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第十六話 未来の”戦国DQN四天王”森長可とエンカウント

ラブコメ読んでいるとラブコメ書く人ってすごいなと改めて思いますよね。

あんな砂糖塗れのなんて書けないよ。

自分が書くとしたら主人公に恋愛させず、周囲にラブコメさせるだろうなぁ……。

それをひねくれながらも引っ掻き回す主人公……。


うん、作者の理想ですね。

え? この作品に恋愛要素?

……察して。


 尾張国 清洲城



「……では、某はこれにて」


「おう、苦労」


 信長に呼ばれ、清洲城に来ていた俺は、その役目を終えて退室し、城内の廊下を歩いていた。

 これからどうしようかと考えたが、久しぶりに城下にでも行ってみるかと考えていたところに、


「おぉ、須藤ではないか」


 そう後ろから声を掛けられ、誰かと思って振り返ると、


「……三左殿か」


 先日、桶狭間の戦いにおいて敵将を討つという手柄を上げた”攻めの三左”こと織田家家臣森家の当主、森可成だった。

 その後ろには数え年で十を過ぎたあたりだろうか、少年が興味津々そうに俺を見上げていた。

 つーか、槍、槍持ってる! 怖いんですけど!


「どうしたのだ今日は?」


 そう聞いてきた三左殿に、


「いや、信長殿に呼ばれてね。尾張国内の政の助言をしてたんだ」


 そう返す。

 ……え? 何? 言葉遣いが今までと違う?

 此奴は別にこんなことで怒るような奴じゃない。

 桶狭間以来、俺を認めたらしく、「俺の事は三左と呼んでくれ。言葉遣いも気にしなくて構わん」と言われたからそうしてるってだけだ。


 因みに政ってのは信長が進めている”兵農分離”やら”楽市楽座”の事だ。

 ……まぁ実際には内政が得意な五郎左殿を筆頭にした者達と信長が中心に進めているから、本当にアドバイスをする位で終わりなんだけど。

 俺も大学でどんなものだったかは調べたけど、知っているのと実践するのは全く違うモノだって改めて感じたね。

 正直言ってわからん。

 だが、俺も今では 戦国の世に生きる身だ。

 信長がやろうとしている事が革新的である事は理解出来る。


「で、三左殿は何を?」


「ん、おぉ……須藤に頼み事があってな」


 そう言うと後ろに控えていた少年をグイ、と前に出す。


「お前さん、奇妙様に兵法やら武芸やらを教えることになったんだろ?」


 まぁその通りである。

 いつの間にやら、と言うべきか。

 奇妙丸様に兵法やら武芸やらを教える事になったのだ。

 切っ掛けは先日信長と飲んだ時の柊殿との約束だ。

 それを聞いた信長が、「なら奇妙にも教えてやってくれ」等と言い出したのである。

 ……責任重大過ぎて腹が痛くなりそうだ。

 で、三左殿の言いたいことを予測すると――


「此奴にも兵法やら調略の方法やらを教えて欲しくてな。――おう、名乗れや」


 三左殿がそう言うと、少年がニカッと笑い、名乗る。


「俺の名は森勝三(しょうぞう)! 殿の客人だってな? よろしく頼むぜ!」


「馬鹿もん!!」


 片手を突き上げながらの元気な名乗り(?)だが、三左が勝三殿の頭に拳骨をくらわせた。

 ガチンって音なったぞおい。


「手前は清和源氏の一家系、河内源氏の棟梁、源義家の六男義隆を祖とする森氏に連なる者だろうがっ! 一門衆に対してならまだしも、これから教えを乞う相手に、それも殿の客将にその様な言葉遣いをする者があるか!!」


「うっせーな! んなもん知るか! 殿だって気にしねぇって遊びに行った時に言ってたぞ?」


「……また殿の元に勝手に行ったのかこの阿呆は!」


 あ、また拳骨。

 勝三殿に引っ張られて言葉遣いが荒くなってるし。

 こっちが素なのだろうか?

 ……つか待てよ?

 勝三……勝三…………森の勝ぞ……!?


 森勝三ってあの”森長可”じゃねぇか!!

 ”鬼武蔵”、”夜叉武蔵”と言われ、十三歳で家督を相続し、長嶋一向一揆攻めで初陣。

 第三次長島一向一揆攻めでは一人で船で敵側に渡河し、二十七人の僧の頸を刈って戻ってきた等、語られる逸話のほぼ全てで人間や動物が殺されてるという、伊達政宗、細川忠興、島津忠恒と並ぶ”戦国DQN四天王”の一人である。

 数々の命令違反や軍紀違反をした癖に、信長に「仕方ないなぁ」で済まされる程に寵愛を受けたとか。

 まぁその一方で書を好み、茶道を嗜んだ等文化人であったり、金山の町を発展させる等政務も出来たという一面もある。


「で、三左殿? 勝三殿に何を教えろと?」


 未だに親子で取っ組み合いのプロレスを繰り広げていた三左殿に尋ねる。

 三左殿は勝三殿にアイアンクローをしながら、


「ん、あぁ。……このガキは武芸は俺にも負けず劣らずなんだがな、俺としちゃ調略やら軍略やらってのを学んで欲しいのよ。こう言っちゃなんだが、当主の器は嫡男である可隆よりあると思ってるんでね」


「はぁ……」


 あの、そろそろ放してあげた方が良いと思うんだけど。

 ギリギリって音してるし、ほら、暴れてたのが手も足もダラーンと垂れ下がり始めたし……死んでないよなあれ?


「……っと、心配いらねぇよ。――ほれ」


 そう言って三左殿は勝三殿から手を放す。

 だが、勝三殿は、


「ったく痛ぇな~……っつー訳だ旦那! 俺の事は勝三とでも呼んでくれ!」


「……わかったよ勝三」


 ピンピンしていた。

 身体が鉄か鋼で出来ているんだろう。

 ターミ〇ーターかお前は。




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