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第三十二話 三好三人衆討伐戦

遅れてすいません。


 1557年 十月 大津  



 六角氏を破り、南近江までを支配下に置いた信長は足利義昭を安土の桑実寺に入らせると、三好衆征伐為、琵琶湖を船で大津へと渡り、東福寺に本陣を置いた。


「――今こそ、不義不忠にて天下を乱す三好衆に天罰を下す! 出陣!!」


 信長はまず、柴田勝家、蜂谷頼隆、森可成、坂井政尚に三好三人衆の一人である岩成友通の守る勝龍寺城を攻めさせ、岩成友通を即座に降伏させた。

 そして次には三好三人衆の筆頭である三好長逸、そして信長の妹であるお犬の方を妻として娶った細川晴昭のいる摂津芥川山城を攻めた……のだが、


「長逸め、思ったよりも抵抗しやがるな」


「……えぇ、なかなかに耐えるようですな。せめてもう少し、数が多ければ敵の腹を突けるのですが……」


 信長の呟きに、軍監として控えていた半兵衛も同意する。

 既に芥川山城は落城し、長逸は撤退、それを追撃するも思ったよりも長逸勢の抵抗激しく、史実程に即座に四国へ撤退させる事が出来ずにいた。

 松永との対立や、先の六角攻めの際の敗戦などで、三好勢の勢力は大きく削られているのだが、流石は先代公方足利義輝を攻め滅ぼし、京を不当に牛耳った者だ。

 それなりの手腕があるようである。

 それに加えて、史実ではあった浅井軍が参陣が無く、戦力差も左程ない状態であった為に、信長の予想以上に拮抗していたのだ。

 先鋒として最前線で槍を振るっていた森可成も、柴田勝家も、命懸けで掛かってくる三好の兵士を斬り、突き殺しながらも膠着した戦場に、苛ついていた。


「……クソッ! 三好勢がここまでやるとはな! のぉ権六!」


「不義不忠の輩とて、剣豪将軍を弑するだけの実力はあった、という事だろうな」


 そんな風にボヤキながら敵兵を殺していく二人を、与力として従っている秀吉は少し離れたところから見て、


「儂からみりゃ、三左殿と権六殿の方が恐ろしいわい。おー怖い、怖い」


 己もまた、襲い掛かってくる者を切り伏せながら、そんな事を呟いていた。

 だが、そんな膠着の中、



 ドン!



 信長軍にとっては聞き慣れた、鉄砲の銃声が聞こえてきた。

 それも、


 ドン! ドン! ドドン! ドドドドドドドドドドドド!!

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


 一つ、二つどころではない、何十、何百といった銃声が戦場に轟く。


「な、何だ!? 敵の援軍か!?」


 織田軍は突如鳴り響いた銃声に、敵の援軍かと驚くが、三好軍の方が混迷としている状況だった。

 見れば、銃弾は三好軍の中衛辺りに降り注ぎ、その命を瞬く間に刈り取っていく。

 その好機を、勝家は逃す様な愚物では無かった。


「好機は今! 織田が強兵(つわもの)共よ、掛かれ、掛かれー!!」


「森衆も出るぞ! 三好が弱兵の頸、悉く刈り取ってやれ!」


 銃声の鳴り止んだ瞬間を見計らって、一気呵成に突撃し、三好軍を蹴散らしていく。

 突然の奇襲と、柴田と森を筆頭とした織田軍の奮戦により、三好衆は撤退を余儀無くされた。






「しかし、誰なのだろうな。あの銃声は……」


「さて、な。援軍……ではあるようだが、軍監殿の策には無かったはずだが……」


 戦闘を終えた森可成と柴田勝家は、銃声の聞こえた方向を見て、そう言い合う。

 暫くその場に留まっていると、その銃声の主達が現れた。

 遠目から見ても、その集団は異様であった。

 その手には槍も、刀も握られていない。

 握られているのは最新型の、改良された鉄砲(てつはう)だ。

 全てと言って良い兵士達が、それで武装していた。

 掲げられているのは”八咫烏”の軍旗。

 そしてその先頭には――


「お久し振りですねお二方」


「須藤!!」


「須藤殿か!」


 旅に出ていたはずの、須藤惣兵衛こと、須藤直也が笑みを浮かべて立っていた。



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