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最終話 全ての終わり

最終話です!

 1572年 近江国 安土城下 細川屋敷 【須藤惣兵衛元直】



 俺はその日、与一郎殿に茶でもどうかと呼ばれ、朝早くから安土城下の細川屋敷を訪れて茶を飲んでいた。

 その場にいたのは与一郎殿・久秀・高山右近殿。

 茶を飲み終わり、雑談話に花を咲かせていると、


「……では、此度はこれでお開きと致しましょうか」


 どうやら右近殿は仕事があるらしく、戻らなければならないらしいとの事で、その場はお開きとなった。





「……さて、一度家に戻るか」


 細川屋敷を出、安土城下を歩く。

 最後の戦となった徳川との戦を終えてから早五年。

 体制や法に人々が慣れ始め、平和な世を謳歌していた。

 俺は大通りを歩き、大名や武家屋敷が立ち並ぶ区画を抜け、町民達の住む区画に入る。

 城下は幕府のお膝元となっている為、京や商業の中心である堺にも勝るとも劣らぬ程の賑わいで、多くの人々が道を行きかっていた。

 その誰もが戦の無い世を、安心して生きている為か、戦乱の時よりもその表情は明るい。

 国政が上手くいっている様で何よりの証拠だ。

 とはいえ、結局どうなるかってのは後世の連中の行動次第だから、今上手くいっていても結果がどうかは分からないが。


 其の儘道を抜け、裏通りに入っていき、辿り着いたのは少し大きめの――それでも武家屋敷に比べれば格段に小さいが――屋敷だった。

 ここが、今の俺の家である。


「帰ったぜ」


 屋敷の門を潜りながらそう言うと、屋敷の奥からパタパタと走る音が聞こえてきた。


「お帰りなさいませ、直也殿」


 現れたのは黒髪を伸ばした女性――柊殿だった。

 初対面で十一歳だった少女も、いつの間にやら大人の女性である。

 幼さも抜け、精錬された所作からは凛とした雰囲気を醸し出している。

 そして、まだ幼い女の子が柊殿の手を握っていた。

 俺の二人目の子供である。

 戦の後に生まれた子で、面白そうだからと、既に剣を振らしているし、松永の元にいる柳生宗厳の元に時折剣を習いにいかせてたり、伊賀忍や甲賀忍達の住む忍の里などに遊びに行かせていたりしている。

