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第百五十七話 阿波到着

 1565年 阿波 【視点:須藤惣兵衛元直】



 京を出立して数週間。

 幾度かの休息を経て、織田軍本隊は阿波の三好義継等が詰める本陣へと到着した。

 その間にも別方向から攻めてくれる手筈となっている毛利と書状のやり取りをしていた。

 今頃信長達は美濃で同盟者達を迎え入れ、同盟の締結に向けた会談をしている筈だ。


「――殿、此度の援軍忝く」


 会ったばかりの頃は松永に保護されていた若者だった三好義継も、いつの間にやら立派な青年となっていた。


「いや。構わぬ。……それよりも状況は?」


「――はっ! 現在は我が阿波勢と摂津の国人衆、安芸の毛利軍にて多方向から土佐に押し込める様に動いておりますが、流石は”土佐の出来人”。中々に苦戦しております」


 元より、織田軍と対三好で同盟を結んだ長宗我部だが、話し合いの結果阿波の一部を割譲しただけであった。

 だが、それだけでは長宗我部の当主、長宗我部元親は足りなかったのだろう。

 本能寺の変――いや、失敗したから本能寺の乱か――の起きる前に光秀からの書状を受け取っていた為、それに合わせて挙兵したのだ。


「ふむ。……成程。不利な中で挙兵するだけはあるという事か。……”軍監衆”、お前達の意見を聞きたい」


 信忠様の命令だが、俺は発言するつもりは無い。

 ”軍監”の役目は、官兵衛達に任せている。

 今の俺はただの遊撃部隊長だ。

 余り発言するべきではないだろう。

 それに、ここは若い連中に譲るのが、先達(せんだつ)としてのやるべき事だろう。

 ……別に面倒だからとか、楽できるからという訳では無い。


「……兵力としては毛利軍のみでも上回っておりますれば、数的には此方が圧倒的に有利。なればこれを使わぬ手はありませぬ。……先ず、阿波南部にて抵抗を続ける長宗我部軍の先鋒隊を殲滅、または土佐に撤退させるべきかと」


 官兵衛が信忠様に対して意見を言い、吉継もそれに続く。


「……阿波南部で抵抗しているのは谷忠澄。元は土佐神社の神主。……長宗我部家当主、長宗我部元親からの信頼も厚い」


 谷忠澄。

 長宗我部家の家臣であり、吉継の言った通り土佐神社の神主であった人物だ。

 主に外交関係で尽力した人物で、史実においても秀吉の四国征伐を最前線の阿波一宮城で応戦した。


「ただ、当人としては反戦派の様ですが」


 忍に調べさせたところ、谷忠澄は長曾我部元親に対して織田との戦を避ける様にと進言したのだという。

 織田の兵の質、戦い方、数。

 それを冷静に、長宗我部との差を説いたのである。

 だが、忠澄に対して他の家臣達が反対し、長宗我部元親も「一度も戦わずに降伏するのは恥辱であり、本国に攻め入られようと徹底抗戦するべきである」と徹底抗戦を表明した。

 周囲の国が織田と関係を持っている事を知っているだろうに、戦わずに降伏するのは恥辱だからと戦う事を選択するのは、勇敢でも剛毅でもない。蛮勇だ。

 そして、元親は忠澄に対して最前線である阿波に向かう様に指示した、というのが成り行きである。


「……そうか。……その谷とやらは哀れだな。……先を見通せぬ長に仕えるとは」


 信忠様は複雑な表情で呟くが、残念ながらそれを考えている暇はない。

 長宗我部をとっとと討伐し、徳川や他の反織田勢力に集中せねばならないのだ。


「……信忠様、今は長宗我部に集中しなされ」


 俺の言葉に信忠様は頷く。


「……そう、だな。……諸将等を集めよ! 軍議を開く!」


「「「「――はっ!!」」」」


 その後、阿波南部を攻める際には織田本隊の先手に阿波三好・摂津国人衆を合流、俺が率いる雑賀衆を先鋒に含め、鉄砲による物量作戦に出る事を決めた。




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