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第三十三話 三好三人衆奇襲戦 【主人公視点】

前話の少し前からの主人公の動きです。

……納得できないとか、雑賀チョロイとか言わないで(汗)


まさかデータが保存する前に消えるとは……。

皆様はこまめに保存をしてください。

一から書き直すのは本当に精神折れるんで。

 松永の居城である多聞山城を辞した俺が向かったのは紀伊の国だった。

 ここの国人衆、地侍の集団で、鉄砲運用で有名な”雑賀衆”を味方にする為である。

 ”雑賀衆”は紀伊の国の国人や地侍からなる傭兵集団で、元々は応仁の乱以降、紀伊の領主である畠山氏に従軍し、各地を転戦したことが興りとなっている。

 傭兵稼業以外に、海運や貿易なども取り仕切っており、それ故に鉄砲が入手し易く、鉄砲を操る技能傭兵集団となった訳だ。


 地元の人間に、『”傭兵集団である雑賀衆の頭目”に話がある』と聞くと、胡散臭そうな眼で見られながらも、一軒の長屋に案内してくれた。


「頭ぁ~、客人ですぜ」


 案内をしてくれた男がそう言って声を掛けると、一人の男が長屋から出てきた。

 男は俺を一瞥すると、案内役の男に、


「此奴が俺に話があるって奴か?」


「へい」


 男が再び俺の方を向いてきたので、俺は丁寧に頭を下げた。


「某は須藤惣兵衛と申しまする。此度”傭兵集団たる雑賀衆の有力者”に頼みがあって参った」


「……ここでする話じゃねぇな。入んな」


 男の後に続いて、俺は男の家に入る。

 そして男が座った向かいに座り、顔を突き合わせる。


「俺が雑賀党鈴木衆が棟梁、鈴木重秀(しげひで)だ」


 鈴木重秀は俺の目的の人物である。

 雑賀孫一という名前の方が有名だろうが、孫一って名前は鈴木氏の棟梁が代々継承する名前だ。

 それに雑賀衆の頭目と後世では呼ばれているが、実際には”雑賀衆”は『雑賀荘』、『十ヶ郷』、『中郷』、『南郷』、『宮郷』の五つの地域からなる集団で、代表者達が集まって物事を決めていたのだそうだ。

 実際に、織田・三好間で行われた合戦で、両陣営に分かれて戦ったとする説もある。


「……で、頼みってのは?」


「はい。……某、今は旅の身なれど、元は織田の客将をしておりました。……そこで、鉄砲の運用に関しては随一と噂の”雑賀衆”に織田に力を貸して頂きたく、こうして参った次第」


 結果的には石山合戦で三好衆についてしまった”雑賀衆”だが、今ならまだ間に合う。

 織田の名前は”雑賀衆”も聞いているだろう。

 史実では領主である畠山氏の下、半数は織田に与して戦ったのだ。

 織田に与する可能性はある。


「……俺等は傭兵集団だ。……何が欲しいのかは分かるな?」


 良し! 釣れた!

 まだ三好衆に付くことは決めてなかったらしい。


「はい。……先ずはこの刀を売り、その金を俸給とさせて頂きます」


 そう言いながら、俺は二振りある内の片方の刀を鈴木重秀に差し出す。


「この刀は尾張・美濃君主である織田上総介様より下賜された名工長谷部国重が打ちし刀の内の一つ。その値は四百貫となります。目付けの書いたお墨付きも此処に」


 俺は懐からお墨付きを取り出し、それを渡す。

 信長の持つ圧切長谷部は五百貫程したと言う。

 それより少し値は劣り、お墨付きには四百貫と書かれているが、円に換算すれば四千万程……の値になるはずだ。

 後北条氏では足軽の俸給が一人三貫程だったそうなので、足軽なら百三十人程度は雇える計算になる。


 ……つかそんな値の張るモンを軽くくれた訳だ信長は。

 本当に器がでかいのか、ただあっけらかんとしてるだけなのか……。

 それと、


「更に、此度の件が終わった暁には、織田家への仕官をお約束致しましょう」


 正直に言うならば、この話に乗ってくるかは五分五分だ。

 だが、岩成友通を降伏させた話は既に広まっているから、それを考えれば織田が優勢である事は理解出来るハズだ。


 お墨付きを読んだ鈴木重秀は、暫く考え込むと、


「……わかった。俺達はアンタ――旦那に雇われよう。他の連中は俺が説得する。織田に付くようにな」


「忝い。宜しくお願い致しまする」


 ……よっしゃぁ!!

 ”雑賀衆”ゲットだぜ!

 これで織田軍の戦力拡大出来た。

 それだけじゃない。

 何れあるであろう織田包囲網に穴が開く。

 朝倉、浅井、石山本願寺、雑賀衆、武田、六角、三好、十河、荒木、池田、延暦寺、筒井。

 その内の雑賀衆がいなくなる。

 史実においては一揆と共に十年もの間信長を苦しめた敵がいなくなる。

 これはでかい。

 朝倉・浅井は敵対するのは前提だから、後は織田包囲網の中で気をつけねばならないのは石山の本願寺と武田だな。

 ……まぁ良い。

 今は信長と合流するのが先からな。






「おー、やってるやってる」


 数日後、俺は織田と三好が開戦するのを聞きつけて、信長に加勢する為、戦場である三好山麓が見え、更にバレないギリギリの位置である森林部に身を隠し、戦場を見ていた。

 えーっとぉ……柴田殿の二つ雁金に、三左殿の鶴丸……前線はあの二人か。

 それに佐々殿、滝川殿、丹羽殿……徳川も来たのか。

 ……ん? 浅井がいないぞ?

 つまり浅井とは同盟を組まなかったのか?

 浅井がいないからか、織田は攻めきれてないらしい。


「旦那、雑賀衆一同、旦那の指示が下れば今すぐにでも撃てるぜ」


 俺の事を旦那呼びするようになった重秀――俺も普通に接する事にした――が、そう声を掛けてくる。


「ここからでも届くのか?」


「応よ。俺等の使う銃は改造してるからな。こん位なら届くぜ」


「分かった」と答えて、タイミングを計るべくジッと戦場を見る。

 前衛では味方に当たる可能性があるから、狙うならば中衛か後衛だけど、今の位置からだと中衛を狙うしかないな。

 相手がより油断するタイミングを狙って……一合、二合、三合……今!!


()ええええぇぇぇぇぇえええっ!!」


 俺の声に合わせ、雑賀衆の銃が一気に轟音を鳴らし、三好勢の中衛に銃弾の雨が降り注いだ。




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