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第百六十七話 経過報告

 1565年 年末 京 二条御所 【視点:須藤惣兵衛元直】



 徳川との戦に向けて、同盟軍の戦支度は着々と進んでいた。

 北条・今川は古河公方と手を組んでいる安房国の里見家に対応する為に、上杉には徳川との戦を手伝って貰う予定だ。

 前回忍狩りを命じてから早一月、経過を報告してもらう為に、再び忍達を集めていた。


「……さ、報告をしてくれ」


 俺が促すと、忍達は顔を見合わせ、一人ずつ話し始めた。


「……では我等甲賀忍及び伊賀忍から」


「……我等は貴殿に命じられた通り、徳川家が畿内や西国に放った忍を捕縛、出来なかった場合は殺害しておりますが、その数は先日報告しました数、百よりも更に増えております。徳川も必死なのでしょうな。……我等が調べた限りでは、西国や畿内の反織田勢力に徳川からの書状が渡ったという話はありませぬ」


「そうか。……畿内の反織田勢力はどの様な状況だ?」


「……はっ! 情報によりますれば、どれ程の数が、どの勢力の残党が、何処に潜伏しているのかは未だ不明であるとの事です」


 残党、か。

 残っているのは明智光秀に協力しなかった旧幕臣か、それとも俺達が滅ぼした朝倉や浅井か、それとも甲斐から逃げ延びた武田の者か。

 いずれにせよ、敵対するのであれば戦うのみだ。


「……忍狩りに数は足りているか?」


 数が足りていなければ、信長にいって織田直属の忍を借りて来るか、同盟国から借りてこなければならない。

 だが、忍は首を横に振った。


「……いえ、問題はありませぬ」


「そうか。……その勢力側から徳川に接触する動きはあったか?」


「その様なことをすれば己が潜伏場所を我等に教えるようなモノ。今一度調べてみますが、恐らくそれはないかと」


 それもそうか。

 織田に所属する忍の多くが展開しているなかで目立つ動きをすれば、即座に俺達に知られる筈だしな。


「……では以降も忍狩りを続けてくれ」


「「承知!」」


「では、三つ者の報告を聞こうか」


「はっ! ……徳川ですが、先の報告にありました通り放つ草の数を増やしておりますが、上手くいっておらぬ為に焦っている様子です。しかしながら、これ以上草を失えば、来るべき戦の情報を得る為の分の草が足りなくなりましょう」


「そこまで少なくなってるのか?」


 確かに、徳川家が雇っている忍の数なんて織田の雇う忍の数に比べたら頼りないだろうが、そんなに少なくなってたのか?


「流石にまだ百二百程度はおりましょうが、()りとて我等――いえ、織田の抱える草の数を考えるならば、何時までも一つの任務に集中してはおれますまい」


 ……成る程。

 草の仕事は意外と多い。

 書状を届けるのもそうだが、戦前の敵陣の情勢や状況等の情報収集に妨害工作、戦においては伝令役としても役に立つ。

 日影の存在である彼等だが、必要不可欠な存在なのだ。

 特に、彼等の能力に頼り切っている俺の様な人間にとってはな。

 彼等の仕事は多岐に渡る為、一つの任務ばかりに集中しては、他が疎かになってしまう。

 そして、その疎かになって手に入れる事が出来なかった情報一つで戦局が大きく変わったりするのだ。


「分かった。なら今後も任せた」


「――御意」


「……そうだ。他の同盟の状況はどうなってる?」


 同盟者達の状況を調べる事もまた、彼等の仕事である。

 声を上げたのは伊賀忍の連絡役だ。


「――それは私から。……先ず今川・北条の両軍は安房の里見家との戦に向けて軍備を進めております。両家の当主は頻繁に会って二国による安房攻略の軍議を開いておるとの由。……上杉も着々と戦支度を進めておりますが、当主輝政はここ、山城国におります」


 はい?

 輝政公って今山城――京にいるの?

 京ねぇ。……ってことは近衛殿のところにでも来てるのか?

 同盟を結んだことで上杉は京に入る事が出来る様になった為、近衛殿とのやり取りは書状ばかりだったのが、直接会う事が出来る様になった。

 ……ふむ。

 上杉といえば、俺と同じ転移者の松尾景亮の事を思い出す。

 輝政公の御側付きらしいし、それならば上杉の中枢近くにいる事は間違いないだろう。

 対徳川の為、意見を出し合ってすり合わせる事も大事だろう。


「――頼みがある」


「なんなりと」


「……上杉輝政公御側付き松尾景亮に会いたい。書状を渡してくれるか?」


 さて、会うのは御所が良いか、古出家屋敷が良いか。






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