秀が、昨年義昭に援助を求めた事で、義昭の命を受けた信長が (仕方なく)派遣した池田勝正や、三好と組み、播磨東部に台頭していた別所安治などが義祐を攻めるも、小寺家と結び、官兵衛とその父である職隆(まさたか)により赤松政秀が敗北、それによって政秀が降伏した事で難を逃れた。


 説明が長くなってしまったが、何を言いたいかというと、それまでは織田家と対立する立場であるはずなのだが、どういう事だ?

 織田も上洛しているとはいえ、天下に王手をかけた状態ではなく、官兵衛が接触してくる理由がわからないのだが……。


 官兵衛が信長と接触し、家臣となるのは近江の浅井を破り、信長が秀吉を中国進出で派遣する時だ。

 ”長篠の戦い”で武田を破った信長を、その前から評価していた官兵衛が、天下の趨勢は決まったと主君である小寺政職に織田への臣従を勧めるのだが、間違ってもこの様なタイミングじゃない。

 やはり、俺が動いた事で歴史も変わっているのだろうか?

 バタフライエフェクトの様に、小さな事がやがて大きな変化を齎す事もある。

 この世界は、やはり史実とは大きく異なり始めているのだろうか?


「――へぇ、気に入ったぜ」


 おっと、余りにも暇だったから現実逃避してしまった。

 官兵衛曰く、時勢は今織田にあり、織田の傘下に入る為に来たのだとか。

 毛利につくか、織田に付くかを家中で言い争った結果、織田につくことに決めたらしい。

 うん、そりゃ良いんけどさ、何故赤松義祐(主君)ではなくて官兵衛だけが来てるんだ?

 いや、史実でも先に官兵衛が信長に謁見してるんだけどさ。


 どうやら、官兵衛は幾つかの会話の中で信長に気に入られた様だ。

 気をつけろよ~、そいつ、気に入った人間は何が何でも手に入れる奴だぞ。

 そんな官兵衛が、ふと、此方――俺と半兵衛の事だ――をチラリと見た。

 それを目敏く信長が見つけ、ニヤリと笑う。


「ククッ、気になるか? ――おい、名乗ってやれ」


「「――はっ」」


 俺と半兵衛は、揃って頭を下げる。


「私は織田軍にて軍監を務めさせて頂いております、竹中半兵衛重治に御座います」


「某、軍監補を務める須藤惣兵衛に御座います」


「竹中――言うと、稲葉山城をたった十六人の寡勢で落とした()()竹中殿に御座いますか!?」


 ……まぁそうなるよね!

 俺、名前表に出してないから、半兵衛の名前が先に出るに決まってるよね!

 ……別に悔しくはないぞ。


「ククク……俺を支える軍監よ。――なぁ官兵衛」


 そう言うと信長は眼を煌々と輝かせ、満面の笑みで近付き、


織田軍(俺んとこ)に来い。手前の才能、播磨の様な小せぇ場所で終えるなんざぁ勿体ねぇ。俺んとこで、こいつ等と共に、俺の天下への道、作っちゃくれねぇか?」


 ほら始まった。

 俺からしてみれば、”人たらし”と呼ばれた秀吉、それと同等位に、この世界の信長は人を惹き付ける何かがあると思う。

 そうじゃなきゃ、皆ついてこないだろう。

 信長の言葉って、どこか断り辛さがあるんだよなぁ……。


「……某は小寺の家老に御座います。某一人では決められぬ事に御座いますれば……」


 官兵衛がそう言うと、信長は納得してない顔で「そうか」とその場は退いた。

 いや、あれ絶対納得してないぞ。

 赤松とか小寺に書状を送って「官兵衛くれ」って言いかねん。

 ……止めた方が良いのかこれ?





 結果として、


「……今日より上総介様に仕える事になり申した。小寺官兵衛孝高に御座います。お引き回しの程、宜しくお願い致しまする」


「という訳だ。皆、見知りおけぃ」


 ……ホントに「くれ」って書状を送りやがったよ。

 つか赤松も小寺も二つ返事で「良いよ」っていって官兵衛くれたし。

 まぁ代わりに色々と援助しなきゃいけなくなったんだけど、官兵衛を手に入れた事はそれに余りある程に良い事だから良いのかなぁ……?


 因みに、官兵衛は俺が務めていた織田軍軍監補となった。

 ……俺?

 軍監補の更に補佐、えーっと……なんだっけ?

 あ、そうそう”軍監衆”ってのになりました。

 軍監――つまりは軍師だ――の役割を務められる人間を集めた、史実では存在しなかった組織で、主には信長の相談役と、戦場での差配、調略の指揮をする組織だ。

 トップは半兵衛、次いで官兵衛、そして幾人かのその補佐がいて、その内の一人が俺だ。

 ……格下げっていっちゃ格下げなのか?

 一応理由があって、元は美濃菩提城主であった半兵衛と、播磨の姫路城城主であった官兵衛、対して俺はただの浪人出であり、外聞的に配慮した結果となっている。

 三好衆の件以来、俺の仕事は信長に付いて回り戦場や前線を駆け巡る奇妙丸様の補佐――というよりは目付け――ばかりだから軍監としての仕事は半兵衛に任せきりだから良いんだけどさ。


 そんな訳で、小寺官兵衛が織田軍に加入したのである。





ナカヤマジョウ様が投稿されているこの作品とのクロスオーバー作品である『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』が投稿されております。

この作品よりもヒロインがヒロインしております。

其方もご覧下さいませ。



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