 多分将来は時代小説とかである凄腕女刺客みたいな事になってるのではなかろうかと、今から楽しみではある。

 ロマンだよなぁ……。


「……ガキ共はもう来てるか?」


 俺の問いに、柊殿は笑いながら頷く。


「えぇ。……皆直也殿を待ってますよ」


「そうか。……じゃ、行くかね」


 俺は柊殿と子供を伴って、屋敷の中を進んで行く。

 そして、辿り着いたのは道場だ。

 これがある為、この屋敷は普通の長屋に比べて多少大きいのだ。


「――あ、先生だ!」


「先生久しぶり!」


「どこに行ってたんだよ~!!」


「柊先生が寂しがってると思うよ~」


 俺達が道場に入ると、まだ幼さが混じった快活な声が次々と聞こえてくる。

 総勢二十名程の子供達を前に、俺はその元気の良さに苦笑いする。


「――じゃ、今日も始めるとしようか」


「「「「――はーい!!」」」」


 俺が引退を伝えた時、以前から若隠居したい事を伝えていた信長以外の殆どの人間から驚きの声が上がったのだが、俺は結局その声に応えず、役職を辞退して城下に降りた。

 柊殿とも相談して、決めた事だった。

 そして、今まで貯めていた金を使って安土城下に道場付きの屋敷を建て、柊殿と二人目の子供の三人で住み、そこで塾の様なモノを始めた。

 身分・性別関係無しに、学問や護身術・剣術・弓術等を学びたい者が集まる、寺子屋みたいなモノだ。

 一応、それなりに人数が集まっており、経済的には全然苦しくなかった。

 基本的に全て教えるのは柊殿で、俺は時々教える程度だ。

 俺はというと、ここで教えたり、時々景亮や与一郎殿や松永の元を訪れたり、日ノ本各地に旅に出たりと悠々自適な生活である。

 幕府が開かれてから一度も、登城はしていない。

 因みに、長男の吉千代は信長と信忠様が小姓にしたいと言っていたので、現在は古出の家に預けてある。

 これが、今の俺の生活だった。






 数年後の某日、俺は旅に出ていた。

 今回は関東圏を回ろうと、近江から出て尾張から三河・今川領と北条領・上杉領を回り、今は前田殿と佐々殿が治めている越前領と順々に回るつもりだった。

 柊殿には悪いが、子供もいるし、塾の事もあって、今回は置いて来ていた。

 今は元徳川領だった三河藩を訪れていた。

 天下統一後、確かにいる筈の三河藩内の抵抗勢力は姿を隠しているらしく、藩の雰囲気は平和そのものだ。

 まだ先の戦の敗北、そして主君である家康が処刑された事を引きずっている感はあり、何処か暗い雰囲気が漂っている人々も見かけるが、多くの人々はそれでも尚過ごしている。

 そんな光景を見ていると、


「――っ!?」


 突然、背後から衝撃と、痛みが襲ってきた。

 顔だけを後ろに向けると、そこにいたのは着物を着た成人男性だったが、その顔は強張っている。

 その手に持っているのは脇差だろうか。

 痛みを感じるのは左の胸。

 つまり、心臓で――


「お前のせいで……お前のせいで……」


 男はぶつぶつと呟いているが、徐々に意識が薄れてきて、男の言葉が次第に聞き取り辛くなっていく。

 これも因果応報って奴なのだろうか。

 俺も、多くの人間を手に掛けてきたし、色んな事に関わって来た。

 この男がどの勢力の人間なのかはわからないが、恨みを持つ人間は少なくないと思う。


「……っ」


 最早視界も暗転し始め、痛みに耐えきれず身体が崩れ落ちる。

 そして其の儘、俺は意識を失った。












 ??? 【視点:須藤直也】



「――っ!」


 眼が覚めると、見慣れた光景が飛び込んでくる。

 俺が住んでいるアパートの自室だ。

 どうやら眠ってしまったらしく、突っ伏していた机の上にはレポート用紙と、本、そして電源が付いた儘のパソコンが置かれ、レポート用紙には涎がついてしまっていた。

 どうやら相当疲れていたらしい。

 机の上の本は大内家に関わるモノで、パソコンで開かれているのも大内家に関するページだ。

 確か大内弘興のことを調べている最中だった筈だな。

 何か長い夢を見ていた様な気がしなくも無いが、それが何なのかは全く思い出せなかった。

 そこでふと気付く。


「――あれ、今何時だ!?」


 慌てて時計を見ると、時計の針は十二時十分程を指していた。


「不味っ! 提出期限近いってのに。……はぁ、仕方ない。目覚ましにシャワーでも浴びて来るか」


 慌てても仕方が無い。

 まだ期日はあるし、徹夜で調べればマイナー武将だろうが多少の情報は出て来るだろう。

 未だ覚醒しきっていない頭を左右に振り、ゆっくりと立ち上がる。


「……ふぁ~あ」


 欠伸をしながら箪笥から着替えを取り出し、俺は浴室に向かって歩き出した。



えー……色々と言いたいのですが、長々と書いてもあれなので……こんな設定ガバガバな作品を読んで下さり、有難う御座いました!


多分次は現在投稿中の作品に加え、苦手ジャンルである恋愛モノ――といえる作品になるかどうかはわかりませんが――に挑戦するか、普通にローファンタジーモノを書いていくと思います。

取り敢えず、連続投稿は暫くしません。

意外とこの作品に体力使いましたし……。

これからも自由気儘に書いていきますので、これからも読んで下されば嬉しいです!

有難う御座いました!!



……結局長くなってしまった。


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