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第百九十四話 居場所を掴む

 1566年 三河 岡崎城 【視点:須藤惣兵衛元直】



 徳川家康の処刑準備が進み、処刑まで後数日となった頃、俺の元に逃げた南光坊天海の所在を調べさせる為に三河各地及び周辺諸国に散らしていた忍から天海の居場所を突き止めたという報告が齎された。

 どうやら、三河国内の寺に逃げ延びて隠れていたらしい。

 それを突き止められたのは俺が雇用している忍達の数が多く、腕も確かだからだ。

 まぁ戦国時代――どころか歴史の中でも有名な甲賀と伊賀・三つ者を雇用しているのだから当たり前か。


 今更明智一人を逃がして天下が揺らぐ事はないとは思うが、それでも可能性がある限り潰す必要があるだろう。

 俺一人で動くべきだろうか。

 家康の処刑が終われば、皆が待ち望んだ”太平の世”が漸く見えるのだ。

 皆の気分を削ぐような事はしたくない。


「……今すぐ案内出来るか?」


「――はっ!」


 俺は刀を手に取って立ち上がった。

 恐らくだが、光秀を助けたのは家康だったのだろう。

 元織田軍で、信長と敵対し、しかも知勇兼備の明智光秀は、家康にとって強い味方になるであろう人物だったのだと思う。

 とはいえ、光秀が南光坊天海と名を変えて家康に協力していたのは事実だ。

 ……取り敢えず、ケジメはつけさせて貰わねぇとな。





 俺が城から出ようとしたところで、何をしようとしていたのか景亮が女性と話していた。

 景亮は俺が刀を持っているのを見て何を思ったのか、不思議そうな表情で声を掛けてきた。


「お? 須藤さん! (そんな物)持って、どこ行くんですか?」


「応、景亮か。……ここだけの話だが、南光坊天海の所在が見つかった。……お前も来るか?」


「それは是非! でも、徳川の将兵何人かの行方が知れないとか。もし天海と一緒にいるなら二人ではキツいと思いますが?」


 確かにそうか。

 恐らく、追手が来ることを想定している筈だ。

 兵がいた場合、俺と景亮だけで対処出来るかどうかはわからないし、時間を取られれば逃げられる可能性も出てくる。

 そうなると、兵も必要か。

 とはいえ、忍衆には生き残って各地に逃亡した三河兵の残党の調査を頼んでるし、雑賀衆も今は”軍監衆”の配下として動いて貰っているから俺の兵としては動かせない。


「……お前さんの兵士、動かせねぇか?」


「それは大丈夫です。松尾衆は俺の半私兵集団ですから」


「そうか。……こっちから頼んでいるのに悪いが、急いでくれ。いつ明智の奴が逃げるとも限らねぇからな。……頼むわ」


「分かりました……千代!」


「はい。何でございましょう」


 景亮が先程まで会話をしていた女の方を向き、訊ねる。

 千代ってことは武田から編入したっていう”歩き巫女”の筆頭である望月千代女か?


「松尾衆を武装させて集めてくれ。できるだけ急ぎで」


「畏まりました。暫し御待ちください」


 景亮がそう言うと、頷いた千代女は姿を消した。

 ……縮地か何かでも使ってるのかありゃ。

 まぁ余り深くは気にしない事にしよう。





「松尾衆、集まりました」


「ほォ……今元直まで一緒たァな。そんで俺達連れてどこ行こうってんだ?」


 暫くして、景亮の私兵部隊である松尾衆がぞろぞろとやってきた。

 その中に、元織田の兵である利益もいた。

 俺はなるべく親しみのある笑みを浮かべて声を掛ける。


「急に集まらせて悪いな。……今から南光坊天海を追う。詳しくは道中で景亮に聞いてくれや。……さ、行くぞ!」


 松尾衆を引き連れた俺と景亮は、真っすぐに天海が潜伏しているという場所に向け、馬を走らせた。

 残党もそれを予知していたのだろう。

 天海のいる場所の付近までやってくると、徐々にその数が増えていった。

 最初は俺も刀を振っていたが、その数は意外と多く、突破するのにも時間が掛かりそうだった。


「――ちっ! 仕方ねぇ。……松尾衆! ここ頼めるか!?」


「松尾衆、俺と須藤さんの行く道を作れ!」


「「「「はっ!!」」」」


「――良し! 行くぞ景亮!」


「はいっ! 皆、ここは頼んだよ!!」


「主よ、お任せあれ!」


「主様、武御運を!」


「必ずや無事にお帰り下さいませ!」


「ま、ここは俺等でどうとでもなる。旦那は旦那のやるべき事をやりなァ!」


「我等も全て淘汰した後、合流致します!」


 俺と景亮は頷き合うと、松尾衆が兵を蹴散らす一瞬の隙を突いて、その場を突破したのだった。






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