表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/215

第二十一話 悩みと決心と

本日二話目。

……パラレル世界なので細かいことは無し! で宜しくお願いします。

「手前、何をずっと悩んでんだ?」


 信長の言葉に、俺は内心驚いた。

 信長の言う通り、俺は悩んでいる。

 それは桶狭間の時から頭の片隅に常にチラついている。

 ……いや、『この世界に来た時から』、ずっと考えていた事だ。


「……良くお分かりで」


「俺も何百何千という命を預かる武家が頭領よ。それ位察せねぇとな」


 驚く俺にそう言って笑う信長。

 だが、信長に言っても良いのだろうか。

 俺の悩みは『これ以上この世界の歴史に関わって良いのかどうか』というモノだ。

 ただでさえ史実と違う流れを歩むこの世界で、『俺』という本来の歴史に存在しない者が関わって良いのか、それがずっと頭の中に渦巻いていた。


「……信長殿、戯言と思ってお聞き下さい。……某、幼い頃に邯鄲(かんたん)の夢を見、この世の流れ……先の世がどう移ろうのかを知りました」


「……ほぉ? 邯鄲の夢を?」


 邯鄲の夢は邯鄲の枕とも呼ばれている中国の故事の一つだ。

 中国がまだ趙の時代、盧生(ろせい)という若者が、都である邯鄲に赴き、そこで呂翁と名乗る道士と出会い、自らの身の不平を語った。

 すると呂翁は夢が叶うと言う枕を渡し、盧生はそれを使ってみると、みるみる出世し、嫁を得、時に冤罪で牢獄へと入り、名声を求めた事を後悔し自殺しようとするも処罰を免れ、冤罪が晴らされた後は栄華を極め、終には国王にまで至る。そして子や孫に囲まれ、人々に惜しまれながら眠るように死んだ。

 しかし、眼が覚めてみれば枕を使ってから左程経っておらず、全ては夢であった、というモノだ。

 所詮人の栄枯盛衰は夢の如く儚いモノだ、という意味である。

 ここでは己のこれからの人生を体験した、という意味で使っている。

 ……まぁ細かくは違うんだが。

 自分の中でももやもやしていてはっきりとは伝えられない。


「はい。……ですが、そこに某はおらぬのです。某は某のいない世の移ろいを知っております。……某は夢の通りに表舞台から姿を消し、世の流れに身を任せるが良いか、それとも夢は夢だと割り切って生きるか、それを悩んでおりました」


「…………」


 俺の悩みを聞いた信長は、噛み締める様に眼を瞑り何かを思案する。

 そして帰って来たのは、


「――手前、頭は切れるってのに馬鹿なんだなぁ」


 そんな言葉だった。


「……馬鹿とは――」


 思わず言い返しそうになるのを、呆れた様子の信長が遮り、


「いや、馬鹿だろ? 何を下らねぇ事気にしてやがる。……夢は夢、所詮は夢よ。手前も俺も、この現世で生きてるだろうが。……それに、男なら邯鄲の夢(それ)を生かして天下を取るってくれぇの気概を持てっての」


 そう言うと信長は俺の眼を再度見て、


「手前のこれまでの策が、邯鄲の夢で知りえたモノだろうが、それを実行するにはそれを実行するだけの力がいる。……手前は十分有能だよ。少なくとも、俺は手前の才を買ってる」


 そう言ってくれる。


 ……嬉しいモンだな、認められるってのは。

 俺自身としてはズルだと考えているし、それにそれでも半兵衛には勝てなかったのだ。

 でも、それでも俺を買ってくれる信長の為ならば、ズルだろうと使ってみようと思える。

 自分の武が、策が、何処まで通じるのかも知ってみたいと思う。

 そんな思いにさせるのも、信長のカリスマ性のなせるワザなんだろうなぁ……。


 ……なら、認めてくれた信長の為、史実を思い切り外れてみようじゃないか。

 史実では成せなかった『織田信長の天下統一』を。


 そんな事を決心していた俺を見て、信長は話を仕切り直す様に姿勢を正し、


「須藤。……手前に話したい事があるんだが、良いか?」


「……はっ!」


 俺も信長に倣い、姿勢を正しながら答えるが、信長は頭を掻きながら、


「……その言葉遣い、いい加減止めてくれ。俺は勝手だが手前を友だと思ってる。ここからは出会った時みてぇに、主と客将じゃなくて、ただの織田三郎信長と、須藤直也で話そうや」


 そう言ってくれた。

 ……マジでか。

 ()()信長に溜口っすか。

 いや、まぁ心の中では信長って呼び捨てしてるし、違和感は無いんだけど……いいのかなぁ?

 ……いや、本人が良いって言ってるから良いのか。


「……わかった。で? 話ってのはなんなんだ?」


 俺の言葉遣いに満足したのか、うんうんと満足そうに頷いてから、


「須藤直也。……客将としてじゃなくて、俺の直臣としてその才、使っちゃくれねぇか?」


 そう言った。

 その表情は、今までのどの時よりも真剣に見えた。




……え? 主人公がチョロイ?


チョロくたって良いじゃない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