第百六十二話 軍議
短いですが、キリが良いのでここまでです。
1565年 土佐 織田土佐方面軍本陣 【視点:須藤惣兵衛元直】
「……長宗我部は降伏するつもりがないのか?」
「馬鹿な! これ程までの窮地に陥りながら何故降伏せぬのだ!」
「……愚かな! これでは無駄に将兵を失っているだけではないか!」
「当主である長宗我部元親は”土佐の出来人”と称される程だと聞いたが……」
「……もしや降伏を恥辱としておるのではないか?」
「だとしても、武家は家を残す事も大事だろうに……」
織田の土佐方面軍の本陣で、諸将達が軍議を開いていた。
話題は勿論、再三の降伏勧告を無視する長宗我部だ。
既に土佐領国内の多くの城が織田方に落ち、残すは長宗我部氏代々の居城である岡豊城と、その支城だけだ。
最早降伏したとて誰も文句は言わないだろう。
だが、何故か長宗我部元親は降伏しない。
「……軍監衆、長宗我部の動きをどう見る?」
信忠様が”軍監”として従軍している官兵衛と吉継に尋ねる。
「……恐らくは徹底抗戦の構えでしょうな」
「……長宗我部には最早織田に勝てる手段は無い。……須藤殿の忍によると、長宗我部家当主の長宗我部元親は断固として我等織田と戦うと宣言した、と」
吉継の言葉に、確認を取る為に信忠様は俺の方に眼を向けた。
「……吉継の報告は真か?」
信忠様に、俺は頷き返す。
「……えぇ、岡豊城に潜入させた者によりますと、どうやらそう宣言した様です。……同じ様に潜入させている他の者達からも同様の報告が上がってきております。幾度となく降伏する機会がありながらも、それを蹴って戦うのです。……少なくとも、この戦で敗れなければ、長宗我部は降伏せぬでしょう。一度完膚なきまでに叩き潰す。……それしかありますまい」
「……そうか。それに付き合わされる兵や民達が哀れだな。……皆! 此度が目的は此方の被害を最小限に留め、尚且つ敵を疾く撃破する事だ! 織田と長宗我部の戦力の差は圧倒的だ。だが、決して油断はするな! ……出陣する!!」
「「「「――はっ!!」」」」
信忠様の言葉に、家臣達は頭を下げた。